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建設現場で深刻さを増す人手不足に対応するため、外国人材の活用が浮上している。
政府は今年度内をメドに時限的な緊急措置を決める方針だ。
型枠工や鉄筋工など専門技能を身につけた建設職人は、東京五輪に向けた施設の
建設が始まると一段と不足する可能性がある。職人の高齢化や少子化で若い働き手の
確保が難しくなることを踏まえれば、外国人材の活用は選択肢として考えておくべきだ。
しかし、そのための体制整備には課題が多い。当面の受け皿として考えられる技能実習
制度は、総務省が昨年4月の行政評価で問題点の是正を関連機関に求めている。所定
時間外までの作業や不法就労者の雇用、人権侵害などの不正行為は2009年に確認された
ものだけで444件あった。
総務省は、入国管理局が実習生の受け入れ団体や実習にあたる企業などを十分に
把握できておらず、技能実習や雇用管理の実態が明らかでないと指摘する。
実習期間の拡大などで外国人材を増やす前に、まずこうした問題点を是正すべきだ。
1993年に始まった実習制度は、日本で習得した技能を本国の発展に役立ててもらう
国際貢献が本来の目的だ。だが、担い手不足が深刻になるにつれ、農業や水産加工品の
製造などで実習生は欠かせない労働力となっている。
安倍政権は6月にまとめる成長戦略の検討課題にも外国人の受け入れ環境の整備を加えた。
今後、実習制度の対象職種を介護などにも広げたりすれば「労働力確保」の意味合いは
一層強まる。
制度そのものについて議論を深める機会である。時限的な緊急措置とする建設分野も
拙速な対応は避けてほしい。
また、外国人労働者の増加が地域住民に不安を与えたり、企業の負担が増えたりしない
ように、最低限の日本語や日本の生活習慣などを知ってもらう事前研修は重要だ。
悪質な仲介業者が入り込まないために、人材を送り出す国の体制整備も求められる。
建設現場の人手不足は深刻な問題だが、外国人材の増加で賃金水準の是正が遅れ、
日本人労働者の確保が難しくなるようでは困る。受注競争の中で下がりすぎた賃金を
回復し、労働条件を改善して若い人が働きたいと考える環境に変える。これが優先課題
であることは言うまでもない。
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