16/05/27 07:29:59.27 UaMaw/MRk
九二式重機関銃五十五、三キログラム。弾薬箱等ヲ馬デ運ブ他四人デ
担ギ弾薬箱ハ 一人一・二箱背負ウコトモアル。
コノヨウナ武装デ一時間ノ中、行進四十五分、休憩十五分（コノ間ニ
馬ノ荷ヲ下ロシ、馬脚ヲ藁束ナドデコスル・ソッコウ）。これに
四キロ行軍、五キロ行軍、六キロ行軍、八キロ行軍「ホトンド
駆ケ足」等ノ種別ガアル。
歩幅ハ 七十五センチ、戦地戦闘ノ場合又地形昼夜ノ状況ニヨリ、
種々デアル。又、部隊ノ規模ニヨリ、一万人以上ノ師団ノ場合ハ一日
ノ行程四・五キロデアッタ。
＜烽火・狼煙・（ノロシ）＞支那戦線ノ経験者ハ不気味ナ「烽火
（ノロシ）」ノ思イ出ヲ忘レナイト思ウ。日本中世ノ「烽火・ノロシ」
ハ支那伝来ノモノデアリ、支那烽火（ノロシ）ノ使用ハ
紀元前カラトイウ。杜甫ノ「春望」中ノ「烽火連三月」ハ戦乱ノ意デ
アル。「烽火（ノロシ）」ニハ煙ダケノモノ、赤・青・白ノ色彩ガ
アルモノガアリ、ソノ打チ上ゲ方ヤ色彩ニヨッテ、敵襲ノ兵力、方向
等ガ伝エラレルヨウニナッテオリ、山岳ヤ丘陵ノナイ場合ハ、オヨソ
二十キロ間隔、烽火（ノロシ）台ノナイ場合デモ、工作員ガイル
ラシク、昼夜ニ上ゲラレ連絡ガ取ラレテイル。打チ上ゲラレル高サハ
二十メートルタラズデアル。唐代ノ西域カラ長安ヘノ烽火（ノロシ）
連絡ハ、千八百キロヲ四時間ノ速度デアッタトイワレテイル。
常備状態ニモ、ヨルコトダガ、地方ノ烽火（ノロシ）ニヨル連絡速度
モ、新幹線列車速度以上デアッタヨウニ思ワレル。
夜ノ戦野ニ音モ タバコノ火モ忍バセテ伏セテイルト、様々ナ烽火ガ
不気味ニ続キ、行動ヲ起コストソノ方向ニ烽火（ノロシ）ガ続ク。
殺気トトモニ遠ク異国ノ戦野ニイル境涯ヘノ思イガ迫リ、
仰向ケニ夜空ヲ見上ゲタコト度々デアル。
「魯南中部粛正討伐」ノ初日、中隊後尾ノワガ小隊ガ、
宣撫地区（センブ・占領地区ノ住民ニ自国のノ政策ナドヲ伝エ人心ヲ
安定サセルコト）ノ平屋店子トイウ村ノ西ノハズレ百メートル
タラズニ小休止シタ。ソノ途端、ワガ小隊ニ最モ近イ家ノアタリ・・
33:空中空母
16/05/30 14:45:33.01 o5SJaTlO7
平屋店子トイウ村ノ西ノハズレ百メートルタラズニ小休止シタ。
ソノ途端、ワガ小隊ニ最モ近イ家ノアタリカラ白煙ノ烽火（ノロシ）
ガアガッタ。後尾分隊長ガ駆ケ出シタ兵ヲ見テ
『捕マエマスカ』ト言ッタノデ、私ガ『ウン』ト言ツテ駆ケ出シタ時、
二個分隊ホドガ駈ケテイタ。
烽火（ノロシ）ノ上ガッタ付近ニ、三十人ホド突ッ込ンダガ、
ワカラナカッタ。苦力（クーリー）ヤ百姓ノ掌（タナゴコロ）ニハ
胼胝（タコ）ガアッテ、兵ノ掌ト区別ガツクノデアルガ、百姓ヲ
シナガラノ工作員ガイタラシイ。敵ノホームグラウンドダケニ、
コノ辺ハ歯痒イ（ハガユイ）ホド弱い所デアッタ。
＜魯南中部粛清討伐＞
警備隊ハ 少数兵力、甲・乙・丙ノ、 丙装備、最低ノ旧式装備デ
村ヤ町ノ占領地域（点）トコレラヲ結ブ鉄道ヲ始メトスル交通路
（線）ヲ確保スル イワユル点線警備デアッタ。
敵ノ装備ハ悪イガ兵員ハオオク、カツ、戦場ハ敵ノホームグラウン
ドデアル。コレニ対応スル機動性ノ発揮デキル線ノ確保ガ必須デ
アッタノデアル。コノ線ノ確保モ困難ニナッテ、末期ニナルホド
分屯隊ノ玉砕ガ多クナッテイル。
点線確保ノタメノ戦闘ヲ粛正討伐、討伐ト通称シテイタ。討伐ハ
警備管内ノ行動デアルカラ、一週間、長クテ一カ月クライノ
作戦行動デアル。討伐ニ対シテ侵攻作戦ハ某々作戦ト称シ、新地域
ヤ敵基地ヘノ攻撃デ、コレハ数カ月カラ一年ニ及ブ行動ガ多イシ、
装備モ甲、兵力モ万単位ニナッテイル。
警備行動ハ暗号無線ニヨリ逐一上級司令部ヘ報告シテイルガ、
一区切リツクト「戦闘詳報」ヲ提出、報告スル。従ッテ討伐名称ハ
後ノ命名ノ場合ガ多イ。上級部隊カラノ命令作戦ノ場合モ、
部分的ニハ同前デアル。
魯南ハ道名（地域名）デアルガ、魯南中部粛正討伐ノ名称モ後ノモ
ノデ、主タル目的ハ、南方ノ第四中隊駐屯地ノ日照県トノ［線］
確保上ノ情況悪化ノタメノモノデアッタ。軍隊ノ最小単位ハ生活・
34:アスペルがー名乗る
16/05/31 22:42:04.93 p+1yGHgAT
悟られてんのに自覚なし 悲しい人生
35:空中空母
16/06/02 07:08:46.56 ZTqGLIy52
南方ノ第四中隊駐屯地ノ日照県トノ［線］確保上ノ情況悪化ノタメノ
モノデアッタ。軍隊ノ最小単位ハ生活・戦闘行動トモ中隊ガ
原則デアル。第三中隊 第二小隊長トシテ参戦シタ討伐隊ノ行動ハ、
諸城ヨリ南下、平家店子→許孟集→狗眼口（交戦）→朱家荘
（交戦）→ 柳樹店子→南石橋→両城鎮→腰村→湖河五菫（キン・スミ
レ）山西南麓（交戦）→湖河→五菫山東南麓 （交戦）戸部苓
（レイ・ミミナグサ）→皇華練→諸城帰隊
四月三十日ノ六日間デアッタ。
山砲隊ト協同（協同ハ両方ガ平等、協力ハドチラカガ主体性ヲ持ツ）
数人ノ負傷者ダケデ格別ノ戦果モナイ、典型的縄張リ争イ的討伐デ
アッタ。
連日連夜ノ機動行動ニ疲レテクルト、ムシロ戦闘ガアルコトヲ
期待シ会戦ニナルト蘇生シタヨウニ、疲レモ「フットンデ」
シマイ、皆 活気ガミナギリ、敏捷ニナッテクルモノデアル。
夜風ノ異様ナ音ト共ニ暗イ夜ヲ徹シテノ隠密行動ハ、車ヤ馬、靴ニ音
ヤ火花ガ出ナイヨウニ種々ノモノヲ巻き付ケル。小休止ニハ鉄兜ヤ手
