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市街地再開発に伴い、撤去か移設か「未定」とされていた「築地小劇場跡」の記念碑(東京都中央区)が、再開発エリア内に移転して残されることが分かった。日本の現代演劇の拠点があったことを示す目印で、くしくも今年は初上演から100年の節目。演劇関係者の喜びは大きい。具体的な移転場所や形態などは今後、再開発事業者や同区で協議していく。
◆俳優座、劇団民芸、文学座…現代演劇のルーツ
「演劇の実験室」とも称され、意欲的な作品を上演してきた築地小劇場は、俳優座、劇団民芸、文学座など、現在の多くの劇団に影響を与えている。
レンガの壁面にはめ込まれた記念碑は、築地本願寺近くのビル群の一角にある。1977年に日本演劇協会から中央区に寄贈されたという。脇には、中央区教育委員会による日本語と英語の説明板も設置されており、観光客が興味深そうに見入っている姿も見られる。
築地小劇場 関東大震災翌年の1924年6月、演出家の土方与志、小山内薫らによって開設された。歌舞伎などの旧劇に対して、日本初のリアリズムを基本とする新劇用の劇場で、千田是也、滝沢修、杉村春子ら多くの名優を輩出した。同名の劇団もあり、劇場とともに新劇の発展に寄与。劇団はその後分裂、建物は45年3月の東京大空襲で焼失した。
◆碑を通して若い世代へ演劇文化を伝承
日鉄興和不動産などによる再開発事業では、記念碑の場所を含む約5000平方メートルの敷地に、東京メトロ・築地駅に直結する地上21階、地下3階の商業施設が入ったオフィスビルが建つ。これまで同社は東京新聞の取材に記念碑の取り扱いを「未定」としてきたが、9月中旬の取材には「移設する方向で中央区と協議を進めている。具体的な移設場所等については検討中」と回答。区教委も「(記念碑保存に)何らかの形で(再開発事業者に)対応していただける方向で進んでいる」としている。
再開発は、解体工事を経て2026年度に新築工事着手。29年度に完成予定という。
築地小劇場の歴史に詳しい演劇評論家の大笹吉雄さんは「現代演劇のルーツである築地小劇場の記念碑が残ることは、日本の演劇にとって大きな意味がある。今年は(初上演から)100年ということで、私の周りにも記念碑を見に行った若い人がたくさんいる」と話し、碑を通して若い世代へ演劇文化を伝承する大切さも指摘する。(山岸利行)
東京新聞 2024年9月30日 06時00分
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