12/06/30 09:32:06.02
国土交通省は29日、整備新幹線の3区間の着工を認可した。消費増税法案が衆院を通過した
直後である。こんな時期に総事業費が3兆円を超す大型公共事業を認めるという民主党政権の
対応は理解に苦しむ。
認可したのは北海道新幹線の新函館―札幌間、北陸新幹線の金沢―敦賀間、九州新幹線
長崎ルートの諫早―長崎間の3区間だ。総事業費の7割を国と沿線の自治体が負担し、
残りはJR各社が鉄道建設機構に納める線路の使用料を充てる計画だ。
九州が10年後、北陸が13年後、北海道が23年後の完成を予定している。それぞれの地域に
とっては朗報だろうが、事業の採算性やその効果には疑問が残る。
まず、需要予測が甘いのではないか。国土交通省の審議会が実施した試算では、今後競争が
激しくなるとみられる格安航空会社の動向を考慮していない。新幹線とほぼ並行して走る
高速道路の車線数を増やす地域もある。
国交省は3区間のいずれも費用より時間短縮などの効果が上回るとみている。しかし、
事業費が少しでも膨らめば逆転するような水準だ。当初、2兆7500億円だった総事業費は
すでに、3000億円程度増えている。
今回の各区間の工期はこれまでの類似事業に比べて長い。国交省は「1年ごとの支出額を
抑えるため」と説明している。そうまでしてなぜ、3つの区間を同時に始める必要がある
のかわからない。
民主党政権はこれまで公共事業予算を削減し、様々な大型事業を凍結してきた。しかし、
4月に高速道路の建設再開を認めたことに続く、整備新幹線の新規着工だ。「コンクリート
から人へ」という理念を捨て、ばらまき政策に転換したと判断せざるを得ない。
今後、老朽化したインフラの維持・更新費が膨らむだけに、新規に着手する事業は徹底的に
絞り込む必要がある。整備新幹線は優先度が高い事業とは言い難い。
おかしいのは民主党だけではない。自民党も10年間で200兆円の投資を見込む国土強靱(じん)化
基本法案を今国会に提出している。災害に強い国土づくりを掲げているが、その内容をみると
旧来型の公共事業が並んでいる。
国民に増税への理解を求めなければならない今、こんなありさまでいいのか。公共事業費を
抑える手綱を緩めてはならない。
◎URLリンク(www.nikkei.com)