13/05/07 08:18:19.58
3月某日、大手電機メーカーの開発部門に勤務する竹山浩さん(仮名・40代)のところに、
人事部から1本の内線電話が入った。用件は、人材サービス会社が主催する「キャリア
チェンジセミナー」研修への参加要請だった。
軽い気持ちで研修会場へ行ってみると、部署は違うが、同じ会社の社員が集められていた。
その中には、社内でも“穀つぶし”として知られている人や、心身の調子を崩し、仕事に
支障が出ている人も含まれていた。
研修内容は、「第二のキャリア設計への手引き」。過去の仕事を振り返り、自身のスキルを
分析する。
要は、キャリアチェンジ研修とは名ばかりで、体のいい退職勧奨プログラムだった。研修が
終わるころには、「このまま会社に残っても、自分の居場所はない」と、気持ちの整理が
ついていた。
退職の意思を伝えると、手続きは面白いほど簡単に済んだ。
竹山さんが勤めてきた大手電機メーカーの場合、法人契約を結んでいる再就職支援会社3社の
うちの1社を選べば、再就職の手伝いをしてくれるシステムになっている。竹山さんの転職
活動は始まったばかりだ。
■リストラ対象が“本丸”へ ついに始まった人余り
企業が“本気”のリストラに乗り出した。2000年代前半にも雇用調整局面はあったが、その
ときの調整対象は、あくまで製造業の生産要員、海外要員が中心だった。だが、今回の調整
対象は、“本丸”のホワイトカラー。予期せぬ退職勧奨に、候補者当人も「まさか自分が対象
となるなんて……」とうなだれるケースも少なくない。
今、ミドル世代(一般的には、30代後半~54歳)の再就職市場が活性化している。無論、
ミドル世代の転職は一筋縄ではいかないことも多い。年収、業種・職種、勤務地のうち、
いずれかを妥協しなければ決まりにくい。転職活動が長期化すればするほど、自身の市場
価値が下がり就職が決まりにくくなってしまう。
雇用問題の核心が、若年層の就職難からミドル世代の“人余り”へ移りつつある。
厚生労働省は、年金の支給開始年齢を65歳から70歳へ引き上げる方向で検討しており、
それが実現したとしても社会保障費の財源不足が解消される見込みはない。健康な人は
生涯現役で働くつもりでいたほうがいい。
大久保幸夫・リクルート ワークス研究所長は、「早晩、80歳総勤労時代が到来する」と
指摘する。仮に80歳まで働くとすれば、50歳という年齢は、社会人生活で まだ“折り返し
地点”にすぎない。向こう30年のキャリア設計を構築しなければならないのだ。
30年という時間はあまりに長い。もはや、会社にしがみつき、惰性で過ごせる「逃げ切り
世代」など存在しないのである。ミドルの“人余り”は深刻化するばかりだ。
―今、「仕事争奪戦」の幕が開いた。
◎URLリンク(diamond.jp)