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待遇に不満の多い従業員をごっそりとロボットにすげ替えることができたら、どんなに楽か。
そんな妄想を抱く経営者はいないだろうか。
「給料を上げろ」「労働時間が長すぎる」などと労働者から突き上げられることも、
「ブラック企業」に認定されることもない。扱いに困る労働者に代わって、ロボットが黙々と
働いてくれる。
韓国にはロボットに全幅の信頼を寄せる経営者がいる。2000年代から米国市場などで日本車の
シェアを奪い、「日本車キラー」と呼ばれた現代自動車グループの鄭夢九(チョン・モング)
会長だ。
■トヨタに「カイゼン」を学ぶも失敗
鄭会長は長年、好戦的な労働組合に頭を悩ませてきた。今年に入ってからも韓国内の工場で
ストライキが頻発し、破竹の勢いに陰りが見える。生産が断続的に停止した影響で、2013年
4~6月期の営業利益は前年同期比5%減の2兆4064億ウォン(約2200億円)となった。
労組対策に手を焼く鄭会長が、2000年頃から推し進めたのが生産の自動化だ。トヨタ自動車の
「カイゼン」などをお手本に、現場の作業員が参加して、品質や工数の改善を試みた時期も
あったが、経営側と協調する意識が弱いため、うまくいかなかった。そこで可能な限り産業用
ロボットを使い、人間を徹底的に排除する方針へと大転換した。
その結果、「安かろう悪かろう」と揶揄された現代自の品質は2000年以降改善し、販売台数も
急拡大した。明治大学・国際日本学部で自動車産業を研究する呉在?(オ・ジェフォン)准教授は、
「現代自の経営陣は、人間よりロボットの方が、安心して仕事を任せられと考えている」と解説する。
現代自にとって究極の工場は、ストライキにビクともしない完全無人工場ということになる。
■現代自は匠の技に頼らない
現代自の自動化率の高さは、新興国の工場で顕著に表れる。呉准教授らの調査によると、中国
工場での溶接工程を例に取ればトヨタの自動化率は約40%だが、現代自は100%に達する。
人件費の安い新興国でも、現代自は徹底的に人手を排除する。
トヨタなど日本メーカーも、人件費のかさむ国内工場であれば自動化率は高い。ただ、トヨタは
自動車作りの中心に人間を位置づけている点が、現代自と決定的に異なる。
トヨタは自動化が進んだ現在でも、高技能者の育成に余念がない。現場の作業者には塗装、鋳造、
鍛造などそれぞれの分野で手作業を学ばせている。その中から優秀な者を選抜し、さらに経験を
積ませて高技能者に育てている。
トヨタの技術職で最高位の河合満技官は、「熟練者の手作業をロボットに置き換えてきたのが
トヨタの自動化の歴史だ。手作業を知らないと、ロボットの不具合を見つけて直したり、よりよい
作り方がないか考えたりできない」と言う。
人間の創意工夫を通じて産業用ロボットの改善を図り、生産性や品質を高めるという考え方は、
「製造工程で人間の関与をできるだけ少なくする」(呉准教授)という現代自の思想とは相容れない。
ではどちらの方法がより高い品質のクルマを生産できるのか。 (※続く)
●韓国・現代自動車の「エラントラ」。
産業用ロボットをフル活用し、なるべく人手をかけずに生産している
URLリンク(business.nikkeibp.co.jp)
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