拭、布キレヲ覆ッテ煙草ヲ吸ウ。馬ノ荷ハ降ロシテ馬脚ニ「ソッコウ
ヲカケル。（束藁・束ネタ一握リノワラデ、馬の下肢部ヲ コスリ
マッサージスルコト）・「揉ミユスル事」。
長イ人間ノ習性デ夜ハ眠クナルガ、相乗シテクル。睡魔トハ誰ノ
言イ出シタ語カ知ラナイガ、マサシク魔物然デ始末ガ悪イ。
兵ハ歩キナガラ寝テイル。小休止ニ前ノ者ニブツカッテ目ヲサマス。
出発時ニ人数確認ヲシナイト寝テイル奴ヲ捨テテシマウコトニナル。
捨テラレレバ捕虜ニナルカ殺サレル。冬ナラ凍死必定デアル。
コノ点ハ古兵ヤ分隊長ノ馴レデ救ワレテイル。冬ヤ雪中行軍ハ昼夜
トモ歩ク方ガ暖カク、凍傷ニナラナイ。従タガッテ将校用乗馬モ
交代デ弱ッタ者ヲ乗セル。
夏ノ馬上モ睡ムク、交代ヲスルノガ常デアル。討伐戦ハ夜通シノ
急行軍ヤ自動車輸送デ、払暁前ニ包囲線ヲ形成シ、払暁ヲ待ッテ急襲
スルノガ、常道デアル。山砲や大隊砲ノ射程マデ包囲戦を縮メ、払暁
36:空中空母
16/06/05 06:36:06.31 CdO1msa71
急行軍ヤ自動車輸送デ、払暁前ニ包囲線ヲ形成シ、払暁ヲ待ッテ急襲
スルノガ、常道デアル。山砲や大隊砲ノ射程マデ包囲戦を縮メ、払暁
ニ焼夷弾等ヲブチ込ム。重機関銃ヤ迫撃砲ガ接近制圧、歩兵隊ガ
焼夷擲弾筒ヤ軽機関銃ノ射撃ヲ浴ビセナガラ小銃弾モ浴ビセル。
窮鼠ガ猫ヲ噛マナイ様ニ、敵ガ大部隊ノ場合ハ退路ヲ開イテ攻撃シ、
敵ノ降伏カ退却ヲ待ツ。
コチラノ犠牲ヲ少ナクスルタメニ、地形ヤ地理ニ詳シイ敵ノ
ホームグラウンドに深追イシナイ場合ガ多イ。昼頃マデニ目鼻ガツカ
ナイ場合ハ、無理ヲシナイデ対峙シタリ引キ揚ゲル場合ガ多イ。
戦死者ヤ負傷者ガ出テクルト、兵隊ハ一斉ニ殺気立ッテ狂奔（キョウ
ホン）、狂気ニ生キ物ノ闘争心ヲ爆発サセ、憎シミヲ行動化スルタメ
ニ神速ナ知恵ガ展開、猪突猛進ガ盲進ニナリカネナイカラ、
コノ辺ニ小隊長ヤ分隊長最前線ノ戦況判断ト、的確迅速ナ指揮ヤ行動
ガ求メラレルノデアル。幾多の戦闘を体験スルウチニ次第ニ戦闘馴レ
シテ、戦闘ノ状況判断、呼吸ニ賢クナル。
演習は戦闘実戦の体験ニハナラナイ。
演習ハアクマデ技術訓練演習デ、マネゴトデアリ、実戦場裡（リ・裏
ノ異体字・俗字）ニハホトンド役立タナイ形式的ナモノデ、
実戦場ノ呼吸トイッタモノハ皆目ツカメナイ。
敵弾飛来スル音デ自ラト弾丸トノ距離ガ判断サレ鉄兜（テツカブト）
ナドモ、ソレマデハ重ク頭ニ痛イカラ背負ッテイルガ、弾音ニヨ
ッテ各自ガ被リ始メル。敵弾ノ狙撃ヲ判断シツツノ進度、方向、
姿勢ヲ決メテ行ク。コレラハ将ニ生物天与ノ知恵。生得物トイエル。
又、突撃戦ニナッテ駆ケタリ、走ッタリシダスト、無我夢中、
何ガ何ヤラワカラナクナリ、遅レナイヨウニ一緒ニ
突ッ込ンデユク。
カクシテ死ヌ奴ハ死ヌ、負傷スル奴ハ負傷スル。コンナ白兵戦
（ハクヘイセン・白刃、ムキミ、銃剣ニヨル接近戦）ノ時間帯
モアル。戦死者ノコトヲ、帰隊後仲間ガ、
『彼、今度ノ戦闘行動ニ何トナク影ガウスカッタ。』トカ『ツイテ』
37:空中空母
16/06/08 06:21:41.16 7eK+MAzw5
コンナ白兵戦（ハクヘイセン・白刃、ムキミ、銃剣ニヨル接近戦）ノ
時間帯モアル。戦死者ノコトヲ、帰隊後仲間ガ、『彼、今度ノ戦闘行
動ニ何トナク影ガウスカッタ。』トカ『ツイテイナカッタンダ』ト言
ッテイルノヲ聞イタコトモアル。敵ニ近ヅクト急ニ無口ニナリ、
体ガ何トナク熱発シタヨウナ、軽イ悪寒ト戦慄ノホテリヲ覚エ、
排尿ガ盛ンニナルモノデアル。敵兵トイッテモ個人対個人ノ何ノ恨ミ
辛（ツラミ）ナドナイガ、戦友ガ殺（ヤ）ラレレバ、憎シミニ殺気立
ツノデアル。
戦争トハ徹底的ナ破壊、殺人、侵略デアルガ、ソレハ国対国ノ関係デ
個対個ノ問題デハナイ。
部隊長ハ直轄部隊ヲ率イテ、中隊長ニ命令ヲ伝エル。中隊長ハ指揮班
ヲ従エテ上級ノ命令ヤ独自ノ命令ヲ、伝令ヲモッテ小隊長ニ下ス。
小隊長ハ伝令マタハ直接ニ分隊長ニ命令ヲ伝エル。シカシ、コレラハ
大概（オオムネ・大体）デアル。刻々変化スル目前ノ情況ニ対応シテ
中隊、小隊、分隊各兵ハ独自ノ判断デ適切、迅速ナ行動ヲ展開スル。
ダガ戦闘ガ膠着、激戦状態ニナリ出スト、兵ハ、指揮官ト敵状ヲ
半々見出シ、何トナク、分隊毎（ゴト）ナドニ小寄リ
（小サク固マリ）スル態勢ニ陥ル。コレガ敵ノ目標トナルコトサエ忘レ
タ状態ニナルト、
『固マルト危ナイゾ』ト怒鳴リツケル。
戦場場面ノ映画ナドデドラマ性ヲ割引キシテモ、「ナゼアノヨウニ殴
ルノカ」ト質問サレタコトガアル。私ハ、
『戦場ハ銃砲ノ音デ言葉ガ聞コエナイカラ、体ヲ引キズッタリ、
殴ッテ危険カラ救イ合ウノダ』ト答エルコトニシテイタ。
機関銃手ハ目標シカ見テイナイ。敵ガ迂回シテ丸見エノ目標ニナッ
テ危険ダカラ、足ヲ殴ッタリ引キズッテ退（サ）ガラセル。
敵情の変化に即応即決するために、言葉ガ通ジナイ銃砲声ノ中ノ
方法ノコトデアッテ、
内務班ノ殴ル蹴ルトハ大違イデアリ、戦場デ内務班内ノヨウナ無茶苦
茶ノピンタ、叩ク、殴ル、ガアッテ、殴ラレタ者ガ、怒ッタラ皆実弾
38:空中空母
16/06/11 07:45:29.48 fOgXO8zBO
内務班ノ殴ル蹴ルトハ大違イデアリ、戦場デ内務班内ノヨウナ無茶苦
茶ノピンタ、叩ク、殴ル、ガアッテ、殴ラレタ者ガ、怒ッタラ皆実弾
ヲ持ッテイルノデ、ドウナルカ分カラナイ戦場デ仲間ノ一人デモ
