22/09/30 23:54:40.32 PK58Ldj4r
初めに見てほしいのは次の分布図
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この分布図では、日本とアメリカの名目GDPの成長率とG+I(政府支出と国内投資の和)の成長率をプロットしている(1955年以降の一般公開されているGDPデータ)
ある年の成長率=(ある年の変数ー前年の変数)/前年の変数
この図の20%以下の範囲で、それぞれの成長率は正比例している。一定の分散あり
この分布図は、名目GDPの成長のためには政府支出と国内投資の増加が必要である事を示している。正比例であるため、少なくともこれらのデータ範囲については、他の変数が顕著に介入する余地は無い
この関係は、単なる相関関係ではなく、因果関係である
例えば蛇口をひねれば、パイプの何処かで測定される水量が増加する。そういう因果関係であり、これは貨幣循環そのものである
最初にグラフを見せた理由は、それが科学者に最も受けると考えたからである。次に、別人による政府支出の成長率と名目GDPの成長率の分布図を紹介し、正比例関係についての仮説を説明する。最後に、理系の板で経済学についてのスレッドをたてた動機を紹介する 1/10
2:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 00:04:53.74 8Dz+K1WV/
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この図は、関西学院大学の朴勝俊教授による政府支出の成長率と名目GDPの成長率の分布図である。図中の31カ国について、20年平均のデータを使用している
見てわかるとおり、先程の図と同様、政府支出Gの成長率と名目GDPの成長率は正比例関係を見せる
元画像のツイートはこちら
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3:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 00:12:56.60 8Dz+K1WV/
政府支出と国内投資が同じように成長すると考えれば、この分布図と>>1の分布図は、異なるデータ範囲での同じ観測事実を意味している。繰り返しだが、政府支出(と国内投資)を増やせば名目GDPはそれに応じた量だけ増加する、である
例えば日本のGDPデータからは、銀行と企業による国内投資Iは政府支出Gとほぼ同量に推移している事が分かる
まともな経済活動の国ならば、国内投資と政府支出の成長が全く連動しないというのは考えにくい
政府が財政支出を増やして経済を回そうという時に、銀行が融資を大幅に減少させる事は考えにくいからである。逆の状況も同様である
この名目GDPと政府支出と国内投資の成長率の関係は全く定量的な現象であるが、「貨幣と経済」が人類が維持に努めている保存系だと考えれば驚くには当たらない 3/10
4:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 00:21:24.92 8Dz+K1WV/
次に名目GDPの成長率とG+Iの成長率の因果関係を説明する
この説明のためには三点の要素(あるいは観測的事実)を統合する。それは、循環フロー図、名目GDPの定義(計算式、Y=C+G+I=C+T+S)、数量方程式(Y=MV=PQ)、である
ブログ記事はこちら、URLリンク(jyouhou-tty.blogspot.com)
これらの要素について、ここでは詳しい説明をしない。以下の仮説の展開の理解には、単語検索から得られる断片的な知識で十分であろう 4/10
5:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 00:34:56.61 8Dz+K1WV/
第一に、循環フロー図と名目GDPの定義(Y=C+G+I=C+T+S)を統合すると、次の図が得られる
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循環フロー図は、家計と企業、財・サービス市場と生産要素市場(労働市場)によって記述される。一方で、名目GDPの定義である Y=C+G+I は財・サービス市場に流れ込む貨幣の総量であり、Y=C+T+S は家計から流れ出る貨幣の総量である
循環フロー図に政府と金融市場を加えると、この図の断面で名目GDPを構成する貨幣流量が測定されていると認識できる
名目GDPの定義式において、Yは名目GDPである
Cは我々の消費行動の結果、家計から企業に向かう貨幣流である(家計最終消費支出)
Gは政府支出であり、政府から財・サービス市場を経由して企業に向かう貨幣流である
Iは国内投資であり、金融市場から財・サービス市場を経由して企業に向かう
Tは税金であり、家計から政府に向かう
Sは貯蓄であり、家計から金融市場に向かう
経済学における「貯蓄」とは、銀行預金のみを意味するのではなく、金融商品からタンス預金までを含む。私の理解では、この貯蓄は、税金Tと消費支出C以外の全てである 5/10
6:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 00:39:57.27 8Dz+K1WV/
第二に、統合された循環フロー図中で貨幣循環を想定し、Y=MV と Y=C+G+I=C+T+S を統合する
企業と家計は通貨発行能力を持たない。政府と銀行(金融市場の一部)のみが、企業と家計による貨幣循環に貨幣を注入できる。貨幣注入はG+Iとしてなされ、T+Sとして貨幣循環から取り出される
円形の循環水路に、水が流れ込む水路と流れ出る水路をつければ、それを貨幣循環のイメージとして良い
数量方程式(フィッシャーの交換方程式、Y=MV=PQ)とは、ある期間(例えば一年)の間に、貨幣循環を通して財・サービス市場を通過した貨幣の総量MVが、販売された財・サービスの総量PQに等しい事を意味している
ここで、Mが循環する貨幣量、Vが貨幣の循環速度、Pが財・サービスの平均物価、Qが財・サービスの総量である
例えば、M=1の貨幣がG+Iとして注入され、財・サービス市場を3回通過した後にT+Sとして家計から政府・金融市場に出ていく時、Y=3=PQである
この貨幣循環と数量方程式の関係を考えれば、直感的に以下の関係式が得られる
M=G+I
