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一般の消費者に「ソニーといえば、何を連想しますか」と聞いたら、どんな答えが返ってくるだろうか。
50歳以上なら、「井深大、盛田昭夫」という人物名だろうし、商品名なら「ウォークマン」で間違いない。
このほか2番手、3番手にも多くの商品名が語られるだろう。テレビ「トリニトロン」、パソコン「バイオ」、ゲーム機「プレイステーション」などいろいろあると思う。
でも、古くからの「ソニーファン」から見ると、概ね2000年代に入って「ソニーらしい製品」が出ていないという感想を多く聞く。なぜだろう。
この間、インターネット社会が急速に進み、携帯電話をはじめネット関連機器にAV(映像・音楽)が組み込まれたからだが、
ソニーにとっては、ネット関連機器の開発に人材および技術蓄積が希薄だったようだ。
たとえば、米アップルの多機能携帯端末「iPhone(アイフォーン)」や、タブレット型端末「iPad(アイパッド)」のような製品開発がソニーに可能だったかどうか。
ソニーの技術者のなかには「可能性は十分あった」とする者もいたかもしれない。しかし、ビジネスは結果である。
iPhoneは、かつての「ウォークマン」のように世界を席巻した。
アップル創業者の天才スティーブ・ジョブズは「ソニーから多くのことを学んだ」と語っており、
これまでのソニーの多くの製品や技術のなかに開発のヒントとなる多くの「学ぶモノ」があったという。
こうしたことに関してジョブズは鋭い語録を残している。
「消費者に、何が欲しいかを聞いて、それを与えるだけではいけない。完成するころには、彼らは新しいものを欲しがるだろう」
「製品をデザインするのは、とても難しい。多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいかわからないものだ」
「イノベーションは、研究開発費の額とは関係がない。大事なのはカネではない。
抱えている人材を、いかに導いていくか、どれだけ目標を理解しているかが重要だ」
一方、ジョブズに非常に尊敬された盛田昭夫も、多くの語録を残した。
「モノづくり企業には3種類のクリエイティビティー(生産力、創造力)が必要だ。
(1)テクノロジー(技術革新)(2)プロダクトプランニング(商品企画)(3)マーケティング(市場調査)-
この3分野でのクリエイティビティーが絶対必要で、いずれが欠けたりしてもいけない」
「組織の秩序に組み込もうという態度は、あらゆる個性的な能力を殺してしまう」
2人の語録には相通じるところがある。だが、ネット社会となり、
あらゆる電機製品のデジタル化が進み、ソニーにとっては開発分野が広がりすぎた。
また、技術者の流出もあったろう。ソニーがいう「わくわくするような商品」は作れなかったが、
アップルは分野を特化したことで「わくわく商品」を作ることができた。
いってみればソニーは、「普通の大企業」になってしまったのかもしれない。 (産経新聞編集委員 小林隆太郎) =敬称略
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