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熊谷亮丸 大和総研 チーフエコノミスト
[東京 3日 ロイター] 6月17日のギリシャ再選挙では、緊縮財政派の新民主主義党(ND)が勝利し、
同党を中心とする連立政権が発足した。「ギリシャのユーロ圏離脱」の可能性がひとまず低下したことを受け、
国際金融市場では株高・ユーロ高がいったん進行した。
確かに「最悪の事態」は回避されたが、結論としては、欧州ソブリン危機が解決したとの見方は時期尚早であり、
今後も不安定な状態が続く見通しである。
欧州ソブリン危機が日本経済に与える影響に関する大和総研のシミュレーションによれば、
最悪のケースでは、わが国の実質GDPは4%以上押し下げられるリスクがある。
試算結果については、相当程度の幅を持って見る必要があることは言うまでもないが、
今後、欧州ソブリン危機が深刻化した場合、日本経済がリーマンショック並みの打撃を受ける可能性があり、要注意である。
本稿では、グローバルなマネーフローの動向に焦点を当て、
この危機が再度深刻化した場合のリスクシナリオについて考察したい。
<最大のリスクは日米長期金利の上昇>
まず強調したいのは、2008年9月に発生したリーマンショックや、
今回の欧州ソブリン危機のような深刻な金融危機が発生すると、
グローバルなマネーフローは「逆流」を起こす傾向があるという点だ。
現在のグローバルなマネーフローは、リーマンショック前夜の2007年と非常に似通った特徴を有している。
統計上確認できる最新の2012年第1・四半期時点でのマネーフローをみると、その特徴は以下の4点に集約できる。
第一に、米国への資金流入という面では、日本、アジア、英国という3地域からの主に米国の債券に対する投資が、
米国の経常赤字のファイナンスを支えている。2007年時点との比較では、
今回は2011年第3・四半期以降、日本国内での資金運用難などを背景に、
日本から米国への資金流入のパイプが太くなっている点が特徴的である。
第二に、英国を中心とするマネーフローの動向を見ると、
英国から日本に対する巨額の資金流入(2012年第1・四半期のネットベースでは年率換算で8365億ドル)が確認できる。
英国資本による対日投資の内訳を見ると、そのほとんどがわが国の債券市場(同7857億ドル)に流入している。
第三に、米国から出入りする資金は両建てで高水準に達している。
2007年当時同様、海外資本による対米投資が債券投資中心であるのに対して、
米国の対外投資は株式投資や直接投資のウエイトが相対的に高い。
ただし、2011年前半まで、米国資本は、中南米、アジア、オセアニアなどに、
株式投資や直接投資という形で大量のリスクマネーを供給してきたが、
足下では「リスクオフ」の動きが顕在化し、海外の株式を売り越している。
第四に、米国とユーロ圏の間では、2011年前半まで、2007年当時を上回る規模で米国からユーロ圏への資金流入が起きていた。
ただし、足下では、米国からユーロ圏への資金流入はやや細っている。
続きます>>2-3
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