08/06/01 16:06:21 WvaSYuyj.net
>>116
原節子もまた多くの戦争協力の宣伝映画に出演し、敗戦後は民主主義の啓蒙映画に
出た点で他の多くの映画人とさほど変わりせぬであらう。四方田によれば、原節子にしても、
このような価値観の大転換にさいして、自分が如何なる考へを持っているかを表明したことは
一度もなかつたといふ。それとは対照的に、山口淑子は、戦後の映画人の中では例外的に
戦時中の軍部への協力を自己批判し、日本軍部が危害をくわえた中国や韓国の民衆に謝罪し、
軍に事実上強制的に徴用された慰安婦達への補償問題に取り組まうとした。さういふところは
自己の価値観の変化に対してはっきりとした態度をとっていたことを評価したいといふのが
四方田の意見であった。これは原節子を特に非難してゐるのではなく、その点に関する限り彼女もまた
戦後の他の多くの映画人どもと同じだったといふことだらう。
ところで、「熱砂の誓ひ」を近々フィルムセンターでやるらしいが、あのなかで
李香蘭の演ずるヒロインが、長谷川の演ずる技術者にかわって、見事な中国語で、
民衆の前で一大政治演説をぶつシーンがある。国民党の側からすれば「支那の夜」
の例のシーンが問題であつたらうが、共産党政権からすれば、反共匪賊を民衆に訴えた
こちらのシーンのほうが脅威であつたであらう。政治家になった山口淑子が戦後、
はじめて北京を訪れたとき、中国共産党の関係者から深夜詰問されたのも、有る意味では
当然であったのである。小生は李香蘭を戦争の被害者であるなどと言ったことはない。これは
浅利慶太のインチキ・ミュージカルが生み出した幻想にほかならぬのである。