15/05/28 10:02:47.67 .net
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ROE(株主資本比率)が20%を超えるなど、“アパレル業界の優等生”と呼ばれてきたユナイテッドアローズが一転苦戦している―。
5月8日に発表した2014年度の連結業績は、営業利益が前期比16.8%減の113億円。
期初時点では最高益を見込んでいたが、一転して、6年ぶりの減益に落ち込んだ。
高額宝飾ブランド品の「クロムハーツ」は好調に推移したが、主力のセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」が不振だった。
営業減益の最大の要因は、価格戦略の失敗だ。円安による輸入コスト増を吸収するため、
2014年の秋冬商品でシャツやカットソーなど定番品を一律値上げしたことが裏目に出て、
10月以降に客数が急減。これを受け、アウトレット店や催事セールを増やし、
10~20%の値引き販売によって在庫処分や廃棄処分に踏み切ったため、粗利率が悪化した。
今回で3度目の値上げ
同社の商品値上げは、昨秋が初めてではない。2013年の秋冬商品で一部商品の値上げを実施。続いて、
2014年の春夏商品も一部値上げした。いずれの値上げも、対象を高価格帯の商品や新規投入した商品などに絞っており、
客数が大きく落ち込むような深刻な影響は生じなかった。
だが、2014年の秋冬商品では値上げ対象を“定番品”まで一気に広げたため、
顧客から「値段が高い」との声が相次ぎ、店舗から足が遠のいていったとみられる。
主力業態の2014年10月の客数は、前年同月比14%減とダウン。翌月以降も、今年3月まで2ケタ減の厳しい状況が続いた。
10月以前は、客数が減っても客単価が上がることで、既存店売上高は一定の水準を維持してきた。
だが10月以降は、客数の落ち込みが大きく、客単価の上昇でカバーしきれなくなった。
こうした状況について、竹田光広社長は「2014年の秋冬商品は客がどう感じるか、考えない価格になってしまった」と反省する。
同社の顧客はファッションに敏感なコアファンが多く、特に高額商品には底堅い動きがある。
そうした商品は質やデザインを認めたファンがいるため、値上げの影響をそれほど受けなかったとみられる。
ただ、今回は値上げ対象をほぼ全品に広げたことで、購入頻度がそれほど高くない一般顧客が去ったようだ。
2015年度の会社側の業績見通しは、売上高が前期比7.9%増の1414億円、営業利益が同3.0%増の116億円と、
復活を期す。最重要課題は価格戦略の見直しだ。
前期のような一律の値上げではなく、商品ごとに最適な価格を見極めて展開することが柱になる。
価格を上げても支持される商品は、アトリエでしっかり作り込んで価値相応に価格を上げる一方、
シャツやカットソーなど買い足し需要の高い商品については実質的に価格を元の水準に戻すことで、顧客を呼び戻したい方針だ。
商品投入の頻度も見直す。従来の6シーズンから、最大8シーズン(梅春、春、初夏、盛夏、晩夏、初秋、秋、冬)に細分化して、
一段と店頭での商品鮮度を高める。季節の移り変わりに応じた、売れ筋商品のきめ細かい投入で、売価をできるだけ維持するのが狙いだ。
また、これまでは商品をまとめて生産して原価を抑えていたが、トレンドの変化に即応できず、最終的に値引き販売を増やしていた。
今後はトレンド商品のリードタイムを短くし、多少原価が高くなっても、定価販売比率を上げていく戦略に転換するという。
より大きな背景としては、アパレル業界全体でシーズン途中の値引き販売の増加やセール開始時期の分散化、
段階的なセールオフ率(セール時の値引率)の拡大などが進んだ結果、定価に対する顧客の信頼感が低下していることも挙げられる。
竹田社長は「半歩先のトレンドをしっかりととらえて、同質化を避けていく。それぞれのブランドカラーに重きを置いてやっていきたい」と意気込む。
ただ、2015年度も粗利率の悪化は避けられない。在庫が相当数残っており、年度前半だけでも、
6回の催事イベントを予定している。ネット通販についても、アウトレット通販サイトなどを活用して消化を進める。
足元では、消費増税の反動減の影響が一巡したことで4月の既存店売上高がプラスに転じるなど、
回復の兆しも見られるものの、在庫状況との関係で、業績が従来の水準に戻っていくにはもう少し時間がかかりそうだ。
ユニクロが独り勝ちといわれるアパレル業界にあって、唯一踏ん張ってきたのがユナイテッドアローズだった。
セレクトショップとしての道を切り開いてきた自負もある。「ユニクロは工業品、ユナイテッドアローズはファッション」
と評す業界関係者も多く、同社の復活に期待を寄せる声はよく聞かれる。もう一度輝きを取り戻せるか、大きな岐路に立っている。