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なぜ、ワクチンが怖いのか--「危険情報」を信じるのにはワケがある
毎日新聞医療プレミア
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10月に新型コロナウイルスワクチンの定期接種が始まり、SNS(ネット交流サービス)上では、ワクチンをめぐるさまざまな情報が飛び交っている。特に、新しいタイプの新型コロナワクチン「レプリコンワクチン」に対して不安を感じている人も多く、それに乗じて「亡くなった俳優はレプリコンワクチンを打っていた」というフェイクニュースも流れた。こうしたフェイクニュースはなぜ生まれるのか。防ぐ手立てはあるのか。そもそも、多くの人がワクチンの安全性に疑心暗鬼になってしまうのはなぜなのか。科学記事のファクトチェック活動を2008年から続ける「食品安全情報ネットワーク」共同代表の唐木英明・東京大名誉教授に聞いた。
■論理的でない私たち
―「俳優が亡くなる前にレプリコンワクチンを打っていた」というニセ情報がSNSで話題になりました。こうしたニセ情報が広まることを、どう思いますか。
◆我々人間の判断は決して論理的ではありません。論理的に考えればわかることでも、ほとんど感情的に、直感で判断をしてしまいます。それが我々の判断の仕方なのです。それが見事に表れています。
―なぜ、直感で判断してしまうのでしょう。
◆そもそも「判断」は何のためにするのか? それは、危険を逃れるためなんです。これはすべての動物に共通しています。目の前に危険があることを判断できなければ、その動物は死んでしまいます。だから一瞬で判断しなくてはならないのです。
論理的に考えるためには、時間がかかります。何時間も考えて結論を出そうとすれば、その間に殺されてしまうかもしれません。判断に時間をかけられないのです。だから、今までの知識と経験を総動員して、直感的に「これは危ない」「危なくない」と判断するわけです。
(中略)
フェイクニュースを防ぐ四つの方法
―防ぐ手立てはあるのでしょうか。
◆いくつかあります。まず、一つ目の方法は、SNSのプラットフォームによる規制です。先日も、SNSで著名人のなりましに投資を呼びかけられ、お金をだまし取られた人たちが、フェイスブックなどを運営するメタを訴えたと報じられました。こうしたことが起こらないよう、SNSのプラットフォームが、フェイクニュースや詐欺的な広告を出さないように対策をとることです。
非常に厳しく規制している国もありますし、やっていない国もあります。私は厳しくすべきだと思いますが、その時に問題になるのが「言論の自由」「表現の自由」です。日本は「言論の自由をちゃんと守ろう」という世論が強く、かなりひどい情報発信も「言論の自由」と言われ、その延長で詐欺広告も見逃されています。
「他人を不幸にするものは、言論の自由ではない」という大原則を採用するか否かだと思いますが、日本ではSNSのプラットフォームの規制がまだ不十分です。
それでも、まずできる方法の一つが、この規制であり、今後の進展を見守りたいと思います。
2番目の方法はファクトチェックです。フェイクニュースが出てきたら、すぐに「これはうそです」というのをSNSなどで発信するのです。日本ではまだあまり盛んではありません。
アメリカでは新聞社が行っています。例えば、米国の大統領候補の演説に事実と異なる発言があると、その10分後15分後には「この発言のこの部分はうそだ」というニュースを流します。それぐらいのスピードで激しくチェックしています。非常に面白く、役にも立つので「有料でも見たい」という人も多く、ビジネスモデルとして成り立ちました。
ところが、それが成り立っているのは政治分野だけです。科学や健康、食品などの分野でファクトチェックをやっても、あまりニーズはありません。
例えば「レプリコンワクチンは大丈夫だよ」というニュースがあっても、読む人は少数です。危険情報であればチェックするけれど、「安全だ」というニュースは多くの場合、無視されます。だから、ファクトチェックがあまり読まれないのですが、それでも大事なことなので根気よく続けることが望まれます。
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★1:2024/11/29(金) 08:07
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