失ウコトハ、自分ノ危険度ニ直面シテクルノデアル。憎シミナド毛頭
モナイ。切羽詰マッタ状況下ノ動作デシカナイノデアル。
山東省ニハ、五岳中ノ東岳・泰山（一五二四メートル）ガアルガ、
海抜千メートル以下ノ低山ヤ川ハ比較的多イ。東方ノ古イ榔椰地方
（ロウヤ地方？）ヲハジメトシテ、山岳部ハ敵ノ本拠ガ多カッタ。
五菫山塊ヲメグル魯南中部粛清討伐ノ戦イハ、山岳戦デアッタル。
山岳戦ハ山砲ニヨル陣地攻撃カラ始マッタ。山砲ノ砲撃援護下ヲ
歩兵ガ前進、丘陵ヲ駈ケテイタ時ノコトデアル。敵ノ狙撃ヲ警戒シナ
ガラ両線ノ段丘ニトリツイタ途端「ヒヤッ」トシタ。
仰向ケニ屍ガコロガッテイテ、服ハ「ボロボロ」殆ド全裸デ、
体ハ赤黒ク焦ゲ、目ヤ腹ハ鳥カ獣ニヤラレタラシク抉ラレテオリ、
頭髪モナイ。手足ノ指ノアルノガ異様ダッタ。十メニナリカケテ、
「ボロボロ」ノ肉塊ハフクレテイタ。地獄絵巻ト言ウヨリ、大地ニ還元
シカケテイル化石ノヨウナ無気味サデアッタ。
何カ月カ前ノ支那人同志ノ戦ノ折ノ死体ラシカッタ。
何モ散ラバッテイナイトコロハ、兵器ヲハジメトシテ使用可能ナモノ
ハ持チ去ッタラシイ。吾々モ激戦中戦死者ノ屍体収容ガ不能ノ状況下
デハ、ソレゾレノ小指ヲ切リ取リ、兵器ヲ持チ去ルダケニ終ワルコト
ヲ知ッテイタ。小指ガ背ノ飯盒ノ中デ歩クタビニ音ヲタテル。
コノ戦友ガ戦死スレバ小指ハソノママデアル。マタ、戦死者ヤ小指
ガ収容デキテモ、ヒトマトメニ火葬、分骨シテ官氏名ヲ付スノガ
通常デアッタ。
「葬」ノ象形ハ、草ノ中ニ死デアルガ、五菫山稜デ垣間見タ敵兵ノ
屍ニ、生ノ終焉ノオゾマシイ（オソロシイ）恐怖ガ迫リ、人間同志ト
シテ手ヲ合ワセル気モ起コラナイウチニ、自ラノ身ヲ守ルコトニ
先走ッテ駆ケテイタ。山岳戦ニ限ラナイガ、砲撃シテモ反応ノナイ
モヌケノ殻、逃亡ノ後ノ場合モアル。連日連夜ノ行軍ヨリモ、・・・
39:空中空母
16/06/14 05:44:21.62 Jvp7aFdBI
山岳戦ニ限ラナイガ、砲撃シテモ反応ノナイモヌケノ殻、逃亡ノ後ノ
場合モアル。連日連夜ノ行軍ヨリモ、銃砲声に生気ガカエルモノデア
ル。従ッテ敵ニ遭遇デキナイト無性ニ腹立タシクナッテクル。
兵ガ谷底ノ川原ノ白鷺ノ群レニ、軽機関銃ヲ乱射シテイタ。
威嚇ヲ兼ネテハイタガ、高所カラ派手ニ戦イヲ挑ミタイ衝動ソレデモ
アッタト思ウ。末端ノ小戦闘ニハ戦術モ、ヘチマモナイ。兵隊ゴッコ
ト同ジデアル。警戒ヲシ、敵ヨリ早ク相手ヲ見ツケ、早ク高所ヲ
占メルダケノコトデアル。
白鷺ノ群レハ歩哨ヲ立テテ警戒シテオリ、歩哨ノ一声デ翔ビ立チ、
啼キ合イナガラ川下ノ方ヘ移ッテイッタ。戦闘ガナケレバ山紫水明ノ
桃源郷デアル。欲ノ皮ノ突ッ張ッタ人間ドモガ、業ノヨウニ闘争ニ
命ヲカケ、殺シ合ウ。白鷺ハ自衛スルダケデ、「アホー、アホー」ト
「アホー」連中カラ遠ザカッテイッタコトヲ思イ出ス。
ナオ五菫山尾根ノ傾斜ニ密培サレテイタ、ケシ（芥子、罌粟）ノ花畑
ノ美シサニ、ハットシテ、戦闘中ニ駆ケッテイル現実ヲ忘レタ
瞬（トキ）ノアッタ記憶モアル。
＜諸城北部粛正討伐 受創＞ 魯南中部粛正討伐カラ期待シタ翌日、
兵器ヤ馬匹ノ手入レヲシ、戦備ヲ整エ、翌々日ノ五月二日ニハ、
諸城県北部ニ向カッテ出発シタ。文字通リ寧日（ネイジツ・平穏無事
ナ日）ナキ南奔北走（ナンホンホクソウ・東奔西走ニ似セタ私語）
相州鎮ハ北部宣撫地区ノ中心デ、ココヲ前進基地トシタ。
部隊本部ニナッタ町役場庁舎ノヨウナ建物ハ洋風、焼キ煉瓦造リノ
ハイカラ造リデ支那風離レシテイタ。
男の職員ガ茶ノサービスヲシテイタ。今ニ覚エテイルノハ、
白陶製洋式男子用便器ノ小便ノ当タル所ニ、赤味ニ彩色サレタ女陰ヤ
陰毛彫刻マデシテアッタコトデアル。ソウイエバ、後ニ便器ヤ
浴用水槽ノ陶器ニ、コノ手ノモノヲ見カケルコトガ度々デアッタガ、
彩色サレテイタノハ、ココダケデアッタ。相州鎮カラ北進シテ、
学究→コウ（門ガマエノ中ニ共）鶏台→李戸庄（交戦）→学究→
相州鎮ト行動、五月四日ニハ帰隊シタ。第一小隊長トシテ、急遽・・
40:空中空母
16/06/17 05:55:17.00 dxix/Y32l
学究→閧鶏台（コウ・門ガマエノ中ニ共）→李戸庄（交戦）→学究→
相州鎮ト行動、五月四日ニハ帰隊シタ。第一小隊長トシテ、急遽
トラック輸送デ折リ返シ相州鎮カラ夜行軍トナッタ。学究→閧鶏台ト
進ミ、ココカラ中隊毎ニ進路ヲ変エ支那自衛隊モ協同行動、
七日夜ノ隠密行動デ安邱県東利見、西利見ノ敵ヲ捕捉包囲、八日ノ
払暁トトモニ山砲隊ノ砲撃カラ攻撃ヲ開始シタ。淮河（ワイガ）ノ
支流汶河北側ノ東利見ニ突入シタガ、モヌケノ殻、敵ハ川ノ西側
西利見ニ入ツテイタ。河ノ段丘ヲ利用シタ西利見ハ、日干シ煉瓦ノ
城壁ヲ甲羅ノヨウニメグラシテイタ。
カナリノ兵力ガ集結シテイタラシイコトト、支那自衛隊共々ノ包囲ガ
完全ナタメ、袋ノ鼠、窮鼠猫ヲ咬ム式ニ頑強ノ抗戦デ、山砲ノ砲撃
ニモナカナカ降伏ノ気配ガナカッタ。中隊ハ東側ノ小銃射程外ノ
凹地ヘ散開、歩哨ニ警戒サセナガラ、土手ヲ背ニ昼食ヲトッタ。
支那自衛隊ハ、サラニ後方ニ散開シテイタ。
昼食後ノ十三時五分頃（日本時間ヲ使用シテイタ）総攻撃ノ命令ガ
下ッタ。機関銃、迫撃砲ノ射撃デ私ノ小隊ハ東南凹地カラ接近、
迫撃砲弾ニ怯ンダノカ城壁カラノ狙撃ガ散発的ニナッタノデ、
退却ヲ始メタカト思イ、高クモナイ城壁ハ越エラレソウニ見エタノ
デ、追撃シヨウト兵隊ラト、タイシタ幅モナイ川ヲ渡リ、
