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性別変更するには生殖機能をなくす手術が必要―。この性同一性障害(GID)特例法の規定の憲法適合性を最高裁大法廷が審理している。女性が生殖機能を残したまま性別変更し、その後に子供が生まれれば、戸籍上は男性でも子供にとっては生物学上の母となる。規定はこうした「逆転現象」を防ぐ目的で設けられた。だが、当事者たちは手術の強要は個人の尊厳を踏みにじる人権侵害だと訴える。最高裁は違憲、合憲どちらの判断を導くのか。
「裁判官全員で丁寧に見ていただけることはとてもありがたいです」。裁判官5人で構成する最高裁第1小法廷が審理を裁判官全15人が参加する大法廷に回付した2022年12月、今回の審理対象となった家事審判の申立人はコメントを出した。申立人は戸籍上は男性だが、女性への性別変更を求めている。19年にGID特例法に基づき家裁に性別変更の審判を申し立てたが、生殖機能をなくす手術をしていないことを理由に1、2審とも認められなかった。
議員立法による特例法が施行されたのは04年。性別変更するためには複数の医師にGIDと診断されたうえで、①18歳以上②結婚していない③未成年の子供がいない④生殖機能をなくす(生殖不能手術)⑤変更後の性別の性器に似た外観を備える(外観手術)―の5要件を満たす必要がある。申立人は④と⑤の手術要件はいずれも憲法違反だとして最高裁に特別抗告した。
国会は約20年前の特例法の立法過程で「社会の混乱を防ぐため」という理由で手術要件を設けた。男性が生殖機能を残したまま性別変更し、その後に子供を作れば、戸籍上は女性なのに生物学上は子の父となる。女性から男性への性別変更の場合も同様の事態が生じうる。当時は伝統的な男女の価値観からこうした事態は「混乱」と捉えられた。
21年12月現在、特例法に基づき性別を変更した人は1万1000人超。全員が家裁から5要件を満たしていると判断され、変更前の性別が男性の人は精巣を取るなどし、女性の人は子宮を摘出するなどの手術を受けたとみられる。生殖不能手術と外観手術の費用は合わせて100万円以上になることも珍しくなく、体にメスを入れることに抵抗感を持つ人も少なくない。当事者からは「手術要件は過剰な負担」と立法時から廃止を求める声があった。
海外では、イギリスとスペインの法律はそもそも生殖不能手術を要件としていない。ドイツでは連邦憲法裁判所が11年に生殖不能、外観の二つの手術要件を違憲とし、オランダも13年に二つの手術要件を廃止した。世界保健機関(WHO)は14年5月、手術の強要は人権侵害で、自己決定や人間の尊厳の尊重に反するとの声明を発表した。
日本の最高裁でも生殖不能手術要件については、憲法適合性が過去に1度審理されている。第2小法廷は19年1月、裁判官4人全員一致の意見で、社会的混乱を防止するとした立法目的に一定の理解を示し「合憲」との決定を出した。ただ、4人のうち2人は「自己決定権を保障する憲法13条に違反する疑いが生じている」との補足意見を付けた。
記事後段では19年決定の申立人が審理への期待を語ります
この決定から約4年を経て、同じ論点が今回の大法廷では審理されている。
小法廷…(以下有料版で,残り1316文字)
毎日新聞 2023/2/27 06:00(最終更新 2/27 06:00) 有料記事 2644文字
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