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弾速ノ秒数ヲ入レルト三十秒カカッテ目標ニ達スルノデ飛行機ハコノ間
数キロ飛ンデシマウカラ一発勝負、『命中ナンテマグレデスネ』ト
言ッテイタ。破裂有効半径百メートルハアルカラ、命中シナクトモ
効果ハ期待デキルモノノ、高度八千以上ニハトドカナイ。マア接近サ
セナイダケノ効果中心ト、予想ヨリ悲観的ナ話デアッタ。爆弾ガ鉄橋
ニ命中シタコトハナカッタガ、二百キロ クラスノ爆弾数発ノ爆風ハ
強烈ナノデ敵機ガ去ッタ後必ズ橋脚ヤ線路ヲ綿密ニ点検、汽車モ徐行
シテイタ。隊ノ陣地ハ土嚢ヲ厚ク築イタ掩体壕中デアッタガ、個人、
兵器、弾薬、ノ掩体壕モ大小蛸壷式ニ作リ、分散シテイタ。
爆弾ノ爆風ハ凄マジク、投下ヲ見ルト必ズ瞬時ニ、目ト耳ヲ両手デ
押サエ、掩体壕内ニ上半身ヲ伏スノデアル。
ソウシナイト、目ガトビダシ、鼓膜ガ破レテイマウノデアル。ナオ
爆風ニヨッテ「ドッ」ト砂ガ崩レ膝、時ニハ胸近クマデ埋マッテシ
マウ。マタ爆風ニヨル砂ニ顔ヲ殴ラレ、顔ガ硬直スル。後方陣地ノ
兵ガ必ズ円匙ヲ持ッテ掘リニキテクレル。
腰ヤ胸近クマデ埋ッタ場合ハ呼吸困難ヲ来タスノデ、深ク埋マッタ
方カラ先ニ掘ル。膝マデ埋マッタ者デモ自力デハ仲々出ラレナイノデ
掘ッテ貰ウコトニナル。敵機ノ爆弾投下毎ニコレヲ繰リ返スノデ
アル。機関銃ハ毎朝各陣地ヘ取リ付ケ、警報時以外ハ吹雪ヤ風、砂ヲ
除ケテ覆イヲカケテオク。夕方ハ幕舎ヘ持参スル。
無人ノ中洲ダガ昼夜ノ立哨ハ続ケテイタ。朝モヤ カ夕方、低空デ
司偵（司令部偵察機）ガ「ユックリ」ト通過スルコトガアル。正月ノ
慰問袋ガ珍シク配給ニナッタガ、中ハカビノ花盛リ。小学生ノコロ
慰問文ヤ絵ヲヨク書カセラレ、満洲ノ兵隊サンニ送ッタコトヲ思イ
出シテイタガ、山東省駐留ノ時、青島市日本人小学校カラ
慰問袋ヲ送ッテ貰イスグニ礼状ヲ出シタ。
当時、内地カラノ慰問文ヲモラッタ老 島崎少尉ガ二度目ノ慰問文ニ
写真ヲ送ッテ下サイトアリ、慰問文ノ主ハ女学生デ、少尉ダカラ若イ
ト思ッテイルニ違イナイ。「ロートル」ノ写真デハ可哀想ダカラ、ト
私ノ同期ノ少尉ノ写真ヲ返信シタト聞イタ。ソノ写真ノ彼ハソノ後・
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「ロートル」ノ写真デハ可哀想ダカラ、ト私ノ同期ノ少尉ノ写真ヲ返信
シタト聞イタ。ソノ写真ノ彼ハソノ後戦死シテシマッタ。
三月下旬、私ハ母カラノ金釘流ノ鉛筆書キノ便リヲ受ケ取ッタ。中
ニ、一月二十七日ニ祖母死亡ノコトガアリ、大キナショックニ沈ンデ
シマッタ。当時内地カラ我々ノ戦線ヘノ手紙ハ一カ月半位ヲ要シタコ
トガワカル。婆チャン子ダッタ私ハ、幕舎ノ外ノ雪原デ泣イタ。
祖母死去ノ日ノ日誌ヲ見ルト、ソノ日ハ曇天デ、十数人デ見カケタト
イウ牛ヲ追ッテ、中洲ノ西、上流ノ果テマデ探シ遂ニハイナイコトニ
ナッタ日デアッタ。祖母ハ明治十年丑年生マレデ、名ヲ「ウシ」トイ
ッタ。死ンデ既ニイナイ祖母、イルハズノナイ牛ヲサガシタ日ノ偶然
ヲ思イヤッテ、語呂合ワセトハ思イナガラモ、地上カラ消エテユク
祖母ヲ追ッテイタコトノヨウニ、ソノ不思議ヲ思イ続ケタ日ノ記憶
ガアル。 ＜一度ダケノ敵機撃墜＞
