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自民党は6月4日、「国土強靱化基本法案」を国会に提出した。これは今後3年間を
「国土強靭化集中期間」として防災設備に15兆円を集中投資し、10年間で200兆円の
国債を発行して公共事業を行うという計画である。
さいわい野党が出しても今国会で通る可能性はないが、遠からず自民党が政権に復帰する
ことを考えると笑ってすませるわけにはいかない。
■古い自民党に回帰するバラマキ法案
「国土強靱化」とは聞き慣れないことばだが、自民党のホームページにある法案の概要に
よれば、その基本理念は「経済等における過度の効率性の追求の結果としての一極集中、
国土の脆弱性の是正」による「戦後の国土政策・経済政策の総合的検証の結果に基づく
多極分散型の国土の形成」だそうである。
田中角栄の「列島改造論」以来の、都市から地方に再分配する「土建国家」の復活だ。
その具体策も、最初の方は「大規模災害発生時の円滑・迅速な避難・救援の確保」など
もっともらしい話があるのだが、後半は、
・地域間交流・連携の促進(全国的高速交通網の構築、日本海国土軸・太平洋国土軸等の
相互連携)
・我が国全体の経済力維持・向上(国際競争力強化のための社会資本整備、アジアとの
貿易・交流・連携)
・農山漁村・農林水産業の振興
・離島の保全等(海岸等の保全、周辺海域の警備強化、住民の生活基盤の整備)
といった項目が並ぶ。
「農山漁村・農林水産業の振興」や「離島の保全等」が防災とどういう関係があるのだろうか。
要するに、震災に便乗して昔のバラマキ公共事業をまるごと復活させ、民主党のスローガンを
逆転させて「人からコンクリートへ」戻ろうということだろう。
都市住民の支持を失った自民党にとって、最後の命綱は農民票と土建票である。特に土建業界は
政治との関係が強く事業費の規模が大きいので、多額の政治献金を集めやすい。これは無党派層
の支持はあきらめ、古い自民党に戻ってコアな支持層を固めようということだろう。
■200兆円の国債発行で財政が破綻する
この「200兆円バラマキ」の教祖が、京大の藤井聡教授である─というと、マクロ経済学者が
景気対策を提唱していると思われるかもしれないが、彼は工学部の教授で経済学は素人である。
ところが、彼が国会に提出した資料では、「デフレ」が諸悪の根源だという珍説を展開している。
これはよくある勘違いである。デフレで名目賃金が下がると同時に物価も下がるので、実質所得
(名目賃金+デフレ率)はあまり変わらない。事実、2000年代に入ってから名目賃金は11%
下がっているが、実質賃金はほぼ同じだ。
したがってこの錯覚にもとづいて展開される藤井氏の壮大な「デフレ脱却策」なるものは、
経済的にはすべてナンセンスである。問題はデフレでなく不況なのだ。(※続く)
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