12/03/17 06:19:37.10
前回のエントリーで、ベーシックインカム(ベーカム)と同様の試みとして、産業革命
勃興期(1795~1834年)にイギリスで実施されたスピーナムランド法を紹介した。1200字
のコラムでは細かなことまで説明できないので、すこし追記しておきたい。
市場の拡大とともにイギリス社会がはじめて体験した「貧困」という問題に対処するため
、「貧困者一人ひとりの所得に関係なく最低所得を保障する」という制度が導入された。
スピーナムランド法は、自由経済のもとで、現金給付によって貧困問題を“最終解決”
しようとするとなにが起きるのかの壮大な社会実験だった。
この所得保障制度は厳密にはベーカムとは異なるが、ひとは同じような経済的インセン
ティヴ(働かなくても食べていける)に対して同じような反応をするとすれば、結果も
おそらく似たようなものだろう。「スピーナムランド法は大失敗したが、ベーカムなら
うまくいく」という説得力のある説明は、(すくなくとも私は)聞いたことがない。
「生存権による貧困の解消」を目指すスピーナムランド法は、当初は緊急措置とされて
いたが、イギリス全土に広がるにつれて既得権化していった。それがどのような結果を
招いたかを詳述したのが、異端の経済学者カール・ポラニーの大著『大転換』だ。ポラニー
は、ファシズムやスターリニズムの台頭と第二次世界大戦の惨状を目にして、資本主義
(自由経済)は原理的に破綻する運命にあることを証明すべくこの本を書いた。
ポラニーは、自由経済(商品経済)は、労働(人間)、土地(環境)、貨幣という、本来
「商品」ではないものを商品として扱う自己矛盾から自壊すると論じた。長らく見捨て
られていた彼の仕事がふたたび注目を集めるようになったのは、アジア経済危機(1997年
)や世界金融危機(2007年)などのグローバル経済危機を予見していた、とされたからだ。
ポラニーはいまや、「市場原理主義」に反対するひとたちの理論的な支柱となっている。
ポラニーの主張の当否は別として、ここで興味深いのは、自由経済の不可能性を論じた
ポラニーが、“元祖ベーカム”であるスピーナムランド法を全否定していることだ。以下
、『大転換』からポラニー自身の論評を抜粋してみよう。
ソース
URLリンク(blogos.com)
(つづく)