叢（クサムラ）ニ伏セ各分隊ノ様子ヲ見ルベク顔ヲ上ゲタ時、小隊
ノ第一分隊長ノ軍曹ガ叢（クサムラ）ノ中デ「ガックリ」ト頭ヲ伏セ
タママ動カナカッタ。前進ノ間ヲ取ッテイルノカトモ思ッタガ、微動
モシナカッタノデ、「殺（ヤ）ラレタノカ」ト、上半身ヲ「ヤヤ」上
ゲ、大声デ呼ンダガ動カナカッタ。後デ分ッタ話デアルガ、軍曹ハ
声モ立テズ鉄兜ノ星章ワキヲブチ抜カレタ貫通即死、「ウー」モ
「スー」モナカッタワケデ、蒼ザメ果テタ顔面ニ夏ノ木洩（コモレ）
レ陽（ビ）ガ灼（ヤ）ケツキ、「ピタリ」ト時間ガ停止シテイタ。
鉄兜ノ厚サハ五ミリ、小銃弾ノ直径ハ六、五ミリダカラ直角ニ当タ
レバ貫通デアル。ソレニ弾ノ防護ガ鉄兜デアル。鉄兜ヲ厚クスレバ
防護性ハアガッテモ重ク、カツ頭ガ痛ム。経験科学的厚サラシイ。・
41:空中空母
16/06/20 06:45:27.29 3Z8S/Chi/
ソレニ弾ノ防護ガ鉄兜デアル。鉄兜ヲ厚クスレバ防護性ハアガッテモ
重ク、カツ頭ガ痛ム。経験科学的厚サラシイ。敵弾モ「バラバラ」ニ
ナッテイタノデ軍曹ノ収容ヲ怒鳴リナガラ城壁ニ接近スベク
上半身ヲ上ゲタ、コノ間抜ケタ瞬間ニ、敵ノ確カナ狙撃ヲ喰ッタワケ
ダガ、コレハ後デ気付イタコトデアル。五月八日十三時十分頃ノ敵ノ
小銃弾ニヨル穿透性（セントウセイ）左胸部貫通銃創デアッタ。
コノ受傷ヲ「ドジ」ト言イタイ奴ハ言エ、デアル。
「ドスッ。」何トモ表現シヨウノナイ背中ノ衝撃、ソレハ空気ガ
凝縮（ギョウシュク）シテ「ドスッ」ト大壁ヲ打チ抜クヨウニ押圧シ
テキタヨウナ、或イハ、大石ノコンクリート電柱ガ直ニ飛ンデキテ
薙ギ倒シ、ブチノメシテキタヨウナ感覚デアッタ。呼吸ハ勿論デキナ
カッタガマダ意識ハアッタ。
敵弾ニ当タッタトイウ経験ハ勿論ナカッタノデ、撃タレタ
トイウ実感ヲ意識スルマデニハ、一寸ノ瞬（トキ）ヲ要シタ。
前カラ当タッタトイウ思イハナカッタ。弾ハ命中確率ヲアゲル為ニ
三条ノ螺旋突起ヲ銃身内ニツケテアルノデ回転ガツイテ飛ンデイルタ
メ、前ノ心臓三センチホド上ノ入口ヨリ、左肩甲骨下ヲ抜ケタ破裂口
ハ胸骨骨折トトモニ大キクナリ、背中ニ当タッタショックノ方ガ
大キク、背中ニ当タッタトイウ感覚ガアル。
『死ニタクナイ。生キタイ。コンナ所デ死ニタクナイ。ヤレルダケノ
コトハヤッタ。マジメニヤッテキタンダカラ、コンナ所デ死ニタクナ
イ。』コンナ思イガ一瞬突ッ走リ、過去ノスベテガ、フイルムヲ巻キ
戻スヨウニ甦ッテクルヨウナ奇妙ナ衝撃ニ襲ワレ、ウッスラト残ッテ
イタ意識ノ中ニ、故国ノ、ワケテモ群馬ノ三山一水（イッスイ・
一筋ノ流レ）、上信ノ山波、古里ノ榛名山ノ相馬・天狗ノ山々、
遠浅間ノ煙、烏川ノ流レガ走馬灯ノヨウニ突ッ走リ流レ、空ニハ母ノ
畑仕事ニ髪ヲ「ボウボウ」トシタ顔ヤ、祖父母、弟妹ノ顔ガ稲妻ノ
ヨウニスバヤク閃キ大写リシテキタ。ト同時ニ、生キタイ、古里ヘ
帰リタイ、死ヌマデニモウ一度故国ノ肉親ヤ山河、空ガ見タイト痛感
シテイタガ、肺ガ破ラレテノ出血ガ気管ニ入リ呼吸不能トナリ、脳ニ
42:空中空母
16/06/23 06:17:53.19 tuX4JUl73
死ヌマデニモウ一度故国ノ肉親ヤ山河、空ガ見タイト痛感シテイタガ、
肺ガ破ラレテノ出血ガ気管ニ入リ呼吸不能トナリ、脳ニ血が廻ラナイ
ノカ意識ハ「ボヤケ」テイッタ。ソンナ中デモ
『俺ハ死ヌカモシレナイ。後何分ノ命カ、何秒ノ命カ。コンナ所デ
死ンデ野良犬ヤ鴉（カラス）ノ餌食ニ屍ヲサラシタクナイ。助カリ
タイ。生キタイ。死ヌノナラ母ニ、祖父母ニ会イタイ。』ヲヒタスラ
ニ思イ続ケテイタ。泣イテイタノカ、涙ガ出テイタノカ覚エガナイ
ガ、目ハアケテイナカッタ。叢（クサムラ）ヲ駆ケル音ヤ、ハゲマシ
ノ声ハ聞コエタ覚エガアル。
口カラ鼻カラ鮮血ガ噴キ、呼吸ガツマリ、喘ギ、悶エ、全身ヲ
ノタウチ苦シム断末魔ニ、狙撃ノ敵兵ヲコン畜生ト恨ンデイタヨウニ
思ウ。コレラスベテ閃メキ（ヒラメキ）ノ瞬（トキ・マタタキ）
ノモノデアッタ。
テレビヤ映画デ、刀デ切ラレタリ、ピストルデ撃タレタ時ニ、ヨク
大仰ニノケゾル大写シガアルガ、アレハ画面効果ダケダロウト思ウ。
一瞬ノケゾルニシテモ前屈スルノガ自然デアルコトハ、背中ノ破裂
ガ大キクトモ、前屈シテノタウチマワッタ実体験カラ、言エル
ヨウニ思ウ。
戦友ガ目前デ地雷ニヤラレタ時モノケゾルヨリハ前倒デアッタ。
トモアレ、夏ノ叢（クサムラ）ノ イキレ（熱・熱気）モ、時間モ、
スベテガ停止シテ意識ハ消エタ。左胸部貫通銃創ノアノ限界状況下ノ
体験ヲ越エル現実ナドハコノ世ニハナイノデハナイカ。アルトスレバ
死ダガ、意味ノアル死ナドトイウモノハコノ世ニ存在シナイ。
死花（シニバナ）ナンテ嘘中ノ嘘、死ヌ者貧乏、死ンデ花ガ咲ク
モノカノ通リデアルヨウニ思ウ。ソレニシテモ、ヨクゾ心臓ヲ狙ッタ
モノ。三センチホド上部ヘズレタノハ、狙撃兵ノ恣意（キマグレ）
デモ、コチラノ弾速内ノ咄嗟自動動作ナドデモナイ。全クノ、誰ノ、
何ノワケニモヨラナイ「偶然」デアリ、ソレガ我ガ運命デアリ、
生キラレタワケデアル。三センチズレノ命得タ受傷デアッタ
ワケデアル。生ト死ヲ決スル瞬間ガ、ドンナニ無造作デ、ドンナニ・
43:空中空母
16/06/26 05:47:07.50 rLYqyMr+j
三センチズレノ命得タ受傷デアッタワケデアル。生ト死ヲ決スル瞬間ガ
ドンナニ無造作デ、ドンナニサリゲナクヤッテ来ルモノカ。ソシテ
