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■映画「非誠勿擾」でブレイクした北海道の積極的な取り組み
上海の寒空に“稚内名物”の南中ソーランが鳴り響く。稚内から来た高校生の威勢のいい
パフォーマンスに道行く人々が足を止める。2011年12月、北海道経済部観光局は、
春節商戦を見込んで観光プロモーションを仕掛けた。
3.11以降、放射能汚染への不安が根強く、落ち込みが続いた中国人の訪日観光ツアーだが、
昨年10月には前年同月並みに回復した。さらに11、12月は3割超の大幅増加と状況が一転、
11月、12月の単月の訪日客数もそれぞれ過去最高を記録した。
そんななか、この上昇機運を確実にとらえようと、地方都市も積極的な売り込みを展開する。
北海道もそのひとつだ。東京から入り富士山を周り大阪に抜ける「ゴールデンルート」が
中国人訪日客の需要の8割以上を占める状況下、地方都市への呼び込みは大きな課題だ。
北海道は2010年を境に中国人観光客数を伸ばした。
2000年までは年間2000~3000人の推移だったが、2010年には年間13万5000人に達した。
理由のひとつが、人気俳優・葛優を起用した映画「非誠勿擾(フェイチェンウーラオ)」。
クライマックスのロケ地は道東、その美しく広大な自然が中国人を魅了したのか、09年の
中国人観光客数は前年比で倍増に近い爆発的な伸びを示した。
北海道は豊かな自然と豊富な海の幸がある。最近、中国人の間では「おいしいスイーツ」
でも知られている。「白い恋人」は中国人観光客もおなじみの定番商品、ロイズの生チョコ、
夕張メロンのゼリー、生キャラメルも人気だ。
他方、北海道はこんなアングルでも注目されている。
「北海道は開拓時代に欧米の“お雇い外国人”を招聘して産業振興や街作りを行ったが、その
歴史に中国の発展を重ね、『なぜここまで発展できたのか』と関心を寄せる観光客が多い」と、
北海道経済部観光局国際観光担当局長の飛田康彦さんは語る。観光スポットやグルメのみ
ならず、北海道そのものが魅力だというわけだ。
道内の宿泊施設や飲食など、サービス業も本気になってきた。少し前までは宿泊施設では
「備品が盗まれるのでは」といった警戒感、飲食業では「日本人常連客が離れるかも」
といった不安感が強かったが、それも徐々に過去のものになりつつある。
野口観光グループ(登別市)の関係者は、「震災を経て北海道全体が前向きになろうと
している。もはやこの北海道も、インバウンドビジネスに背を向けられなくなったと感じる」
と変化を指摘する。
ちなみに2011年末、北海道経済部観光局は、観光消費による生産波及効果は1兆8237億円で、
16万4000人を超える雇用を生み出すと推計した。
■日本文化発祥の地として売り込む島根県
今年の春節、島根県を19人の中国人観光客が訪れた。岡山空港に降り立ち島根県を周遊、
大阪から帰路便に乗るこの春節ツアーには、演出をめぐるさまざまな試行錯誤があった。
何があるかすら、ほとんど中国人には知られていない島根県をどう売り込むか―そんな
分厚い壁が存在していたのである。(※続く)
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