23/08/19 22:52:49.40 krqUbtZ89.net
一人暮らしの50代男性が毎日数十件も発信していたSNSの書き込み。それが今年1月初旬に突然、途絶えた。消息を確認しようと、友人が自宅を訪ねたところ、隣人の話から救急搬送されて戻っていないことまでは判明した。しかし、住宅の管理会社や自治体などに問い合わせても、個人情報保護の壁に阻まれ、それ以上の情報が得られない。「友人の生死すら分からない。いったい、どうすれば?」―。友人の行方を追うなかで見えてきた、個人情報保護と孤立死の関係とは。(文・写真:木野龍逸/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
■「推し活」仲間が消息不明に
愛知県春日井市に住む下島雅一さん(仮名)は、ツイッター(現「X」)などSNSのヘビーユーザーだった。話題は主に地下アイドル。「推し活」に熱心で、ライブに行ってはSNSで報告をする。投稿は10年ほど前からで、年間1万件以上に達していた。
その投稿が2023年1月初旬、パタリと途絶えた。「明日も仕事、やることいっぱい。がんばろ」という書き込み以降、更新がない。1日に20回、30回の投稿も珍しくなかった下島さん。途絶える何日か前の投稿には、体調が悪いという書き込みもあった。
推し活の現場で知り合い、普段はSNSでつながっている友人たちは不安を覚えた。その1人で、名古屋市に住む田中進さん(仮名)は、下島さんと同年代だ。
「SNSのDMで連絡しても返信はないし、携帯電話はつながらないし。おかしいな、って。いつもアイドルの話で盛り上がっていたのに……。東京の仲間も『変だよね』と」
50代の下島さんは独身で、持病があったらしい。SNSでは、両親はすでに他界し、遠い親戚しかいないとつぶやいたこともある。派遣の仕事を続け、SNSや推し活を通じた友人は全国にいたようだ。そんな下島さんは推し活のライブ会場で、「ツイッターが止まったら、自宅で倒れている可能性が高いので見に来てほしい」と半ば冗談交じりで田中さんに言っていたという。
とはいえ、その時点では彼の本名も住所も知らない。田中さんは語る。
「推し活の現場では、お互いの素性を知らないのが普通です。それでSNS仲間に彼の異変を伝え、ツテをたどりにたどって、ようやく彼を知る人を見つけました。あ、本当は下島さんというんだ、って初めて分かったんです。詳しい住所も」
■呼び鈴に反応なし
SNSへの投稿が途絶えてから2カ月が過ぎた、3月初旬。田中さんは、下島さんの自宅を訪ねた。春日井市にある都市再生機構(UR)の団地。高度経済成長期に誕生した巨大団地は静かで、日中でも人通りは多くない。下島さんの居室は、ある棟の4階だった。
田中さんは呼び鈴を押したが、何の反応もない。隣人の呼び鈴も押してみた。応対に出た男性は訝しげだったが、田中さんは「自分は下島さんの友人です。連絡が途絶えて安否が分からないんです」と懸命に事情を説明した。すると隣人は、1月初旬の夜に救急車が来てどこかに搬送され、その後は帰ってきていないと教えてくれた。
友人はどうなってしまったのか。下島さんの行方を追う田中さんの日々が始まった。
■個人情報保護の壁は厚く
田中さんはまず、団地内にあるURの現地管理事務所に足を運び、消息を尋ねた。ところが、担当者は「個人情報なので何も教えられない」と返す。生きているのか、死んだのか。それすらも「言えない」と譲らない。
次に、春日井市役所に問い合わせた。下島さんは障害者手帳を持っていたので、福祉部門に何か情報があるかもしれないと考えたからだ。しかし、「親族でもない第三者には、生きているか亡くなっているかも回答できない」と言われた。
実は、田中さんは弁護士事務所の関係団体で働いており、法律の知識やその取り扱いには長けている。
「今度は春日井市に、火葬費用の記録を情報開示請求することにしました。生前、下島さんは『自分には身寄りがない』と言っていた。身寄りのない人が死亡したら、自治体が火葬しますから」
結果は「存否応答拒否」だった。火葬したことを示す公文書があるかないかも明らかにしないのだ。
「文書がある」と回答すれば、火葬の事実を認めることになり、死亡したことが分かる。「文書は存在しない」との回答なら、生存していることが分かる。どちらの回答も本人の生死が判明するため、「ある」「ない」を明らかにしないことで、個人情報を守るという趣旨だった。
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8/19(土) 17:00 Yahoo!ニュース オリジナル 特集
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