13/07/21 01:51:59.31
<前略>
この図はアメリカを1として部門ごとの生産性(青い点線・右軸)を見たものだが、日本の
生産性はEUに比べても半分程度で、特に非製造業の生産性が低く、上昇率も低い。その原因
として考えられるのは、ICT投資(茶色の棒・左軸)が低いことだ。企業が労働節約的な
ITの導入に消極的なことが、非製造業の生産性を低迷させている。
日本の経営者にとっては正社員の人件費は固定費なので、コンピュータを導入しても減らす
ことはできない。だからIT投資をする代わりにパートの主婦を安い賃金で雇うのだ。これに
よる賃下げの結果が「デフレ」と呼ばれる現象である。Noahも示すように、その因果関係は
明らかであり、金融政策とは何の関係もない。
日本のIT産業はもう終わったが、もっと遅れているのは中村伊知哉氏も指摘するように
ITユーザーだ。政府が鳴り物入りで導入する「マイナンバー」も、今までの紙の事務を
残したまま電子化するので、人件費はむしろ大幅に増える。欧米の行政電子化が人件費の
削減のために行なわれているのと対照的だ。
最新鋭の労働節約的な工場は日本からなくなり、海外にできるという負の退出効果も特徴的だ。
要するに、雇用を守るために生産性が犠牲にされ、設備投資が萎縮しているのだ。設備投資
によって労働が節約できないことが、企業の貯蓄超過という異常な現象の一つの原因である。
このように労働力を浪費する雇用慣行は、高度成長期の労働力が余っていたときできたもの
で、これから労働人口が減ってゆく時代には労働配分のゆがみが日本経済全体のボトルネック
になる。それが停滞の原因なので、80年代にサッチャーやレーガンが断行したように、
労働組合との対決を恐れないで雇用に手をつけるしかない。
しかし安倍政権は雇用問題にはまったくふれず、日銀がカネをばらまいてごまかそうとして
いる。このようなバラマキ金融政策は、アメリカでは保守派が強く批判している介入主義だ。
自民党は保守主義の矜持も失ったのか。
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