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トルコの原子力発電所の建設計画をめぐる国際的な受注競争が激化している。国内に
原発メーカー3社を誇る技術力を武器に日本は交渉をリードしてきた。しかし、東京
電力福島第1原発事故後の間隙を突き、中韓などが国を挙げたトップセールスを展開。
1基5千億円ともいわれる巨大ビジネスを取り逃す恐れも出ている。
欧州とアジアをつなぐ玄関口として知られるイスタンブール。トプカプ宮殿など歴史的
建造物が集まる「旧市街」から、釣り人が並ぶガラタ橋で金角湾を渡って「新市街」に
入ると沿道に金融機関が立ち並ぶ。多くの日本企業も進出し、2011年には8%台の
成長を実現したトルコ最大の経済都市としての姿を映し出している。
7月中旬、九州ニュービジネス協議会がトルコを視察。大成建設が参画するボスポラス
海峡横断鉄道トンネルの建設現場などを訪問した。同協議会の松尾新吾会長(九州電力
相談役)は「経済発展に伴って鉄道や電力、道路などインフラ整備の需要が高まれば、
日本企業が協力できる余地は大きい」と語った。
インフラ整備のなかで、日本が特に期待を寄せるのが原発だ。トルコ政府は20年までの
電力需要の伸びを年率最大7・5%と予想しており、原発の有望市場の一つ。海外の原発
プラントメーカーは米ゼネラル・エレクトリック(GE)や仏アレバ、韓国などの公営
企業に限られ、「東芝、日立製作所、三菱重工業という民間メーカーが3社もあるのは、
それだけ日本の技術力がある」(日本原子力産業協会)。
その技術力を武器に、日本政府はイスタンブールから約500キロ離れたシノップの
原発建設計画に東芝、東電と官民一体で受注活動を展開してきた。同じ地震国としての
技術力をアピールし、10年末に優先交渉権を獲得し、受注への期待は一気に膨らんだ。
だが、原発事故後の日本の混乱が、中韓の巻き返しを許した。韓国は10年11月、
トルコ側と条件面で折り合わず交渉を辞退。日本にリードを許していたが、今年2月
には韓国の李(イ)明博(ミョンバク)大統領がトルコを訪問。エルドアン首相との
直接会談で交渉再開を決め、日本の優先交渉権が事実上消滅した。
韓国は09年にアラブ首長国連邦(UAE)の原発受注競争で、異例の60年間の
運転保証を提示して受注を獲得した実績があるだけに、経済産業省幹部は「価格面
などで最大のライバル」と警戒心をあらわにする。さらに、4月には中国の温家宝
首相が、エルドアン首相と原子力協定に調印し、シノップ原発受注競争に正式に参戦。
トルコ政府はカナダとも交渉を始めている。
これに対し、日本は原発事故の影響が重くのしかかる。昨年8月、当時の菅政権は
「これまで進められてきた各国との原子力協力は、培ってきた国家間の信頼を損なう
ことのないよう進める」と表明。政府は3月にトルコとの原子力協定で実質合意した
ものの、調印はいまだ実現していない。
野田政権は「脱原発依存」の姿勢を徐々に強めつつあり、メーカー側からは
「まず政府が枠組みを決めてもらわないと」と不満が漏れる。トルコ政府は今秋にも
受注相手国を決定する見通しだが、受注先に巨額の資金調達を求めるなど一筋縄では
いかない交渉相手だけに、官民を挙げた取り組みが不可欠だ。
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