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(>>2の続き)
「型破り」なやり方で社員を教育するという意味では、三鷹光器もかなりユニークだ。同社は社員数わずか63名という町工場並みの
小企業だが、望遠鏡などの天文機器や宇宙衛星に搭載する観測機器でずば抜けた技術力を誇っている。また、医療用機器の分野では
世界的カメラメーカー、ライカとも提携し、手術顕微鏡システムなどで世界一のシェアを誇っている。
同社の創業者で代表取締役会長の中村義一氏は、次のように語る。
「我が社の製品は、世界の最高レベルの会社と競合しています。しかし、規模は町工場ですから、資金力などではとてもかなわない。
だから人材力がすべてです。生半可な教育では、世界一のモノづくりができるように社員は育ちません。特に最初が肝心なのです」
その教育法とは、最初の3年間は「とにかく仕事漬けにする」こと。朝から夜中まで家に帰っても風呂に入る時間しかないくらい、
ひたすら仕事をさせる。今の時代なら「ブラック企業」呼ばわりされてしまいそうなスパルタぶりだ。
「猟犬を訓練するのと同じことです。人間もほうっておけば、動物と同じように注意力散漫になってしまうものです。仕事を覚えるまでは
外の世界を完全に遮断するのが一番なのです」
中村氏はその他にも、奇想天外な経営方針を貫いてきた。
「中小企業は常に不測の事態に備えていなければならない。開発中の製品と同じものが大手でも開発中だとすれば、すぐに進路変更
しなければいけませんから。予定に合わせて準備したり、研究したりするのでは間に合わないのです。
ですから社員には『明日のことを聞かない・言わない』ように訓練しています。たとえば、出社してきた社員に『今日はその仕事はなし。
私と出張するぞ』といきなり連れ出すなんてこともありました。こうすることで、いつも緊張感を保ったまま仕事をすることができるのです」
三鷹光器は、採用の方法もかなり変わっている。応募者はまず、テニスボールをハガキに描いて送ることを求められる。球体をどう
表現し、伝えようとするのか発想力を見るのだ。2次試験では自分の顔を描かせて、モノづくりに必要なバランス感覚を試される。
他にも数学や機械に関する簡単な筆記試験や、模型飛行機作りなどもあるが、面白いのが昼時に定食屋に連れて行き、魚の食べ方
を見るというもの。小骨の多い煮魚や焼き魚を食べると、その人の性格が出るものだ。骨の位置など構造をよく理解して、上手に食べる
人もいれば、身がたくさん残ったまま食べ散らかす人もいる。箸の使い方が不器用だと、細かい作業ができないとみなされ、血合いを
取り除かないような無神経さもマイナス要因と判断されるという。
学歴にまったくこだわらない、非常にユニークな入社試験だが、こうして採用された人材が世界一の技術を支えているのだ。
(さらに続きます)