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火種は、韓国で上がった。2月17日、同国の特許庁は、新日鐵住金が保有する
「方向性電磁鋼板」に関する4件の韓国特許について、“無効”という判断を下した
のである。
この判断は、韓国の鉄鋼最大手・ポスコが申し立てていた特許無効審判を認めた
格好だ。平たくいえば、「新日鐵住金が韓国で持つ特許は、一般的なもので、
特別な技術として認められない。したがって、ポスコが同じものを製造しても、
まったく問題にならない」ということである。
韓国内では、「米国でも韓国と同様に新日鐵住金が持つ方向性電磁鋼板の特許が
無効になった」との報道も流れたが、新日鐵住金は間髪を入れずに「まったくの
誤りである」と完全否定した。
当惑を隠せない新日鐵住金は、事実関係をこう説明する。「米国での特許4件に
ついては、2012年9月にポスコが特許再審査請求を申し立てているが、基本となる
特許1件はすでに有効との判断がなされている。残る3件は係属中であり、当社
としては残り3件も同様に有効との判断がなされるものと考えている」。
■韓国の作戦は吉と出ない
これらの方向性電磁鋼板をめぐる紛争をあらためて整理しよう。
2000年以来、旧新日本製鐵とポスコは提携関係にあるが、まず新日鐵住金は、
同社を退職した研究者を通じてポスコが門外不出の“ブラックボックス技術”を
盗み出したと主張している。そして、日本では、12年4月に「不正競争防止法」に
基づき、約1000億円の損害賠償などを求め、ポスコとOBの研究者を提訴した。
それとは別に、米国では新日鐵住金が米国内で持つ製法上の特許侵害に関して、
ポスコに侵害の差し止めなどを求めてきた。それに対し、ポスコは米韓で特許
無効を申し立ててきたのである。
方向性電磁鋼板は、1953年に旧新日鐵が米国のアームコ社から技術を導入した
ものだが、68年以降は世界のトップになった。
現在までに、米国のAKスチール社(アームコ社)、ドイツのティッセンクルップ社、
中国の武漢鋼鉄、日本のJFEスチールに有償でライセンスを供与している。
しかし、世界で年間約200万トン生産されている方向性電磁鋼板のうち、等級の
高いものは約100万トン。その約30%をライセンスの供与を受けていないポスコと
中国の宝山鋼鉄が生産しているのだ。かねて、新日鐵住金の宗岡正二会長は
「何十年もかけて、数百億円を投じて開発してきた独自技術が、なぜこんなに
早く追いつかれるのか」と疑念を表明してきた。
新日鐵住金は、韓国の特許庁が表明した今回の“無効宣言”に対し、高等裁判所に
相当する韓国特許法院に審決取り消し訴訟を提議する。
米国の特許庁で係属中の残り3件の判断にも注目が集まるが、実は米韓における
特許侵害をめぐる訴訟は、日本での不正競争防止法の訴訟には直接的に影響しない。
韓国側は、自国の特許庁の判断を追い風にして巻き返したいようだが、必ずしも
有利に進むわけではなさそうだ。
◎新日鐵住金(5401) URLリンク(www.nssmc.com)
◎URLリンク(diamond.jp)
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