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ホリデー滞在者をめぐる課題 -オーストラリアの事例
古谷 徳郎
在オーストラリア日本大使館 政務・総括公使
URLリンク(www.hurights.or.jp)
問題の所在
日本人ワーキング・ホリデー滞在者と意見交換する中で最も頻繁に聞く不満が、最低賃金(職種などによるが、通常、時給約2,000円)以下の低賃金(例えば、時給約250円)で働かされるケースである。実際には、英語ができないと雇用されない場合も多いようで、日本食レストランのように比較的英語が必要とされない職場で最低賃金を下回る給与を現金で渡されるケースも多く聞かれた。また、雇用主あるいは同居人からセクハラを受けた女性もいる。
更には、特に農場で働く場合に歩合制で十分稼げない、ビザ延長に必要な証明書類を出さない雇用主がいるとの話も聞く。宿泊場所も課題である。農場の近くでは、簡素な二段ベッドが並ぶ大部屋に法外な宿泊代を払わざるを得ないケースもある。都市圏から遠いため他の選択肢がなく、宿泊場所が仕事の斡旋も兼ねているからである。雇用主や農場のマネージャーなどが自国民を優遇して、それ以外の国籍の人を差別することも聞いた。一般に、日本人を含めたアジア人は比較的大人しく文句を言わないことから、場所によっては欧米人とアジア人の居住空間が完全に分けられ、アジア人が時給の面で不利にされるケースもある。
制度的な制約も課題の一つである。悪徳業者の取締りが不充分との批判があるほか、オーストラリアの他のビザとは異なり、ワーキング・ホリデー・ビザについては医療保険の有無が申請時にチェックされない。このためもあってか、安価な医療保険がないことを理由にして、無保険の日本人ワーキング・ホリデー滞在者もいる。また、住み込みで育児や家事を行うオペアは、労働とみなされないことから最低賃金などを定める法令の対象にもならず、住居や食事を提供される代わりに無給で仕事をさせられたり、もらえても給与ではなく少額の「お小遣い」にすぎなかったりする。