14/08/06 02:30:35.30
(>>1の続き)
今回、有力エコノミストたちは、公表を目前に控えて、ようやく4~6月期の反動の大きさを直視し始めた。きっかけは後述するが、
経済産業省が7月30日の鉱工業生産指数(6月分)の公表に際し、生産の基調判断を「弱含み」に下方修正したことだったらしい。
あまりに実態とかけ離れた推計をそのままにしていたのでは、専門家としての信頼を失いかねないとの判断が働いたのかもしれない。
しかし、「早期の経済回復」というシナリオそのものは放棄していない。前述の10人の推計をみても、7~9月期には年率4.4%の
高いプラス成長に転じて、2014年度の通年では前年比0.7%のプラス成長を維持できるとしているのだ。
■政府が頼る「数字のマジック」
一方、政府はもっと強気だ。7月22日の経済財政諮問会議で、2014年度の通年のGDPの見通しを昨年末のそれより0.2%引き下げた
だけで、最終的には1.2%の成長を達成できると主張している。
その根拠は、「緩やかに回復する」という個人消費だ。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」(6月分速報値)で基本給が前年同月比で
0.3%増えたことなどが、そうした楽観論を支えているという。しかし、この統計でも、物価上昇分を差し引いた実質ベースでみると前年
同月比でマイナス3.8%だ。可処分所得はむしろ減ったと言わざるを得ない状況なのだ。
こうした中で、消費者の多くは増税前に前倒しで自動車や耐久消費財を中心に将来の消費を済ませており、落ち込む景気を個人消費
が下支えするというシナリオはあまりにも非現実的だろう。人手不足と言われながら、これまで就業を諦めていた人たちが就職活動を
始めた途端に、6月の完全失業率は前月比0.2ポイント悪化し、3.7%を記録した。
個人消費に過大な期待をするのは、リスクが大き過ぎる。
これはあくまでも推測だが、政府の本音は、「山高ければ、谷深し」と4~6月期に大きな落ち込みをみせた景気のサイクルが、今度は
「谷深ければ、山高し」とばかりに7~9月期の成長率が高く見えることを期待しているのではないだろうか。
確かに、GDP統計に、そうした数字のマジックが存在することは否定できない。だが、マジックはあくまでもマジックだ。それによって、
実態経済が改善するわけではないし、苦しいくらしが楽になるわけでもないことを肝に銘じるべきだろう。
■製造業&金融機関に懸念が広がる
そうした中で、最も気掛かりなのが、夏と冬の需要のピークのたびに企業経営者のアタマを悩ませている、電力の安定供給の問題だ。
実は、運転を停止している原子力発電所に代わってフル稼働している全国の火力発電所の2割は、運転開始から40年を経た老朽化
設備だ。そして、老朽化設備の故障は、今後、確実に増え続ける。
言い換えれば、不意の大規模停電のリスクが大きくなる一方なのだ。企業経営者にとって、工場などの製造拠点はもちろん、小売業
の店舗展開も大きなリスクを伴う状況になっており、一般企業が設備投資に二の足を踏む事態が懸念されている。
加えて、電気料金の上昇懸念も高まる一方だ。
化石燃料の調達コストの高騰に伴い、全国に10社ある電力会社のうち4社が4~6月期の決算で最終赤字に陥ったことが背景にある。
3期連続の経常赤字となった北海道電力が先週(7月31日)、2年連続で値上げの申請に踏み切ったのに続き、関西電力なども追随の
構えを見せている。
東日本大震災後、企業の電気代は平均で2割前後増えており、節電努力で補える水準ではないといった悲鳴も聞こえてくる。電気料金
の高騰は、法人活動の制約要因となるだけでなく、個人のくらしの足かせとしても、関心を払わざるを得ない深刻な問題だ。
(さらに続きます)