ソノヨウナ瞬間ノ長イ連続ノ時間、極限状況下ニ、人間ガイカニ無力
ノ存在デアルカヲ痛感サセラレモシタ。
生キルヨリモムシロ死ヌ方ガ楽ダ、フト思ウ状況ノ中デ、執拗ニ生キ
残ルコトヲ考エツヅケルコトガ、如何ニ苦シク困難ナコトカ。
人間ノ心トイウモノガ長イ緊張状態ヤ瀕死ノ苦痛ニイカニ脆イカモ、
「イヤ」トイウホド痛感サセラレタ。祖国ノタメニ命ヲ捧ゲヨウト覚悟
シテ出征シテキテイル。祖国日本民族のために、天皇陛下ノタメ、
親ヤ肉親、親族ノタメ、歴史文化ノタメニ命ヲ捧ゲル。コレヲ拒否
スルコトハ、自殺カ逃亡シカナク親、弟妹、親族郷党ヲ辱シメル国賊
トイウ時代相デッタ。コウシタ思想ハ軍部ニ、カキタテラレタ
モノダケデハナイ。祖国ヲ守リ、万世一系トイッタ皇紀ヲ
守ルコトハ、歴史ガ吾々青年男子ニ課シタ崇高ノ使命デアルト認識、
使命感デアッタ。シカシ死ヌカモシレナイ、生キタイトイウ瀕死ノ
断末魔ノ瞬間ニ、カッテ明治神宮外苑ノ代々木練兵場デ
ゴ親閲ノ天皇ヲ遠ク見ナガラ分列行進シタ以外ハ、写真ヲ拝スルダケ
ダッタ天皇ノコトハ浮カバナカッタ。
心ニ煌（キラメ）キ閃（ヒラメ）イタ母ノ顔ニ、声モ出ナイノニ
「母サン」ト叫ビタカッタコノ母ト、天皇トハ、全ク次元ノ違ウモノ
デアッタコトハイウマデモナイ。
最初ニ意識ガ戻ッタ数秒カ数十秒後ノ間ニ、楊柳（ヨウリュウ・
ヤナギ）ノ寝方ニ横タワリ、軍医カ衛生兵カガ体ニフレル気配トトモ
ニ野薊（ノアザミ）ノ花ノ紅紫ガカスンデ意識ハ消エテイッタ。
※ノアザミ（野薊）キク科アザミ属ノ多年草、花ハ春カラ初夏ニ咲ク。
コノ、ノアザミノ花ノ彩リモ後々ニ、又故郷ノ自然ノ景色トトモニ、
或イハ幻覚ダッタカ、 モノ思イガウカビ、ハッキリシナイ。
再ビ蘇生シタ時、支那民家ノ入口ノ板戸ノ上ニ寝カサレ、四人ニ
担ガレテイルコトガ分ッタガ、揺レノ苦シサニ喚キ、ウナッテ
イタラシイ。肺カラノ出血ニ意識ガ消エル。何時間担ガレタ・・
44:空中空母
16/06/29 05:15:22.41 xmeLREF1d
四人ニ担ガレテイルコトガ分ッタガ、揺レノ苦シサニ喚キ、ウナッテ
イタラシイ。肺カラノ出血ニ意識ガ消エル。何時間担ガレタノカ
「生キタイ、生キタイ」ト蘇生ノ意識毎ニ繰リ返シテイタ。西利見ノ
戦闘ハ私ガ受傷シテ後、間モナク敵ノ退却ガ始マリ、コノ追撃モセズ
終了。分隊長ノ軍曹ノホカ三名ホド戦死、戦傷数人デアッタコトハ後
デ聞イタ。夕暮レ近ク相州鎮ニ着イタコトガワカッタ。
※左胸部貫通銃創受傷時刻ハ日本時間午後一時十分・陸軍ハ日本時間ヲ
使ッテイタ。
ココデ軍医カラ茶碗半分位ノヌルマ茶ヲ与エラレタ。
受傷後七・八時間後ノ喉ヘノ潤イニ、イクラカ落チ着キカケテイタガ
スグニ咳キ込ミ、吐血、オヨソ助カルカモ・・ノ思イガワクヨウナ
状態ノ苦痛デハナカッタ。ココカラトラックデ衛生兵添乗、夕闇ノ中
ヲ諸城ノ大隊本部マデ輸送サレココデ衛生下士官、兵、
警乗分隊添乗ノトラックデ走リ膠済線高密站ヘ着、担架ノママ汽車ニ
乗セラレテ、衛生下士官、兵添乗、野戦病院青島（チンタオ）陸軍
病院ヘ送ラレタコトハ、咳キ込ミ、喀血、呼吸不能モ時ニ断続スル
意識ノ中ニ分カッテイタ。
「パタパタ」ト看護婦ガ出入リシ、軍医ノ検診ガアッテ個室入院ガ咳キ
込ム吐血ノ苦悶ノ中ニ了（リョウ・終了）シタノハ夜モカナリ遅カッ
タヨウニ思ウ。受傷後十数時間、将ニ生死彷徨（生死ノ間ヲサマヨ
ウ）ノ一日デアッタワケデアル。
＜青島（チンタオ）陸軍病院入院生活＞一次入院二カ月
昭和十八年（千九百四十三年）五月九日ヨリ、野戦病院青島（チン
タオ）陸軍病院入院生活ガ始マッタ。咳キ込ンデハ真ッ白ナ布団・
枕・敷布サラニハ床ノ上マデ鮮血ヲ吐キ、アゲクノ果テニ意識ヲ
失ウ。意識ガカエルト白衣ノ看護婦ガコレヲトリ替エ病衣モカエル
コトヲ続ケテイタ。
一人咳キ込ンデ血ヲ吐イテイル夜ノ、苦痛トノ闘イヲ、不寝番ノ
看護婦ガ見廻リ、励マシノ声ヲカケテクレルコトモ度々デアッタ。
「生キタイ。ナントシテモ生キタイ。」ト無宗教ノ私ハアテモナイ・・
45:空中空母
16/07/02 07:18:48.31 posbl27pA
不寝番ノ看護婦ガ見廻リ、励マシノ声ヲカケテクレルコトモ度々デアッ
タ「生キタイ。ナントシテモ生キタイ。」ト無宗教ノ私ハアテモナイ
祈リヲ続ケテイタコトヲ思イ出ス。十日目ゴロカラ吐血ノ咳キ込ミ
回数モ少ナクナリ、心身ガ落チ着キ始メテイタ。一カ月ホドノ間
私ノスベテハ文字通リ看護婦ノ献身ニ支エラレ、薄紙ヲ一枚一枚
ハガスヨウニ恢復ニムカッテイタ。一カ月余リニシテ将校病棟食堂ニ
ハジメテ出タ。白衣ニ階級章ヲ付ケタノガ先着順ニ並ンデイタ。
入院シテマデ階級順デ、上級者ガ着席スルマデ立ッテ待ッテイタ。
ソシテ上級者ガ箸ヲトッテカラ、食ベ始メタ。食後疲レ気味ダッタノ
デ席ヲ立ッタトコロ、上席デナヲ食ベテイタ中尉ガ「オイ、見習士官
皆ガ食ベ終ラナイノニ席ヲ立ツトハ失礼ダロウ」ト大声デ
タシナメテキタ。私ハ食堂ノルールト言ウヨリ、将校集会所ノルール
ヲ忘レテイタ。「ハイ、失礼イタシマシタ」ト敬礼シテ席ニツキ、
食ベ終ワッテ上官ガ退室シ終ワルマデ、疲レ気味ノ姿勢ニ
耐エテイタ。
「何ヲ上官ブッテ病院内マデ」、ト内心不快ナガラモ、「ココハ軍ノ
病院ナンダ」 ト反省シテイタ。
体力ノ回復モ順調トナリ、青島（チンタオ）市内ヘノ外出モ二度ホド
