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英ロンドンの大英博物館が所蔵する古代ギリシャ彫刻群の「返還」について、英国とギリシャの間で合意が近いとの見方が浮上している。英メディアが伝えた。
この彫刻群は、アテネのパルテノン神殿にあった大理石の「エルギン・マーブルズ」。紀元前5世紀に作られ、19世紀に英国の外交官エルギンがその一部を持ち出した。現在は大英博物館で展示されている。
ギリシャのミツォタキス首相は返還を求めてきたが、英メディアは12月に入り、ギリシャ外務省と博物館の間で「合意に向けた協議が進展」(ガーディアン紙)、「返還が近い」(BBC放送)などと伝えた。
報道によると、英国がエルギン・マーブルズを返還する代わりに、ギリシャは別の美術品を英国に提供する案が出ているという。ただ、英国の法律では大英博物館の所蔵品の譲渡は禁止されているため、返還は「特別貸与」の形を取る可能性がある。
背景には、英国の政権交代もあるとみられる。保守党のスナク前首相は、強硬に返還を求めるミツォタキス氏に反感を持っていたとされる。2023年11月には、訪英したミツォタキス氏との首脳会談をスナク氏が直前にキャンセルする一幕もあった。
だが24年7月の総選挙で労働党のスターマー政権が発足し、「ムードが変わった」(ガーディアン紙)とされる。
12月3日にはロンドンでスターマー氏とミツォタキス氏が会談した。協議内容について英首相官邸は「ウクライナ情勢や経済協力について話し合った」と発表し、返還問題については言及を避けたが、ギリシャのメディアは「返還問題も協議した」と伝えた。
彫刻群の持ち出しの経緯について、両国の見解は異なる。英国側は、19世紀当時のギリシャを支配していたオスマン帝国から「正式な許可を得て入手した」との立場だ。だがギリシャ側は「不当に盗まれた」と主張している。
盗難・盗掘で流出した文化財については、要請があればもとの所有国に返還するよう定めた国際条約がある。1970年にユネスコ(国連教育科学文化機関)が採択し、72年に発効した「文化財不法輸出入等禁止条約」だ。しかし条約発効前に起きた事案は対象外のため、19世紀に持ち出された今回のようなケースは当事者間の話し合いとなる。
大英博物館は、古代エジプトのヒエログリフ(神聖文字)解読のきっかけとなったロゼッタストーンや、チリ領イースター島のモアイ像など、観光客に人気の文化財も多数展示している。こうした収蔵品についても返還を求める声が上がっている。【ロンドン篠田航一】
毎日新聞 2024/12/29 07:00
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