雪ノ中ノ幕舎二穴居、無聊（ムリョウ・退屈ナコト）ノ生活ヲ繰リ
返シテイタ。或ル日、命令次第、敵機影ヲミナクトモ、高度五百カラ
千メートルヲ目標ニ弾幕ヲ作ル旨ノ指示ガアッタ。忘レモシナイ
昭和二十年三月十日、日本時間十三時ゴロ北方カラ ノースアメリカン
ビー二十五 二機、鉄路上南下ノ情報ガ入リ、爆音ガ微カニ風間ニ
聞コエルヨウダッタ。⇒⇒
※ノースアメリカン ビー二十五爆撃機 動力 ライト製 アール
－ 二六〇〇サイクロン（一七〇〇馬力）×二 乗員六（内訳操縦二
航法・爆撃手一、回転銃座・機関士一、無線・側面銃座一、尾部銃座
一、）全幅二十、六メートル、全長十六、一メートル、
自重九、五八トン、最大全備重量十九トン、最大速度
時速四百四十二キロメートル、航続距離四、三〇〇キロメートル
上昇限度七、六〇〇メートル、武装 十ニ、七ミリ機銃×十二
機首ニ対艦攻撃用七十五ミリ砲一 爆弾 一、四四トン
（一千四百四十キログラム）
①昭和十七年（一九四ニ年）四月十八日どーリットル空襲 航空母艦
ホーネットカラ飛ビ立ッタ十六機ノビー二十五ガ日本本土ヲ初空襲シタ
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①昭和十七年（一九四ニ年）四月十八日ドーリットル空襲
航空母艦ホーネットカラ飛ビ立ッタ十六機ノビー二十五ガ日本本土
ヲ初空襲シタ飛行機トシテ知ラレテイル。
②昭和二十年七月二十八日 ニューヨーク エンパイアステートビルニ
衝突シタ飛行機デアル。
⇒⇒命令指示通リ北站カラ射撃ガハジマッタ。陣地ヘノ旗ヲ振ッテ
射程距離ニカマワズ射撃ヲ命ジタ。又、兵ニハ各壕ニ速ヤカニ入ルコ
トヲ命ジ、自ラモ壕ニ入ッテ鉄橋ノ空ヲ見テイタ。射撃開始後一分足
ラズニ爆音ヲ消シタ二機ガ北方カラ、低空進入シテキタ。鉄橋上へ
進入スルト見ルマニ弾幕ニ入リ片翼カラ火ヲ噴キ、鉄橋上北站ヨリ
三分ノ一位ノ所カラユータウン、北岸ノ川岸ニ火達磨トナッテ落チタ
他のノ一機ハ高度ガ高ク、エンジンヲカケ、橋ノ中程カラ東方川下ノ
方ヘ旋回、消エテイッタ。
射撃は止み、「万歳」ガ各所カラ一斉ニ起コッタ。「万歳」トハ
コンナ時ノ言葉ト痛感シタ。背飛ビ上ガリ、小躍リシ、雪の中ニ獣ノ
ヨウナ喊声ヲ上ゲテイタ。敵機ハ、弾ノ爆スル音、ガソリンノ爆発音
等ヲ轟カシナガラ、午後ノヒヲアビテ燃エツヅケテイタ。
対空部隊ノ喜ビハ雪原ニ踊リ続ケテイタ。四時頃火ハ消エ調査ガ始マ
ッテイタ。分隊長ト兵四名ヲ見学ニ派遣シタ。三月十日ハ
旧陸軍記念日デモアッタ。夕食ハ、トッテオキノ赤飯ト酒ガアガリ、
兎料理モハジマッテハジマッテイタ。分隊長ノ報告ヲ全員デ聞キ乾杯
宵ヲ徹シテ祝ッタ。分隊長ノ話ノ中デ覚エテイルコトハ、七十五ミリ
砲ガ（ノースアメリカン ビー二十五双発爆撃機ハ対艦攻撃用ニ
七十五ミリ砲ヲ機首ニ搭載シテイタ）焼ケテイタコト。機関砲五、
搭乗員五人ラシイコト、完全ニ燃エテシマッタガ川岸ニ、スリッパノ
片方、少シ離レテ、トランク一、トランクノ中ニ女ノ写真、
女ノ下着（シュミーズナドトイウ言ウ言葉ハナカッタ）、猿又
（パンティ）等ノアッタコト、釣竿ラシイモノ一、ナドデアル。
『アメ公スリッパデ爆撃デスネ。』ト言ッタノハ分隊長デアッタ。
『女ノ下着ヲ飛行機マデ持参トハ、アメサンラシイ、オ守リノワケ・・