アッテ、美シイ青島（チンタオ）ノ町ノ散策ヲ楽シンダ。
昭和十八年七月一日退院トイウコトニナッタガ、負傷入院時ノ血ダラケ
ノ見習士官ノ服ヤ母カラ送ラレタ千人針等ハドウナッタノカ、服ニ
関スル記憶ハナク、退院時ノ軍服ハ原隊カラ届ケラレテイタ。
汽車、自動車ノ連絡便デ久方ブリニ帰隊、大隊本部及ビ中隊ヘ
帰隊報告、軍医ヘノ挨拶ヲシタガ、ソノ夜カラ発熱軍医ノ世話ニ
ナツテシマッタ。私ノ伝令ガ、私ノ死亡ヲ予想シタラシク、入院中
私物ノ将校行李ヲ開キ、中カラ預金通帳、印鑑ヲ持チ出シ部隊本部経
理部デ現金ヲ引キ出シテイタコトガ判明シタ。ソノ金ノ使途ヲ問イ
詰メタ所、支那娘ヲ買イ、匿（カクマ）ウ家ヲ借リテ通ッテイタラ
シイ。残金ノナイノニ腹モ立ッダ、命ガアッタノデ腹モ立ツノダ、表
沙汰ニシテモ致シ方ナイ、 イクラズツデモヨイカラ「返金シロ」・
46:空中空母
16/07/05 06:42:17.28 sR0k86Xdj
残金ノナイノニ腹モ立ッダ、命ガアッタノデ腹モ立ツノダ、表沙汰ニシ
テモ致シ方ナイ、 イクラズツデモヨイカラ「返金シロ」ト言ッテ、
中隊本部ニハ知ラセナカッタ。返金ハ一度カ、二度アッタヨウニ思ウ
ガコノ一等兵ハ三、四カ月後ニ転属シテイッテシマッタ。
帰隊後ハ、ケダルイ夏ノ熱発ツヅキデ、勤務ニハ耐エラレナイ熱発ガ
続キ、隊長以下静養スルヨウ言ッテクレタガ、快方ヨリ、苦痛ノ
悪化ダッタカラ、軍医ガ入院ノ必要ヲ説イタノデ、隊長モ了承、
再入院ヲセザルヲ得ナカッタ。帰隊後僅カニ、四十二日ノ八月十二日
申告後、連絡便ノ自動車デ高密站（駅）ヘ。列車デソシテ連絡便
自動車デ青島站（駅）ソシテ連絡便自動車ニヨリ、左胸部貫通銃創
胎後症（当時ハ後遺症トハ言ワナカッタ）デ青島陸軍病院ヘ再入院
シタ。軍医、看護婦ヲハジメ勝ッテ知ッタ再入院ニ将校病棟ノ大部屋
ダッタガ、深刻サハナカッタ。熱発モ収マツテ体力回復ノタメノ静養
ノ日々デアッタ。青島陸軍病院ハ青島市ノ北郊、田舎ニアッタガ、
日曜日邦人タチガ数十人見舞イニキテイタ。前線デ貰ッタ小学生ノ
慰問文ニ返事ヲ出シ、町名ト名前ヲ覚エテイタガ、日曜日外出日ニ
尋ネテミタラ、親切ナ町内会役員ラシイ人ガ探スコトヲ約束、ヤガテ
探シ出シテ教エテクレタノデ、ハガキヲ出シタラ、次ノ日曜日ニ
大柄ナ女ノ子ガ、姉サンラシイ娘サン付添イデ花束ヤ手製ノ菓子ヲ
持参、見舞イニ来テクレ、遊ンデ帰ッタ。顔ノ真ッ黒ニ驚イタロウガ
私ニトッテハコノ小学生姉妹ノ花束ヤ菓子ハ感激デアッタ。ソノ
小学生ノ女ノ子ハ、ソノ後隔週毎ノヨウニ見舞イニ来テハ遊ンデ
行ッテクレタ。美シイ子ダッタシ、ウチトケルヨウニナッタ。
外出ノ折リニ、ソノ子ノ小学校ヤ家ヲ一度オ礼ニ尋ネタコトモ
アッタ。小学校ノ隣ノ高等女学校ノ制服姿ノ美シサニ感激シタコト
モ覚エテイル。
昭和十八年十一月三十日現役満期。十二月一日任陸軍少尉、
予備役編入同日臨時招集、補独立歩兵第二十大隊附キト言ウ身分上ノ
命令ニヨル変化ガアッタ。昭和十八年十二月二十二日治癒退院、
軍医、看護婦、入院中ノ将校等ノ歓送ヲウケル。・・・・・
47:空中空母
16/07/08 05:41:50.40 fuu4cXQ1T
身分上ノ命令ニヨル変化ガアッタ。昭和十八年十二月二十二日治癒退院
軍医、看護婦、入院中ノ将校等ノ歓送ヲウケル。
「死ナナイデ」ト言ッテクレタ看護婦タチノ言葉ガ印象的デアッタ。
汽車ノ中デ同ジ部隊ノ公用出張帰リノ下士官ト一緒ニナッタ。
吾々ガ乗ッタノハ国際列車ト通称サレテイルモノデアッタガ、日本ノ
グリーン車輛相当の車両にハ支那役人ヤ上流人種ガ一緒ダッタ。
混ミ合ウ通路ニ立ッテイタ他部隊ノ下士官ガ、時計ヲ掏ラレタノニ
気付キ、通路ヲ離レテイク、支那人ノ中年ノ男ヲ、
人混ミヲワケテ捕ラエ、ドナリナガラ殴リツケテイタ。後ロノ下士官
モ「アイツダ」ト大声ヲアゲテ近寄ッテイッタ。シカシ、ソノ
掏ッタ男ハスデニ別人ニ渡シタラシク持ッテイナカッタ。間モナク
同乗中ノ支那人ラガ何ヤラ騒ギタテ始メタ。他部隊ノ将校ガヤガテ
「オイヤメトケ」ト言ッタノデ、渋々殴ルノヲヤメタガ時計ハ掏ラレ
ジマイデアッタ。同乗支那人ガ騒ギタテタノハ、掏ッタ人物ヘノ同情
ト殴ルコトヘノ非難トミラレタ。同行下士官ガ、掏ッタコトヨリ
彼奴（キヤツ）ノ面子（メンツ）ヲ多勢ノ前デツブシタト非難シヤガ
ルノダ、ト教エテクレタ。
面子ヲ重ンジル国民性トハ聞イテイタガ、犯罪行為ヨリモ面子ヲ他人
ノ為ニカバイ合ウノニ呆レタノデ、今ニ覚エテイル。
退院後モ左胸部貫通銃創胎後症（後遺症）ノ熱発ハ続キ、ケダルイ
半病人生活デアッタ。
私ノコノ後ノ勤務ヤ運命ハスベテコノ胎後症（後遺症）ニ起因シテ
イタ。幸カ不幸カワカラナイ。復員後モ胎後症ノ熱発ハ時々ブリカ
エシテイタガ、医療対象ニハナラナイモノデアッタ。
受傷後十五年モ経ッタ頃、背中カラ黒光リノ弾ノヨウナ物ガ落チタ。
金槌デ、貫通ダカラ弾デハナイダロウト思イナガラタタイタラ、粉々
ニナッテシマイ、血ノ塊ガ押シ出サレタモノデアッタ。
コノコトガアッテカラ、雨ヤ曇リノ天気予報ガデキルヨウニ疼イタリ
季ノ変ワリ目、暑さ、寒サ、疲労等々ニ必ズ板ヲ打チツケラレテイル
ヨウニ痺レル鈍痛ヤ熱発ハ軽クナッタ。シカシ受傷カラ五十余年ノ・
48:空中空母
16/07/11 06:05:14.49 CuDH7eNsc
季ノ変ワリ目、暑サ、寒サ、疲労等々ニ必ズ板ヲ打チツケラレテイルヨ
