12/06/23 15:18:12.06
■予想外の停電回避
5月の頭までいたインド南端のタミルナド州は、投資誘致に積極的だ。おかげで、ここ5年ほどで
かなりの自動車産業の集積などもできてきて、なかなか発展を遂げてはいるのだが、一方で
インフラの整備計画が予定どおりに進まなかったりで、急成長地域特有のトラブルもある。
その最たるものが電力で、いまや多くの進出企業は週2日の完全停電、それ以外の日も1日6時間
停電という状態が続いている。州としても無為無策なわけではないが、一部、火力設備増強の
遅れがあり、また当てにしていた原発が日本のとばっちりで稼働が遅れ、短期的にはどうしよう
もない。州都チェンナイでも毎日2時間は停電で、いちばん暑いシーズンに入りかけなのに
冷房がしばしば使えず、人びとは悲鳴を挙げていて、かなり厳しい状況ではあったのだが……。
4月末、状況が突然よくなった。なぜかというと突然風が吹いてきたからだ。
タミルナド州は、再生可能エネルギーにやたらに力を入れている。それも風力が多い。少し
地方部に出ると、一面の風力発電用ウィンドファームの風車群に突入してぎょっとすることも
多い。州の電力公社がもっている発電容量は1万メガワット強だけれど(でも、いま4分の1
くらいが稼働していないとのこと)、それに加えて風力などの設備容量が6500メガワット以上
ある。稼働容量でみれば、再生可能エネルギーが半分くらいということになる。
が、当然のことながら、風力発電は風がなければただの風車だ。これまでは風がほとんどなく、
州内における風力発電からの電力はゼロだった。それが、4月末にいきなり、その半分近くが
稼働するようになった。おかげで、停電が続く予定だった多くの都市が、予想外に停電せずに
済むこととなって、その住民たちには思わぬボーナスになったというわけ。
さて、供給改善はまあけっこうなことではある。同州はこれから風が吹くシーズンに入るので、
今後は風力からの電力もずっと増えるだろうし、もう少し安定した電力供給も可能になって、
進出した日本企業の状況も改善すると期待したい。
■ここまで不安定だとは
しかし……ぼくは個人的には、再生可能エネルギーには期待している。太陽電池の価格は
大幅に下がっているし、風力のコストもずいぶん競争力がついてきた。地球温暖化問題だって、
再生可能エネルギーがあと2歩くらい改善されれば、火力をかなり減らせるから騒ぐ必要も
なくなるだろうと期待していた。
が、実際にここまでの再生可能エネルギー依存度の高さを体験したのは初めてだった。そして
ここまで再生可能エネルギーが不安定だとは、理屈ではわかっていても、実感はなかった。
今回経験したような、ダメなときには発電量ゼロで、それがちょっと風が吹けば突然改善する
―ここまで変動が激しいものとは思っていなかった。単独ではもちろん調子のいいときも
悪いときもある。でも、広域でやればずっと平準化されると思っていた。タミルナド州も
けっこう広い(日本の3分の1程度)し、風力発電もあちこちにある。こんな、オフシーズン
には発電量ゼロなどという状況が何カ月も続くとは、想像していなかった。(※続く)
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