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環境保護団体が原子力発電は高すぎると訴えることはあるが、発言の主がゼネラル
・エレクトリック(GE)のような原子力産業の先駆的企業のトップとなると、
話はまるで違ってくる。
■原発業界の「不都合な真実」
GEは1950年代に世界でも最初期の商用原子炉を建設し、2007年に日本の日立製作所と
原子力発電の合弁会社を設立して以来、業界トップの一角を占めてきた。
GEのジェフリー・イメルト最高経営責任者(CEO)が、原子力発電を経済的に擁護するのは
「非常に難しく」、大半の国はガスと再生可能エネルギーの組み合わせに移行していると、
7月末にフィナンシャル・タイムズに対して語ったのは、業界の「不都合な真実」を口にした
だけだと見る投資家もいる。
昨年の各種経済予測では、原子力発電所が生み出す電力はこの先何年も天然ガスや風力発電所、
太陽光パネルの電力よりも安いか同程度とされていた。
一部の専門家はそうした予想を疑問視してきた。太陽光パネルの市場価格が急落し、風力
タービンの価格も下がったうえ、膨大な量のシェールガスの発見で米国における安いガス価格
がほかにも広まるとの期待が生じたからだ。
欧州で20年ぶりの原子炉新設となるフィンランドのオルキルオト3号機とフランスのフラマン
ビルの建設は大幅に遅れ、原子炉建設コストの試算を膨らませた。日本の福島での原発事故が
一段とコストを増やし、ドイツなど一部の国は原子力発電の廃止を決めた。
「基本的にイメルト(氏)は正しい。最終的には、ガスと風力、太陽光の組み合わせになる
だろう」。ロンドンに本拠を構え、クリーンエネルギー関連プロジェクトに投資するプライ
ベートエクイティ(非上場株)投資会社ズーク・キャピタルのサマー・ソルティCEOはこう話す。
■米国外では成り立たない?
原子力業界の幹部は、イメルト氏の発言は米国という1国の事情を反映したものに過ぎない
と言う。世界原子力協会(WNA)のスティーブ・キッド副理事長はこう語る。「ガス価格が
安いと新しい原発が経済的に競争するのは難しくなる。だが、今のような価格水準がいつまで
も続くのか、世界各地で妥当かどうかを、我々は疑問視している」
「欧州では、ガス市場が米国の状況と同じにはなりそうもなく、各国の市場次第で原発プロ
ジェクトは経済的に正当化できる。アジアでは、各国はまだ高価な輸入液化天然ガス(LNG)
に依存しており原発プロジェクトは非常に魅力的なはずだ」
GEのライバル企業は、GEにとって原子力は小さな事業で、同社はもはや米国外では原子力
産業の大きな勢力ではないと言う。
■需要減退や原発事故で条件が一変
だが業界幹部は、コストが上昇したことは否定できない。今では、国の補助金なしで新たな
原子炉を建設できるという従来の主張は見当外れに見える。
2007年から2008年にかけて原子力の復活が勢いを増した頃、企業は電力価格が大幅に高くなる
と予想しており、原子炉建設に必要な莫大な投資はリスクが小さく見えた。各社は炭素価格も
上昇すると予想し、石炭やガスを使った火力発電所は原子力や再生可能エネルギーに比べて
不利になると考えた。
ところが多くの先進国では、景気後退でエネルギー需要と電力価格が予想より低く抑えられ、
原発投資の条件は悪化した。(※続く)
◎URLリンク(www.nikkei.com)