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先日、東京都八王子市の織物メーカー、みやしんが廃業を決めたというニュースが流れ、
多くの業界関係者を落胆させた。9月18日付の繊研新聞によると、10月末をめどに土地は売却、
織機も有償で譲るなど処分を進めているとのことだ。改めて日本の繊維製造業が置かれている
状況の難しさが浮き彫りになった。
■「繊維製造業の目標」だった企業の廃業
みやしん、と聞いても一般の人はあまりなじみがないのではないだろうか。前述の繊研新聞の
記事から抜粋して紹介したい。現在の社員数は9人、売上高は「90年代後半の1億5000万円の
ピーク時から減少を続け、昨年は赤字に陥っていた」とある。
通常、この規模の生地メーカーの廃業はあまり大きなニュースにはならない。にもかかわらず、
業界内でこの話題が注目を集めているのは、みやしんがこれまで高品質な物作りを行い、錚々たる
デザイナーブランドへ生地を供給していたからだろう。
繊研新聞の記事では「80年代のDCブーム全盛を支えた企業の一つであり、新しい物作りと
その発信力から、中小企業の多いテキスタイル産地で一つの目標とされてきた」とある。
さらに、テキスタイル・ネットワーク展(TN展)を呼びかけて軌道に乗せたともある。
今回の報道に際して、同じ八王子の染色工場、奥田染工場の奥田博伸社長がブログで心のこもった
文章を書いている。詳しくは全文を読んでいただきたいのだが、その中で「みやしんの廃業について
僕が思うことが何かと言えばメイドインジャパンだ、いい物作りをしろと言うが、いいものを
つくれば儲かるというのは、少なからず嘘だということについてだ」とある。これは今回の廃業、
ひいては日本の繊維製造業の衰退とも直結する事実である。筆者のような部外者ではなく、日々
物作りに取り組まれている奥田社長の言葉だけにリアリティに溢れている。
以下に少し引用する。
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みやしんは八王子でもずば抜けていい仕事をしてきたし、時代の空気に取り残されない姿勢で
物作りを行っていた。
みやしんが生み出してきた布を見たことがあればその事実に触れているはずだ。
その柔軟なアイデアから生まれたアーカイブは明らかに圧倒的だ。そう言うクオリティの仕事が
出来る工場は日本全国を探したってほんの一握りに限られている。
(中略)
いい仕事をしようとしたところはみんな潰れた。いま生き残っているのは、たいがい当時、
安く多くの仕事をしていたところだ。実際あの地域にそれが多く残っているのはそういうことだと。
ある時代、周りのプリント屋さんで儲けていたところはどこか。一番儲かったのはとにかく質より、
安く早くを追求した工場だ。他より少し安く、後はスピード重視で1日何百反と仕上げる。それが
一番儲かった。
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※続く
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