【書評】容赦ない現状の批判『日本農業への正しい絶望法』 神門善久著[12/11/05]at BIZPLUS
【書評】容赦ない現状の批判『日本農業への正しい絶望法』 神門善久著[12/11/05] - 暇つぶし2ch1:やるっきゃ騎士φ ★
12/11/06 10:08:03.73
評・中島隆信(経済学者・慶応大教授)

4・6兆円の補助金を受けながら、3兆円の付加価値しか作り出せない日本の農業は
今や絶望的な状況にある。
それに対して、「もっと補助金を出して担い手を増やせ」とか
「大規模生産で農業を輸出産業にせよ」など周囲の声は喧(かまびす)しい。
本書は、現場主義を貫く著者が、こうした表層的な議論を一刀両断し、日本農業が
抱える真の問題をえぐり出す試みである。

たとえば、農水省肝いりの「担い手育成事業」は、農地の形を整えたり、農道を
拡幅したりする公共事業である。
しかし、そのことで家が建てやすくなり、住宅への転用を後押しする結果を招いている
という。そのさい、転用を考えている農家にとって、農業に熱心な若者はかえって
迷惑な存在ですらあるというから皮肉な話だ。

また、近年流行の有機栽培のなかには、適切な処理をしない家畜の糞尿(ふんにょう)を
大量投与しただけの「名ばかり有機栽培」が少なくなく、窒素過多ゆえに食味も悪く、
周囲の河川や地下水の汚染まで引き起こしているという。

著者はこうした問題の原因のひとつに日本の無秩序な土地利用をあげる。
平地の少ない日本では、マニュアル化された大規模生産ではなく、高度な土作り技能に
特化した農業こそ優位性を持つという。
そのためには効率的な水利用や共同での害虫防除など農業者同士の緊密な利害調整が
必要となる。したがって、ひとたび農地が住宅へ転用されれば、近隣農業者への
マイナスの影響は避けられない。

もうひとつの原因は消費者の味覚の鈍化である。
土作りを怠った農作物は食味を悪化させるが、食生活の乱れから舌の劣化した
日本の消費者にはその判別がつかない。品質が見分けられなければ良品の供給者が
消えていくのは世の常である。

現状を厳しく批判する著者の容赦ない筆致は読者を後ずさりさせるほどの迫力がある。
絶望しつつも、農業が好きでたまらない著者の屈折した思いが伝わってくる一冊である。

◇ごうど・よしひさ=1962年生まれ。明治学院大教授。
著書に『日本の食と農』『さよならニッポン農業』など。
 新潮新書 740円

ソースは
URLリンク(www.yomiuri.co.jp)
本の外観は
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