ウニ痺レル鈍痛ヤ熱発ハ軽クナッタ。シカシ受傷カラ五十余年ノ今モ
サムサ、暑サ、疲レニハ疼キ続ケテイル。傷跡トコノ疼キハ、私ノ
生涯ニ消エルコトモナサソウデアル。ソシテ、戦争トイウモノヲ許ス
コトハデキナイデアロウ。
＜黄河鉄橋警備 中洲の幕舎生活＞
昭和二十年（千九百四十五年）一月五日、我々ノ小隊ハ、河南省京漢線
（現京広線）黄河鉄橋対空警備ノタメ鄭州市黄河南岸覇王城ノ
野戦高射砲第七十四大隊配属ヲ命ゼラレ、開封站ヲ後ニシタ。隴海線
（リョウ［ウネ田畑ノウネ・丘］カイセン）ヲ西北進、思イ出モアル
新郷站ニテ京漢線ヘ乗リ替エ、黄河南岸站覇王城ヲ経テ、北支派遣
甲第七八三一部隊（高射砲大隊）ニテ申告、樋口隊（「タニ」
「ヒ」）トシテ鉄橋上流ワ百メートルホドノ中州ニ幕舎二ツ設営、
雪中ノ対空警備ニツイタ。射撃用ノ陣地、個人用ノ防空壕ハ
二、三日中ニ数カ所ヲ配備シ終ワッタ。
鉄橋の長さ 三，九九五メートル、高サ五〇メートル、北站（駅）、
南站（駅）ノ寒駅ガアリ、北岸ハ平原、南岸ハ比高百メートル程ノ
給料ガ東方近クニ終ワリ、鉄路ガ続イテイタ。中洲ノ長サ二キロ弱、
鉄橋ノ上流百メートル程マデ続き、幅ハ五百メートル程、南岸ヘ
丸太橋ガ架ケテアリ、細流ガ数条アッタガ、本流ハ北側、二千数百メ
ートルニ見エテイタ。高射砲大隊ノ本部ヤ主力宿舎ハ、南岸丘陵北麓
黄河ニ面シテ穴居。 小隊ノ飯上ゲハ三食共、穴ノ中ノ炊事場カラ
運ンデイタガ、川風ヤ吹雪デ危険性モアッタ。北岸ニハ迫撃砲隊、
橋上ニハ機関砲隊ガ配備、高射砲隊陣地ハ南岸丘陵上ニ配備シテイタ
支那戦線ノ兵器ガ皆ソウデアッタガ、ココノ高射砲モ射程
八千クラスノ旧式デ、十門位アッタラシイ。各地ヘ転戦シナガラ、
機会ガアッタラト密カニ憧レテイタ大黄河ノ流レ、ソノ水ハ名ノ如ク
冬デモ夕立雨ノ後ノ濁流ノヨウニ、上流ノ黄土層ノ土ヲ流シテイタ。
流水幅ハ三キロ前後、流速ハ三メートル弱大河ノ貫禄タップリニ
千古ノ水ヲ流シ、人間ドモノ儚イ（ボウ・ハカナイ）闘争ノ歴史ヲ・
49:空中空母
16/07/15 09:02:38.84 htmS5aLF7
流水幅ハ三キロ前後、流速ハ三メートル弱大河ノ貫禄タップリニ千古ノ
水ヲ流シ、人間ドモノ儚イ（ボウ・ハカナイ）闘争ノ歴史ヲ黙視シナ
ガラ、東方ノ地平線ノ果テニ消エテイタ。
鉄橋爆破ニ来襲スルノハ、上空カラ鉄橋ガ狙エルヨウナ晴レタ日ニ
限ッテイタ。基地ハ西安デアッタラシイ。黄河沿イニ東進シ、
進行方向ヲクラマシナガラ、、時ニ南岸カラエンジンヲ止メテ音モ
ナク進入シテクルコトモアッタガ、多オクハ北方ヲ迂回、鉄路沿イ
ニ音モナク進入シテキタ。
鉄橋ニ並行進入、直角進入、並行進入投弾後直角方向ヘ旋回ナドガ
アリ投弾スレバエンジンヲカケテ急上昇スルノガ普通デアッタ。
来襲ハ基地カラ数時間ラシク、大方ノ来襲時間帯ハ、十一時カラ
十五時頃ノ間デアッタ。基地ヲ飛ビ立チ黄河沿イ コースニ入ル頃
カラ、ソノ進行方向、編隊機数、機種ナドノ情報ハ逐一本部ニ
打電ガアリ、吾々ニモ有線電話デ流サレイタ。敵ノ爆撃機、戦闘機ハ
大体高度ハ五百メートルカラ千メートル前後デ、エンジンヲ止メテ音
モナク進入、二百キロ級爆弾五・六発ヲ投下、エンジンヲカケテ
急上昇南岸丘陵カ西方丘陵 スレスレニ飛ビ去ルノガ例デアッタ。
吾々ノ重機関銃ハ大方射程外ノタメ射撃スルコトハ稀デアッタガ、鉄
橋ニ近イ方ノ陣地カラハ射撃スルコトモアッタ。射程ヨリモ興奮カラ
デアッタカモシレナイ。雪ノ中州デノ警戒ノ日々、来襲ガアレバ
ブッ放シタクナル。コレハ生理デアリ、精神衛生上時ニハ トイッタ
感ジデアッタ。中洲ニモ陣地ガアルトイウトイウコトヲ知ラセル意味
ノ効果モアッタワケデ中洲上ヘ向カッテ旋回スル敵機ハナカッタ。
高射砲陣地ニハ丸太ヲ塗装シタ実物大模型ガ、実物ノ三倍クライ陣地
ヲ造ッテイタ。来襲毎ニ写真ヲ撮ラレテイルノデ、模型ニモ、兵ガ
付キ、動カシタリ発煙シタリ、陣地移動ヲヤッテイタ。
高射砲ニハイツモ弾ガ込メテアルガ、第二発目ヲ発射スルニハ二十秒
余リヲ要スル。弾速ノ秒数ヲ入レルト三十秒カカッテ目標ニ達スル
ノデ飛行機ハコノ間数キロ飛ンデシマウカラ一発勝負、『命中ナンテ
マグレデスネ』ト言ッテイタ。破裂有効半径百メートルハ・・・・
50:空中空母
16/07/18 05:40:13.33 ccn1pS6zv
弾速ノ秒数ヲ入レルト三十秒カカッテ目標ニ達スルノデ飛行機ハコノ間
数キロ飛ンデシマウカラ一発勝負、『命中ナンテマグレデスネ』ト
言ッテイタ。破裂有効半径百メートルハアルカラ、命中シナクトモ
効果ハ期待デキルモノノ、高度八千以上ニハトドカナイ。マア接近サ
セナイダケノ効果中心ト、予想ヨリ悲観的ナ話デアッタ。爆弾ガ鉄橋
ニ命中シタコトハナカッタガ、二百キロ クラスノ爆弾数発ノ爆風ハ
強烈ナノデ敵機ガ去ッタ後必ズ橋脚ヤ線路ヲ綿密ニ点検、汽車モ徐行
シテイタ。隊ノ陣地ハ土嚢ヲ厚ク築イタ掩体壕中デアッタガ、個人、
兵器、弾薬、ノ掩体壕モ大小蛸壷式ニ作リ、分散シテイタ。
爆弾ノ爆風ハ凄マジク、投下ヲ見ルト必ズ瞬時ニ、目ト耳ヲ両手デ
押サエ、掩体壕内ニ上半身ヲ伏スノデアル。
ソウシナイト、目ガトビダシ、鼓膜ガ破レテイマウノデアル。ナオ
爆風ニヨッテ「ドッ」ト砂ガ崩レ膝、時ニハ胸近クマデ埋マッテシ
マウ。マタ爆風ニヨル砂ニ顔ヲ殴ラレ、顔ガ硬直スル。後方陣地ノ
兵ガ必ズ円匙ヲ持ッテ掘リニキテクレル。
