セントラル警備保障(CSP) Part20at RECRUIT
セントラル警備保障(CSP) Part20
- 暇つぶし2ch411:ス。 「…この風車というものは竹の親串と、軸と、留める豆粒と 紙車で出来ている。けれども、こうして風に当てて廻るのは 紙の車だけさ、人もこの廻るところしか見やしない、親串を 褒める者もなし、軸がいいとか、豆の粒がよく揃ったとか云う 者もない、つまり紙の車ひとつを廻すために、人の眼にもつか ない物が三つもある。しかもこの三つの内どの一つが欠けても 風車には成らない、また串が紙車になりたがり、豆粒が軸に なりたがりでは、てんでんばらばらで風車ひとつ満足に廻ら なくなる。…世の中も同じようなものだ、身分の上下があり 職業にも善し悪しがある、けれどもなに一つ無くてよいものは ないのさ、お奉行さまがいれば牢番も要る、米屋も桶屋も棒手 振りも紙屑拾いも、みんなそれぞれに必要な職だ。 私のように一文飴屋も、こうして暮らしてゆけるところを見ると これでやっぱりなにかの役には立っているのだろう、みんなが 一文飴屋になっても困るが、みんなお奉行さまになってもまた 困る、…桶屋も百姓も日雇い人夫も、自分の職を精一杯やって 幾らかでも世の中のお役に立っているとすれば、その上の不平 や愚痴は贅沢というものだ、私はそう思っているがね…」 藤六はそこまで聞いて座を立った。かれの脳裏で一つの風車が くるくると廻りつづけていた。…老人の言葉はごくありふれた 世間観である。かくべつ名言でもなく高邁な理屈でもない、それ にもかかわらず藤六の頭の中では、くるくると一つの風車が いつまでも廻っていて離れなかった。 作・山本○五郎 [足○奉公]より抜粋
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