13/12/27 12:07:05.30
「突然のことで申し訳ありませんが、別の道を見つけようと思います」
今年10月、パナソニックの車載用電池事業の技術責任者が、そんなあいさつを同僚や
上司にした後で姿を消した。
男の名前は、能間俊之。旧三洋電機の電池事業で活躍してきたことで知られており、
近年はフォード・モーターやフォルクスワーゲンなど一流自動車メーカーのハイブリッド車や
電気自動車に搭載する車載用電池の技術責任者として奔走してきた人物だ。
徹底したブラックボックス化(機密化)を施した加西工場(兵庫県)の技術トップとして、
唯一「技術総括」の肩書を持つエンジニアだった。
「絶対に外に出してはいけない人材として、名前すらメディアに出ないよう気をつけていた」
(パナソニック関係者)
 というのも、パソコンや携帯電話などに使う民生用リチウムイオン電池では、
サムスンSDIやLG化学など韓国勢に完敗。市場シェアを一気に逆転された中で、
この車載用電池だけは、唯一日の丸メーカーに勝ち目のある「最後のとりで」とされているからだ。
しかし、この能間氏の次の職場を周囲は誰も把握できず、ついに「経済産業省の一部でも、
海外勢に引き抜かれたのではと問題になっている」(関係者)。
その真相はまだ判然としていないが、憶測が飛び交う背景には、パナソニックの社内における
三洋出身者の人事面での“冷遇”があるとの見方は根強い。
■主要ポストで続々交代
年間売上高約8兆円のパナソニックは、合計49の事業部がある。
中でも「車載電池」「小型二次電池」「光ピックアップ」の三つの事業部は、旧三洋が
高い競争力を持っていたビジネスとして、組織の正式名称では「三洋電機」という冠が
付記されている。
そのため、ビジネスのかじ取りをする事業部長ポストも、暗黙の了解で三洋出身者が占めてきた。
ところが今年5月1日付人事では、海外自動車メーカーとのビジネス経験が豊富な池内弘・
車載電池事業部長が、現場を大きく離れる企画センターに異動。その右腕に当たる企画担当の
部長職と合わせて、双方ともパナソニック出身者に入れ替わった。
加えて、来年1月の人事で小型二次電池の中堀真介・事業部長も短期間で異動となり、
パナソニック出身者に交代する。
残る光ピックアップ事業は事業縮小が確定的で、足元好調な太陽電池を除けば、いよいよ
三洋出身幹部が仕切るビジネスはなくなる。
業績面を見れば、昨年度は韓国勢を前に大きな赤字に沈んだ小型二次電池や、
なかなか立ち上がらない車載電池の立て直しの一環として、より柔軟な人事交流を図ったと
理解することもできる。
しかし、現場の技術やビジネスに精通する幹部がことごとく主要ポストからはずれる事態に
「中長期的には事業の弱体化を招くのでは」という懸念が上がっている。
三洋買収に巨費を注いだ結果が、人材流出となればやるせない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部)
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