セントラル警備保障(CSP) Part23at RECRUIT
セントラル警備保障(CSP) Part23 - 暇つぶし2ch395:就職戦線異状名無しさん
16/05/02 22:14:04.40 CxcBhAw6.net
はじめは、たしかに侘しかった、しかしやがて老人はぽつりぽつり
と話しだした。
ひと口に云えば身の上ばなしだが、飾らない言葉と巧みな省略ぶりで、
くどいというところが無く、そのうえまったく違った世間のことでは
あり、又三郎は惹きいれられるような気持で聞いた。
・・・老人の一生はごく平凡な、どこにでもある汗と貧苦と
涙と失意で綴られたものだった、息子夫婦に先立たれて、孫娘と二人
で稼いでいる事実だけでも察しはつく、それにもかかわらず、又三郎
はそこにしみじみとした深い味わいを感じた。
善良で勤勉で謙遜で、いつも足ることを知って、与えられるものだけ
を取り、腰を低くして世を渡る人たち、貧しければ貧しいほど実直で
義理、人情を唯一つの宝にもたのみにもしている人たち、・・・又三郎
にはそれが羨ましいほど充実したものにみえ、本当に活きた人生のよう
に思えた。
「おれも爺さんのように生きてみたいと思う」彼は溜息をつきながら
そう云った、「・・・世の中はどっちへまわっても苦労なものだ、それ
ならせめて自分の生きたいように生きてみたい、安楽や贅沢だけが最上
のものじゃないからな」
「若さまのような御身分でも、ときにはそんなふうに、他人の暮しがよく
みえるものでございますかね」
「爺さんにはわかるまいが、おれの暮しなんぞは・・・」云いかけたが
そこで又三郎は口を噤んだ、この老人の前で、自分が生活のことを口に
するのは、お笑い草だと思ったから。
               作・山本○五郎 [△分]より抜粋


次ページ
続きを表示
1を表示
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch