13/05/21 15:26:10.71
日本取引所グループ(略称JPX)の役員らは、顔をほころばせているに違いあるまい。
今年1月4日に新規上場した株式の初値は3740円。それが4月中旬には1万2250円の
高値を付け、3カ月余りで3.3倍に上がった。日経平均株価の上昇率を大きく上回るグッド
・イシュー(成功裏の上場)となったからだ。
明治の時代、JPXの前身の東京株式取引所(略称東株)の株式は投機筋の格好の売買対象だった。
1904年の日露開戦直前に120円台だった株価は緒戦の勝利を好感し、一時180円台に上昇。
が、戦闘の膠着(こうちゃく)ですぐ130円台に反落した。翌年5月に日本海海戦の圧勝が
伝わると、259円まで跳ね上がった(株価は『兜町盛衰記(長谷川光太郎著・図書出版社)』
から引用)。
東株の日露開戦前からピークまでの上昇率は2倍強。JPX株の上昇率は3カ月余りで3倍強。
取引所株に限れば、アベノミクス相場の威力は日本海海戦勝利の影響力を凌駕(りょうが)する。
日経平均2万円超を見込む強気筋が増えている。アベノミクス相場が始まる直前の日経平均は
8800円台。この3倍は2万6000円台。強気筋にはJPX株が相場の先行指標銘柄にも
映っていよう。
東京証券取引所が会員組織だったころ。理事長を務めた一人に谷村裕さん(故人、旧大蔵省
事務次官などを歴任)がいた。谷村さんは洒脱(しゃだつ)でもあった。自著の中で、場立ち
の手ぶりを「兜町の無形文化財」と記した。人さし指を舌に触れれば味の素、げんこつでぶつ
まねをした後、指で三の数字を示せば三井物産といった具合。全銘柄が手ぶりを介して売買された。
「株式市場は人の喜怒哀楽が織りなすところ」。こんな谷村語録も記憶に残る。
時代は進み、東証は株式会社組織の一員になった。売買は電子取引システムで処理する。
JPXは株価の刻み幅を価格帯によっては10銭、50銭刻みにする計画だ。1000分の1秒
単位という超高速大量取引がやがて市場の主流となろう。「機械あれば機事あり(山本夏彦)」。
10銭刻みで値ザヤ稼ぎを狙う内外のトレーダー、投機筋が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)
しかねない危うさをはらむ。株式市場の無機質化、一方向に振れやすいマネーゲーム化が進行しよう。
顔が見え、人の喜怒哀楽が伝わった市場は昔の話。現代人は電気がなかった昔の生活に戻れない。
同じように、エモーショナル(感情的)なマーケットの復活を望むのは懐古趣味にすぎまい。
ならば、投資家は市場のムード、勢いにのみ込まれないことが肝要だ。欲望を制御する自己規律を
強めることだ。
「下落は上昇より急激が常」。明治から今日まで株式相場はこの繰り返しだった。相場水準は
反動安に備える域に踏み込んだようにも思える。わらべうた「とおりゃんせ」の歌詞の一節を
借用すれば、「上げはよいよい、下げは怖い」である。(経済ジャーナリスト 加藤隆一)
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