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■製造業に乗り出す「ITの雄」
「製造業」の定義が急速に変化している。その転機は2007年にあった。
アマゾンという巨大ネット企業を考えてみよう。この会社は1990年代に、オンライン
書店としてスタートした。インターネットのウェブサイト上で本を選んでクリックすると
、宅配便で本が送られてくる。非常にシンプルなEC(電子商取引)のビジネスだ。これに
アマゾンは徹底的な技術的改良を加え、ワンクリックで注文が完了する仕組みや、顧客の
過去の購入履歴から最適なお勧めを提示するレコメンデーションなどを実現した。さらに
書籍から音楽CDやDVD、さらには日用雑貨やギフト、果ては食料品にまで品ぞろえを増や
し、成長を続けてきた。
そしてこの生粋のEC企業は2007年、新たなビジネスモデルへと乗り出した。この年、
オリジナルの電子書籍リーダー「キンドル」を発売したのである。このキンドル発売の
意味は二つある。一つは同社が電子書籍というデジタルコンテンツの販売に乗り出した
ことであり、そしてもう一つは、キンドルを製造発売する製造業へと乗り出したことだ。
キンドルは発売から何度となく改良を重ね、さらに昨年秋にはカラー版の「キンドル・
ファイア」も発売し、人気を呼んだ。年末のクリスマスシーズン前後に500万台近くも
出荷し、一時的にはタブレット市場の16.8%ものシェアを獲得し、アップルの人気商品
「iPad」に次ぐ2位につけたほどだった。日本の電機メーカーがグローバル市場で販売
しているタブレットにほとんど存在感がなく、市場シェアもわずかしかないことを振り
返れば、いまやアマゾンは日本の冠たる大手電機メーカーよりも力のある製造業になった
とさえいえる。
これはグーグルも同様だ。同社ももともと、製造業とはまったく無縁のビジネスから
スタートしている。米スタンフォード大学の大学院生だった創業者二人が90年代末、
検索エンジンのサービスを開発したのが同社の始まりだ。その後、検索エンジン広告と
いう効率のよいビジネスモデルを導入して成功を収め、従来型の広告代理店の規模を
はるかに凌ぐ世界最大のネット広告企業となった。
この卓越したネット企業は2007年、「アンドロイド」という携帯電話向けのOSを発表
する。この段階では、グーグルがやったのはOSというソフトウェアの開発でしかない。
だが2010年初頭には、アンドロイドOSを搭載した自社販売のスマートフォン「ネクサス
・ワン」を、英米や香港などで発売した。実際には、グーグルが開発したのはソフトの
部分だけで、ハードの設計や組み立ては台湾のメーカーHTCが担当したのだが、製品は
「グーグル」の刻印が入れられて販売された。
残念ながらこのネクサス・ワンはあまり売れず、半年ほどで販売終了になってしまう。
だが製造業への進出を同社は諦めていなかったようで、今度はオリジナルのタブレット
製品「ネクサス7」を発表。やはり台湾のメーカーASUSが組み立てを担当し、この7月から
全米で発売されている。
アマゾンもグーグルも、インターネットの業界で大成功を収めた企業である。ECや
ネット広告で十分すぎるほどの収益を得ており、売上げや時価総額は圧倒的だ。その巨大
企業2社が、なぜ畑違いの製造業に乗り出してきているのだろうか?
ソース
URLリンク(seiji.yahoo.co.jp)
(つづく)