例えば期間を1年間と考えると、12ヶ月目に注入された貨幣はたいして循環しておらず、その年の財・サービス市場にあまり寄与していないが、それらの貨幣は次の年の貨幣循環を担う事になる
M=G+Iは大雑把かもしれないが、最初の仮説は10~100~1000の精神で
そしてM=G+Iから、V=Y/(G+I)が得られる
従って、名目GDPの内訳を見れば、貨幣が平均的に何回転したのかが分かる 6/10
7:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 00:47:12.94 8Dz+K1WV/
<余談>
現代マクロ経済学でも、貨幣の循環速度Vは研究対象である
現在の一般的な考えでは、Mには全貨幣量が代入される。全貨幣量とは、政府が発行し市中に流通する全貨幣(いわゆる現金)と、銀行預金、金融商品などの全量の合計である。定義によってM2、M3という区別がある
誰もが思うように、これらの貨幣の全てが財・サービス市場での商品売買に関与する訳では無い。そのため、Y=MVの関係式から得れるVの精度は良くない
このM2やM3を代入すると、例えば日本やアメリカではVは1前後の値となる。例えば以下のサイト
URLリンク(fred.stlouisfed.org)
最近の50年間、財・サービス市場に関与していない貨幣量をどう見積もるかが、経済学者たちの課題の一つである 7/10
8:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 01:02:34.76 8Dz+K1WV/
>>1で紹介した名目GDPの成長率とG+Iの成長率の正比例関係は、このM=G+Iによって説明できる
Y=MVの式に微小項dY, dM, dVを与え、二次の項を落とすと以下の式が得られる
dY/Y = dM/M + dV/V
日本もアメリカも、V=Y/(G+I)の値は、約70年間大きく変わっていない(1960年代以前の日本を除いて)。Vの成長率の範囲はおよそ±2%程度で、増減を繰り返してきた。一方で、70年の間にM=G+Iの値は桁で変化してきた
そのため、dY/Y~dM/M が成立している
貨幣循環に流れ込む貨幣量が増えれば、貨幣循環で計測される名目GDPは増大する。逆に、流れ込む貨幣量が増えなければ、日本全国の企業自治体大学で組織改革や人員削減をいくら進めても、名目GDPは増大しない
日本とアメリカの成長率の時系列変化については、こちらのブログ記事で。URLリンク(jyouhou-tty.blogspot.com)
>>1の分布図において、20%以上の成長率の範囲で dY/Y = dM/M が崩れているのは、V=Y/(G+I)の値が大きく変化したからである。これは日本の1960年代の高度成長期においてであり、貨幣の循環速度、言い換えると人々のお金の稼ぎ方と使い方が大きく変化した
Vについてはもっと書く必要があるが、主題を外れるのでここまで 8/10
9:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 01:09:25.24 8Dz+K1WV/
私が考える、科学者が経済を研究するべき動機を示そう
日本の大学と日本自体が経済的苦境にある根本原因は、財務省の方針である。それはおおまかに以下のような三段論法によって成り立つ(妄想含む)
1. 債務発行は日本(日本国民)の借金であり、債務が積み重なればいずれ日本は財政破綻してしまう!
2. そのためには債務発行による政府支出を抑制し、加えて税金(政府収入)を多く徴収しなければならない(消費税だ!)
3. 政府の支出を抑えても、経済成長はしなければならない。骨太の改革が必要である。経済学者の協力のもと、政治主導によって、お金を使わずにお金を稼げる改革が必要である!組織改革だ!人員削減だ!
4. 組織改革の一環として、大学の多くの研究成果はお金にならないので、大学の運営費交付金は削減します
日本の大学、公的研究機関、企業に在籍する科学者技術者の皆さんは優秀であるが、この財務省方針を論理的に否定できる人はいないだろう。否定の量的根拠を持たないだろう
そしてこの財務省方針について、経済学者全体が決定的に否定も肯定もできない(していない)事を考えて欲しい 9/10
10:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 01:22:36.61 8Dz+K1WV/
私の意見として、財務省の方針が許容されている背景は経済学である。経済学が科学ではないために、適切な科学的選択肢を提示できないからである
私が調べた限り、経済学とは次のようなモノである。経済学は「仮説と検証」サイクルに基づいた科学ではない。経済学の目的は、自分たちの「経済思想」の流布である
そしてキリスト教の天動説のように、自分たちの思想のもとで経済現象を説明する事、状況を改善できると主張する事である。経済学には思想に基づいた学派が存在する。他学派の論文は(積極的には)引用されない
このように、経済学と科学の違いは根本的である。理学部工学部の人々には、この説明は信じがたいかもしれない。しかし、もし経済学が科学に劣らない素晴らしい知識体系なら、30年来の日本経済の不振の原因は何なのか?
科学者なら「ここまでの過程はよく理解されている(ある説明について多くの研究者が同意している)。この先はまだ明確に理解されていない」と言うだろう
しかし一方の人たちは自信に溢れた態度で、「私は全ての過程を理解している。他の人達の理解は誤りを含む。これはこうすれば改善できる。駄目だった?それは状況が想定と異なったからだ。次は改善できる」と言い張り続ける
私は、経済学から思想を排除して、経済学を科学にしたい。究極のところ、我々は各人の思想に頼って選択するが、選択肢は可能な限り科学的である事が好ましい。国についての選択なら、なおさら科学的選択肢でなければならない
どうか、博士号持ちの科学者はマクロ経済学の教科書を読んで欲しい。「マンキュー経済学」ならどの大学の図書館にもあるだろう。どうか経済学自体について調べて欲しい 10/10
11:tty ◆0Qj0Co1mqs
22/10/01 01:36:40.47 8Dz+K1WV/
長文連投すいませんでした
読者対象は30代以上の理系出身者です。学部生院生20代諸氏には、なぜこんな文章を書いているのか理解できないかもしれません
胡散臭い話に思えるでしょうが、日本とアメリカのGDPデータは公開されておりみなさん解析可能です