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太陽光や風力といった再生可能エネルギー(以下再エネ)の発電コストの方が、石油や石炭よりも安い―。
斬新な論点ではない。昨年あたりから米国やヨーロッパ諸国でしきりに指摘され始め、発電分野での新常識になりつつある。
■世界中で次々と発表される再生エネルギーに関する報告書
これまで、特に日本では、再エネは火力発電に比べると1キロワット時当たりのコストがほぼ2倍近いと言われてきた。
だが時代は確実に動いている。
複数の報告書や専門家にあたると、新しい時代に突入したと言わざるを得ない。
米国に限ると、過去5年で再エネの発電コストは下がっている。
福島第一原子力発電所の事故以前から、再エネのコストは下落傾向を辿っているのだ。
原発事故後、世界的に反原発の動きが生まれると同時に、環境を重視した再エネへの動きが加速した。
その流れは理念的に真っ当に思えただけでなく、多くの人の賛同を得たし、説得力もあった。
一方、経済的な側面を考慮すると再エネはコストがかかりすぎるとの批判は消えない。
日本だけでなく、本当に再エネに頼れるようになるのは「遠い将来」との思いさえある。
太陽光や風力の発電施設だけでなく送電網を建設するコストを考えると、
政府からの補助金なしで競争力を持たせることは困難に思われるからだ。
しかし再エネへの実効性は確実に高まってきている。
米ニューヨークに本社を置く投資銀行ラザードが11月に公表したエネルギーのコスト分析によると、
太陽光発電は1キロワット時当たり5.6セント(約6.5円)という価格まで落ちている。
風力に至っては1.4セント(約1.6円)である。
それに比べて、これまで安いと言われていた天然ガスは6.1セント(約7.1円)、石炭は6.6セント(約7.7円)で、
ラザードの数字だけを見る限り、コストの逆転現象が起きている。
同社の分析担当者は、
「再エネの技術の進歩が目覚ましいのです。すでに化石燃料によるエネルギーと競争できるレベルになってきました」と、
再エネの市場競争力は本物であり、今後はさらに価格が下がるだろうと推察している。
ただ太陽光にしても風力にしても自然が相手であるため、
コスト低下が実現できても、曇天が多く、風が吹かない日が続くと発電はできない。
そのため、再エネだけに頼ることは困難だ。
(続きます)