腰ヤ胸近クマデ埋ッタ場合ハ呼吸困難ヲ来タスノデ、深ク埋マッタ
方カラ先ニ掘ル。膝マデ埋マッタ者デモ自力デハ仲々出ラレナイノデ
掘ッテ貰ウコトニナル。敵機ノ爆弾投下毎ニコレヲ繰リ返スノデ
アル。機関銃ハ毎朝各陣地ヘ取リ付ケ、警報時以外ハ吹雪ヤ風、砂ヲ
除ケテ覆イヲカケテオク。夕方ハ幕舎ヘ持参スル。
無人ノ中洲ダガ昼夜ノ立哨ハ続ケテイタ。朝モヤ カ夕方、低空デ
司偵（司令部偵察機）ガ「ユックリ」ト通過スルコトガアル。正月ノ
慰問袋ガ珍シク配給ニナッタガ、中ハカビノ花盛リ。小学生ノコロ
慰問文ヤ絵ヲヨク書カセラレ、満洲ノ兵隊サンニ送ッタコトヲ思イ
出シテイタガ、山東省駐留ノ時、青島市日本人小学校カラ
慰問袋ヲ送ッテ貰イスグニ礼状ヲ出シタ。
当時、内地カラノ慰問文ヲモラッタ老 島崎少尉ガ二度目ノ慰問文ニ
写真ヲ送ッテ下サイトアリ、慰問文ノ主ハ女学生デ、少尉ダカラ若イ
ト思ッテイルニ違イナイ。「ロートル」ノ写真デハ可哀想ダカラ、ト
私ノ同期ノ少尉ノ写真ヲ返信シタト聞イタ。ソノ写真ノ彼ハソノ後・
51:空中空母
16/07/21 06:09:38.71 b9nPzCqS/
「ロートル」ノ写真デハ可哀想ダカラ、ト私ノ同期ノ少尉ノ写真ヲ返信
シタト聞イタ。ソノ写真ノ彼ハソノ後戦死シテシマッタ。
三月下旬、私ハ母カラノ金釘流ノ鉛筆書キノ便リヲ受ケ取ッタ。中
ニ、一月二十七日ニ祖母死亡ノコトガアリ、大キナショックニ沈ンデ
シマッタ。当時内地カラ我々ノ戦線ヘノ手紙ハ一カ月半位ヲ要シタコ
トガワカル。婆チャン子ダッタ私ハ、幕舎ノ外ノ雪原デ泣イタ。
祖母死去ノ日ノ日誌ヲ見ルト、ソノ日ハ曇天デ、十数人デ見カケタト
イウ牛ヲ追ッテ、中洲ノ西、上流ノ果テマデ探シ遂ニハイナイコトニ
ナッタ日デアッタ。祖母ハ明治十年丑年生マレデ、名ヲ「ウシ」トイ
ッタ。死ンデ既ニイナイ祖母、イルハズノナイ牛ヲサガシタ日ノ偶然
ヲ思イヤッテ、語呂合ワセトハ思イナガラモ、地上カラ消エテユク
祖母ヲ追ッテイタコトノヨウニ、ソノ不思議ヲ思イ続ケタ日ノ記憶
ガアル。 ＜一度ダケノ敵機撃墜＞
雪ノ中ノ幕舎二穴居、無聊（ムリョウ・退屈ナコト）ノ生活ヲ繰リ
返シテイタ。或ル日、命令次第、敵機影ヲミナクトモ、高度五百カラ
千メートルヲ目標ニ弾幕ヲ作ル旨ノ指示ガアッタ。忘レモシナイ
昭和二十年三月十日、日本時間十三時ゴロ北方カラ ノースアメリカン
ビー二十五 二機、鉄路上南下ノ情報ガ入リ、爆音ガ微カニ風間ニ
聞コエルヨウダッタ。⇒⇒
※ノースアメリカン ビー二十五爆撃機 動力 ライト製 アール
－ 二六〇〇サイクロン（一七〇〇馬力）×二 乗員六（内訳操縦二
航法・爆撃手一、回転銃座・機関士一、無線・側面銃座一、尾部銃座
一、）全幅二十、六メートル、全長十六、一メートル、
自重九、五八トン、最大全備重量十九トン、最大速度
時速四百四十二キロメートル、航続距離四、三〇〇キロメートル
上昇限度七、六〇〇メートル、武装 十ニ、七ミリ機銃×十二
機首ニ対艦攻撃用七十五ミリ砲一 爆弾 一、四四トン
（一千四百四十キログラム）
①昭和十七年（一九四ニ年）四月十八日どーリットル空襲 航空母艦
ホーネットカラ飛ビ立ッタ十六機ノビー二十五ガ日本本土ヲ初空襲シタ
52:空中空母
16/07/23 06:04:23.65 HoQVjkkM7
①昭和十七年（一九四ニ年）四月十八日ドーリットル空襲
航空母艦ホーネットカラ飛ビ立ッタ十六機ノビー二十五ガ日本本土
ヲ初空襲シタ飛行機トシテ知ラレテイル。
②昭和二十年七月二十八日 ニューヨーク エンパイアステートビルニ
衝突シタ飛行機デアル。
⇒⇒命令指示通リ北站カラ射撃ガハジマッタ。陣地ヘノ旗ヲ振ッテ
射程距離ニカマワズ射撃ヲ命ジタ。又、兵ニハ各壕ニ速ヤカニ入ルコ
トヲ命ジ、自ラモ壕ニ入ッテ鉄橋ノ空ヲ見テイタ。射撃開始後一分足
ラズニ爆音ヲ消シタ二機ガ北方カラ、低空進入シテキタ。鉄橋上へ
進入スルト見ルマニ弾幕ニ入リ片翼カラ火ヲ噴キ、鉄橋上北站ヨリ
三分ノ一位ノ所カラユータウン、北岸ノ川岸ニ火達磨トナッテ落チタ
他のノ一機ハ高度ガ高ク、エンジンヲカケ、橋ノ中程カラ東方川下ノ
方ヘ旋回、消エテイッタ。
射撃は止み、「万歳」ガ各所カラ一斉ニ起コッタ。「万歳」トハ
コンナ時ノ言葉ト痛感シタ。背飛ビ上ガリ、小躍リシ、雪の中ニ獣ノ
ヨウナ喊声ヲ上ゲテイタ。敵機ハ、弾ノ爆スル音、ガソリンノ爆発音
等ヲ轟カシナガラ、午後ノヒヲアビテ燃エツヅケテイタ。
対空部隊ノ喜ビハ雪原ニ踊リ続ケテイタ。四時頃火ハ消エ調査ガ始マ
ッテイタ。分隊長ト兵四名ヲ見学ニ派遣シタ。三月十日ハ
旧陸軍記念日デモアッタ。夕食ハ、トッテオキノ赤飯ト酒ガアガリ、
兎料理モハジマッテハジマッテイタ。分隊長ノ報告ヲ全員デ聞キ乾杯
宵ヲ徹シテ祝ッタ。分隊長ノ話ノ中デ覚エテイルコトハ、七十五ミリ
砲ガ（ノースアメリカン ビー二十五双発爆撃機ハ対艦攻撃用ニ
七十五ミリ砲ヲ機首ニ搭載シテイタ）焼ケテイタコト。機関砲五、
搭乗員五人ラシイコト、完全ニ燃エテシマッタガ川岸ニ、スリッパノ
片方、少シ離レテ、トランク一、トランクノ中ニ女ノ写真、
女ノ下着（シュミーズナドトイウ言ウ言葉ハナカッタ）、猿又
（パンティ）等ノアッタコト、釣竿ラシイモノ一、ナドデアル。
『アメ公スリッパデ爆撃デスネ。』ト言ッタノハ分隊長デアッタ。
『女ノ下着ヲ飛行機マデ持参トハ、アメサンラシイ、オ守リノワケ・・