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世界中でクルマが売れている。日本のクルマも売れている。しかしそのことが必ずしも
日本経済を沸き立たせてくれない。景気が日本を素通りしているようだ。なぜだろう。
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たとえばそのヒントは、朝日新聞が1月28日朝刊で掲載した、「車販売新興国で明暗」と
いう署名記事にありそうだ。
1.自動車の世界販売台数は09年に落ち込んだが、10年、11年と急速に回復した。
2.GM(ゼネラルモーターズ)は急回復でトップに返り咲き、 日産・ルノーもV字回復
で世界3位に浮上した。 VW(フォルクスワーゲン)はそれまでの横ばいから、 2年で
世界2位にまで伸長した。
3.08年にGMを抜いて世界1位になったトヨタは、11年には落ち込み、世界4位に甘んじた。
4.11年には東日本大震災やタイの洪水被害があったため、部品供給が滞って日本の自動車
会社はどこも苦戦を強いられた。しかし日産は部品調達がスムーズで、他社より生産再開
が早かった。
5.日産はコスト削減のために世界共通の車台を作っていた。この車台を使ってタイ工場
で10年に「マーチ」の生産を始め、11年には中国、インド、メキシコなどでも生産を開始した。
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この記事から日産好調の要点を拾えば、つぎの3点だろう。
1.販売ターゲットを中国やメキシコなどの新興国に絞った。
2.新興国ユーザーに合わせて低価格、低コストを徹底した。
3.そのために部品の世界共通化と人件費が安い現地生産を徹底した。
日産は間もなくメキシコでの生産が100万台を突破するという。対するトヨタのメキシコ
生産能力は5万台だそうだ。トヨタは国内の販売シェア4割を落とさないために、海外への
大規模な生産シフトがとりづらいというのだ。
トヨタと比べると日産の経営戦略の確かさ、力強さが際立って見える。GMもVWも同じ
経営戦略を取って好調であることから考えれば、世界市場を相手にしたビジネス戦で勝ち
残るやり方は明らかだ。
新興市場への食い込み、世界共通規格、世界広域調達、現地生産。これが世界市場で戦う
企業のキーワードだろう。
このキーワードは同時に、世界市場を相手に戦う企業が、祖国に雇用や利益をもたらさ
なくなることを意味している。
部品や完成品に投入される労働は海外にある。部品の運搬や保管、完成品の運搬は海外で
発注される。決済は海外の銀行を使って行われる。生産から販売まで、祖国に落ちる金は
ほとんどなくなるのだ。
明治以来、私たちが見慣れてきた日本の経済社会は、いまやピリオドを打とうとしているようだ。
昨年、日本の貿易収支は31年ぶりに赤字へと転落した。
しかしピリオドとは、もちろん終止符のことではない。一区切り、という再生の予感を
孕んだ意味としたい。
文●楢木望
ライフマネジメント研究所所長/ビジネスエッセイスト
『月刊就職ジャーナル』編集長、『月刊海外旅行情報』編集長を歴任。その後、ライフ
マネジメント研究所を設立、所長に就任。採用・教育コンサルタント、就職コンサルタント
、経営コンサルタント。著書に『内定したら読む本』など。
ソース:フレッシャーズ
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