14/08/04 06:48:40.72
電力競争と原発が両立する道探れ
URLリンク(www.nikkei.com)
日本経済新聞 社説 2014/8/4付
福島第1原子力発電所の事故から4度目の夏が盛りを迎えている。事故処理には
なお時間がかかる。電力の供給不安は続き、地球温暖化をどう防ぐかも手探りだ。
安全や環境に配慮しながら、エネルギーを安く、安定的に確保することは国の成長のために
欠かせない。ただ、それらは相反する要素も多い。どのように絡み合う課題を解きほぐし、
望ましいエネルギー供給のあり方をみつけるか。全体を見据えた議論が必要だ。
◆全体見据えた議論を
入り口として電力市場改革と原発の関係から考えてみたい。
改正電気事業法が成立し、2016年から電力小売りが全面自由化される。(中略)
多様な事業者の参入を促し、競争を通じて料金を下げ、サービスの質を高める。自由化の
意義は大きい。発送電分離については十分な検証が必要だが、電力改革は着実に進めていきたい。
政府は新しいエネルギー基本計画で、原発を昼夜を問わず安定的に発電できる
「重要なベースロード電源」と位置づけた。
しかし、自由化との両立には課題が多い。原発は国の政策に沿って電力会社が運営する。
原発の建設には巨額の資金と、投資を回収する長い時間が必要だ。電力会社の地域独占と、
かかった費用は電気料金に上乗せして回収できる総括原価方式が支えてきた。
自由化に伴い地域独占や総括原価の仕組みはなくなる。今のままでは電力会社が原発を
持ち続けることは難しくなる。自由化時代に原発をどう残し、どう減らすのか。電力改革はこの議論が欠ける。
まず課題になるのが、原発の円滑な廃炉をどう進めるかだ。
原子力規制委員会が新たな規制基準を定めたのを受け、中国電力や四国電力などは古い原発の
廃炉を検討し始めた。改修工事で安全性を高めて再稼働をめざすか、廃炉にするかは、電力会社が経営判断すべきことだ。
だが電力会社に決断をためらわせる問題がある。巨額の廃炉費用を誰が
どう負担するのか。廃炉で生じる廃棄物をどう処分するのか。制度づくりは遅れている。(中略)
現行の制度の見直しは不可欠だ。英国では廃炉を公的機関が管理し、入札方式で
費用を抑えている。こうした仕組みも検討課題になるだろう。
原発の新増設をどうするかも、冷静に議論を始めるときだ。
◆国策民営に限界
国は原発の運転期間を原則40年と定めた。これに沿えば国内の原発は30年末時点で最大でも18基、
40年末には5基に減る。再生可能エネルギーの導入や省エネに全力を挙げ、原発を「自然減」に任せる選択肢はあるだろう。
だが10年後、20年後に再生エネルギーが安価な電力供給の主役になれるかは不透明だ。
電力会社が原発の新増設を計画し、地元同意や国の審査を経て運転を始めるまで10年以上かかる。
電力危機が迫ってから計画を立てるのでは間に合わない。選択肢としての新増設をいま放棄することはできまい。
原発建設は1基5千億~7千億円かかる。競争にさらされる電力会社が資金を調達できるのか。
公的な債務保証や将来の原発運営への国のかかわり方、事故が起きたときの国と電力会社の責任の分担など、詰めるべき課題は多い。
原発から出る核廃棄物の最終処分では、政府は電力会社任せの姿勢を転換し「国主導で処分地を決める」とした。
国民の理解を得るのは企業努力だけでは難しく、「国策民営」に限界があるためだ。
原発の廃炉や新増設も市場の競争原理にゆだねるだけでは解決できない。
電力会社と国の役割と責任分担を見直すときだ。