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学歴フィルターは2000年代前半にはすでに定着した就活スラングです。1990年代後半に登場した就職情報サイトは利用する採用担当者のために、フィルタリング機能が搭載されています。エントリー(ブックマーク)をした就活生について、大学ないし大学グループごとに告知するかどうかを選別するための機能です。
その後、難関大など特定の大学出身者を優遇する選考なども学歴フィルターの意味合いに含まれるようになり、現在に至ります。
この学歴フィルターについては、差別的との批判があり、2015年にはゆうちょ銀行、2021年にはマイナビが、それぞれ、学歴フィルターと疑われる行為によって炎上しました。
一方で、学歴フィルターについて、「むしろ公平」とする意見もあります。
2021年のマイナビ炎上騒動では、ひろゆき氏が「面接できる人数は限られていて、偏差値の高い大学生だけを相手にしたい企業があるのは事実」「嫌なら勉強して良い偏差値の大学に入ればよい。学歴フィルターに文句を言うのは見当違いだと思うおいらです」(Twitter原文ママ)とコメント。話題となりました。
この学歴フィルター、実施を公言する企業はありません。その点をもって「学歴フィルターはない」との意見もあります。
もっとも、実質的な学歴フィルターを設けている企業は規模の大きな人気企業を中心に相当数あります。
ひろゆき氏の指摘にある通り、企業からすれば優秀な学生を採用したい、と考えます。難関大出身者は大学入試を突破しており(一般入試か、総合型選抜・学校推薦型選抜かは無関係)、大学名を見るだけでその優秀さが分かります。
もっとも、企業は幅広い視点を必要としており、難関大なら必ず内定、とは限りません。偏差値ランキングで中・下位の大学からも良い人材がいれば採用します。
ただ、あまりにも基礎学力が低いのも企業からすれば困りもの。そこで、実質的な学歴フィルターをかけることで、欲しくない人材を早期に落とそうとします。
実質的な学歴フィルターでもっとも利用されるのが適性検査です。適性検査は性格検査と能力検査に分かれ、後者はいわゆる学力テストです。適性検査でもっとも有名なSPI3だと、数学と国語があります。このうち、数学については単純な計算問題、というよりはパズル的な問題が多くあります。数的処理能力を身に付けていないと、高得点が望めません。
この適性検査を、選考の序盤に利用します。難関大生の一部と中堅以下の大学生の相当数は数学が苦手であり、適性検査では低いスコアしか出ません。企業側は、この適性検査で志望者を大きく絞り、そのうえで書類や面接による選考に入ります。
この方法だと、企業側はスコアの低い学生を容赦なく落とすことができます。それでいて、「あの企業は学歴差別をしている」などと批判されても「いや、きちんと適性検査で公平公正に選考をしています」と反論できます。
実際には、大学の偏差値と適性検査のスコアはある程度、相関関係にあります。偏差値が下がれば下がるほど、適性検査のスコアも下がる傾向にあることは多くのキャリア関係者が認めるところです。
とは言え、就活生は「オンライン受検なら、替え玉できる」などと考えないようにしましょう。2020年ごろから警視庁のサイバー犯罪に対する方針が変化。適性検査のオンライン受検についても厳正に対処するようになりました。その結果、2022年には替え玉受検によって、京都大修士修了の関西電力社員が逮捕されています。
そもそも、適性検査はオンライン受検では替え玉が可能だったとしても意味がありません。利用する企業側もお見通しで、選考中盤か終盤に、もう一度、適性検査を課します。このときは対面です。あるいは、対面の面接中に数学についての口頭試問を入れる企業もあります。いずれも、替え玉で不正をすることは難しく、大きくスコアが異なればオンライン受検の結果が不正によるもの、と判断できます。
適性検査によって事実上の学歴フィルターとする手法は適性検査の活用だけではありません。他にも複数存在します。
それでは、難関大以外の就活生は規模の大きい人気企業に就職することは不可能なのでしょうか。実はちょっとした努力と意識変革で可能性を広げることができます。
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現代ビジネス2.8
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石渡 嶺司(大学ジャーナリスト)
★1:2023/02/08(水) 08:34
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