13/01/22 17:14:06.00
日本ブランドが危なくなって久しい。今では世界に2つとない心躍る製品を生み出しているのは
ソニーでもパナソニックでもなくアップルであり、アップルを脅かしているのはサムスン電子だ。
さらにそのすぐ後ろには、中国勢も迫っている。
一方、株式時価総額に占めるブランド価値の比率は高まる一方で、ブランド戦略は成長戦略
そのもの。米プロクター&ギャンブル(P&G)の元グローバル・マーケティング責任者で
『本当のブランド理念について語ろう─「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50』の
著者であるジム・ステンゲルに、ブランド価値向上の秘訣と日本ブランド再生のヒントを聞いた。
─消費者の忠誠心と財務成績をベースに世界のトップブランドをランキングした
「ステンゲル50」に入った日本企業は、楽天市場一社だけだった。なぜこんな
結果になったと思うか。
日本にもトヨタ自動車のように素晴らしい会社があり、私は高く評価している。東日本大震災の
影響がなければ、トヨタはリスト入りしていただろう。
一方、日本企業はあまりにも長い間、製品、技術、生産すべてがうまく行き過ぎて、マーケ
ティングをあまり重視してこなかったのも事実だ。製品は勝手に売れたし、販売網もあったし、
市場も大きかった。未来を作らず、新しい需要も作らず、革新的な製品も生まれない。だが、
今後数年の間には非常に面白い変化が起こるだろう。主要産業の主要企業のなかにも、うまく
いかないところが出てきたからだ。
成長する企業はマーケティングを重視し、グローバルに戦えるブランドを作る。日本に必要
なのはグローバルブランドだ。韓国にも中国にも非常に強いブランドがある。日本企業は
いくつかの韓国企業に遅れているし、中国企業も急速に台頭している。彼らには、グローバル
ブランドを作ろうという大きな野心がある。その点、日本は遅れている。
─アメリカの優良企業で構成するS&P500社の株式時価総額のうち、1980年には
ほとんどすべてが工場や現金などの有形資産だったが、2010年にはそれが40?45%に
落ち込んで、半分以上がブランド価値のような無形資産になったとある。
ブランドの重要性を裏付けるデータだ。実際、「ステンゲル50」に入ったトップブランド企業と
S&P500社の株価のパフォーマンスを比べると、2000年1月からの11年間でステンゲル50社
の株価は382.3%、S&P500社は-7.9%と大きな差がついている。
ブランドの価値が会社の価値の半分を占めるなら、当然、それに責任を負う人間が必要だ。
日本企業には、そういう人間がいないのではないか。
─それは、あなたもP&Gで務めたグローバル・マーケティング責任者とか
CMO(最高マーケティング責任者)のことか。
マーケティング部門の責任者は必ず必要だ。多くの日本企業はマーケティングを財務や技術開発
のような専門として見ていな い。販売促進活動の一環のように思っている。それが問題だ。
販売が目指すのは、今日、明日、来月などの短期でたくさん売り上げること。マーケティングは
長期的に需要を創造するもの。製品開発を根本から変えるようなもの。マーケティングは消費者
を理解し、企業に長期的な勝利をもたらすものだ。(※続く)
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