25/01/28 17:41:41.41 R9yX44Y09.net
選挙における交流サイト(SNS)の存在感が増している。SNSで支持を広げた候補者や政党が躍進する一方、SNS上では真偽不明の情報が氾濫し、誹謗中傷も後を絶たない。有権者はSNSとどう接するべきなのか。専門家に聞いた。
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最近の選挙報道などが「新聞、テレビ対SNS」の枠組みで語られることに違和感がある。リテラシーという言葉で「情報の真偽を見極めよう」という呼びかけがあるが、それは探そうとする情報の中に真贋があって成立する話。SNSには「真」がほぼないので、既存メディアと対比はできない。
背景にあるのはX(旧ツイッター)の経営方針の変更により、興味や関心を引くことが金につながる「アテンション・エコノミー」の色が強まっているからだ。昨年の兵庫県知事選では、注目されるのを狙ったような真偽不明の言説が出回った。偽・誤情報対策は後退しており、大量の言説がXではそのまま残る。言ったもの勝ちの世界となっている。
もちろん事実を投稿している人もいるが、見つけるのが非常に困難になっている。「SNSは玉石混交」といわれるが、玉を探すのはものすごく難しい。危惧するのは、この変化に使う側が気付いていない点だ。
それに一役買ってしまっているのが他ならぬ既存メディアだ。リテラシーを掲げ「見極めろ」と言うから受け取る側は「探せば本当のことや価値のある情報がある」と考えてしまう。そうして探せば探すほど真偽不明な情報に行きあたってしまう。Xは事実より投稿者の過敏な主張や極端な意見が目立つ仕組みになっている。有権者が投票行動の参考にできるような価値ある情報はないという前提で接した方がよい。
ただ、既存メディアを信じない人たちはSNSに情報を求めるし、信じてしまう仕組みがある。兵庫県知事問題を巡って誹謗中傷を受け、亡くなった元県議が「逮捕される予定だった」などとした政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏の発信は、県警本部長が強く否定したが、一度SNSに拡散した情報の訂正は容易ではない。自分と似た考えが流れてくるエコーチェンバーに陥ってしまえば、「本部長も黒幕だ」などという陰謀論に囲まれてしまう。
新聞やテレビにも問題がある。選挙戦に入ると、公平性の確保などを理由に報道の量が急減する。報道が有権者に資するものだったのか、評価する土俵にすら立てていない。知りたい情報がなければ有権者はSNSに頼るしかない。
実はアテンション・エコノミーは新聞、テレビの本質でもある。分かりやすく、受けるものを好む。情報発信の本質では新聞やテレビとSNSは変わらない。違うのは事実確認の仕組みがあるかどうかだ。記者が取材し幾重のチェックを経てから報じる情報と、個人の思い付きがそのまま発信されるSNSは質的に比べようがない。
兵庫県知事選における混乱と不信は、SNSのプラットフォームとしての脆弱性を浮き彫りにしたと言える。(聞き手 倉持亮)
藤代裕之教授
産経新聞2025/1/27 11:48
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