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東日本大震災で被災した病院の復旧の遅れや環境の変化で、入院期間が長くなったり、
遠くの医療機関に転院せざるをえなくなったりする患者が出てきた。以前から医師不足
が深刻な地域で、必要な医療を、住民にどう届けていくかが今後の課題だ。
■転院先は車で2時間
昨年11月にトイレに行こうとして転び、大腿(だいたい)骨が折れた宮城県気仙沼市の
男性(86)は2月初め、気仙沼市立病院から市内の民間病院に転院した。家族は車で
1時間もかかる介護施設など、次の移り先を探すが、まだ見つからない。
「父をそばでみてあげたいけど、ここでは暮らせない」。娘(60)は、4畳半二間の
仮設住宅を見回し、ため息をつく。市立病院によると、「男性の骨折の治療は終わっており
元の広い自宅なら帰れた」という。
男性は震災前、15LDKの自宅で妻や娘夫婦ら8人で暮らしていた。家は津波に流され、
4月には妻を心不全で亡くした。娘夫婦と入居した仮設住宅では、狭さから動かなくなって
足元がもたつくように。骨折後は車いすが必要になった。
転院先の紹介などを担当する市立病院の阿部孝子看護師は「男性のように、家や家族を
失ったため病状が安定しても退院できない患者が増えた」と話す。
ベッドの不足が行き場のない患者をさらに増やす。
男性が住む気仙沼医療圏(気仙沼市、南三陸町)には震災前、市立、市立本吉、公立志津川、
民間の計5病院で計753床あった。市立病院は病気になってから数週間の急性期の治療を担う。
新たな患者を受けるため、状態が安定した人は小規模の病院や介護老人保健施設に移るか、
自宅に戻ってもらう。
この地域では急性期を過ぎた患者の行き場がもともと不足していた。こうした患者を多く
受けてきた本吉と公立志津川の2病院の被災で、計164床減った。
市立病院では今、震災前の2倍の約60人が転院や退院を待つ。車で2時間かかる病院へ
移る人もいる。
転院先の一つ、気仙沼市に隣接する岩手県陸前高田市の希望ケ丘(のぞみがおか)病院。
市立病院の患者を含め11人が入院を希望している。待機者は震災前から倍増した。
畠山政平事務長は「今いる患者の7、8割は寝たきりで退院は難しい。新しい患者は
入院まで約5カ月待ちのこともある」と話す。
宮城県名取市の民間病院の2011年12月の平均在院日数は59.1日。前年の12月
と比べ、約3割長くなった。病状は安定したが、被災したため、入院を続けた人がいた
ことなどが影響したという。
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