12/05/13 19:02:14.62
>>1のつづき
■韓国製LiBはなぜ安いのか
韓国勢の切り札は価格だ。特にLG化学は、日本勢をはるかに下回る、中、大型でkWh
あたり2~3万円という価格を提示しているという話もある。激しい競争で下落した小型
民生用(Whあたり約20円)と同レベルだ。
日本のメーカーが韓国勢の強さの源泉を批評するときの内容はほぼ共通している。
(1)品質8割価格5割、(2)国策による支援(法人税、補助金、電気料金)、(3)ウォン安、
(4)日本からの技術者流出、(5)リバースエンジニアリング(既存の製品を分解・解析
してより良い製品を作る)だから研究開発費がかからない、(6)製造装置メーカーが
「フルターンキー(ボタンを押せばよい状態)」で、製造装置を販売してしまう。
背後にあるのは、技術では負けていないのに、外部的な要因によってコスト競争力を
付けた韓国勢にしてやられているという意識だろう。
たしかに、「同じ土俵で戦うことさえできれば……」という恨み節が出てくるのは致し
方ない側面がある。(2)の国策については、1990年代末のアジア通貨危機でIMF管理と
なり、産業別に大胆に企業を再編したこと。さらに、韓国政府が、20年までに官民合わせ
て15兆(1兆円強)の集中投資を通じて、中大型電池での世界シェア50%、素材の国産化率
75%の達成を掲げていることなどが挙げられる。このあたりは、個別産業政策をはるか
昔にやめてしまった経済産業省に頭を切り替えてもらわないといけない。
しかし、国策の差という側面を差し引いたとしても、技術力の差を過信するのは危険で
ある。「電池もモジュールになり、EV用ですらコモディティ化しつつある」(独立系電池
専業メーカー、エナックスの三枝雅貴社長)のなら、中大型電池においてもわずかな技術
力の差よりも、コスト競争力が優先される時代に入っているとみるべきではないか。
家庭用蓄電システムに使用するLiBに関してサムスンSDIと独占売買契約を結んだニチコン
(京都府京都市)の古矢勝彦執行役員は、「サムスンの技術力は10年前に比べると急速に
上がっている。何より、経営判断が素早く戦略的。長期的視点に立って、大規模な投資を
即断する。貪欲に吸収し学ぼうとする姿勢が素晴らしい」と語る。
たしかに、流出した日本人技術者や、日本の製造装置メーカーの機械を使い、リバース
エンジニアリング、いわば物まねの精神で、韓国企業が追撃してきたことは納得いかない
かもしれない。しかし、もう済んでしまったことだ。むしろ、経営力で差をつけられて
しまっていることを冷静に直視し、韓国企業の長所を学ぶという精神に立つべきではない
だろうか。
日本の複数のLiB関係者は、こう口を揃える。「90年代までは、毎年、もっといえば
毎日のように新しい技術が出てきたのに、ここ最近、進歩が緩やかになっているように感じる」。
(つづく)