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これがたぶん今いちばん新しい日本語でも読めるReview Articleね
No.5080 OPINION 医療界を読み解く
【識者の眼】「COVID-19に対するイベルメクチンの現時点のEBM」倉原 優
No.5080 (2021年09月04日発行) P.55
倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)
この1年、SNSで論争が繰り広げられているテーマの1つに「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するイベルメクチン」がある。先に書いておくが、2021年8月9日時点での結論としては、コクランレビューによれば「COVID-19の予防・治療に対する使用を支持しない」というのがユニバーサルコンセンサスである1)。
この一件で、医学生に「EBMとは何か」というテーマで1時間の講義ができるくらい、良い点・悪い点の縮図が観察された。
疥癬に対するイベルメクチンが有効であることは疑いようがないが、これがCOVID-19となると一からエビデンスを作らなければならない。しかし、計画から論文化までお粗末なものが多く、ひどいものでは捏造を指摘されて撤回されたものもある。
査読前論文をデータベースにアップロードするプレプリント論文が流行っているが、この内容を十分に吟味せずにメタアナリシスに採用されることもあって、「イベルメクチンはCOVID-19の治療に有効である」と結論づけたもの2)3)と「イベルメクチンはCOVID-19の治療に有効とは言えない」と結論づけたもの1)4)が同時期に複数刊行されている。結果的に、前者2つのメタアナリシスは捏造された悪質な論文を含んでいたため、データの信頼性は後者2つに軍配があがるわけだが、査読されていないプレプリント論文をメタアナリシスに組み込むリスクが露呈された形である。
こういう吟味を繰り返して、いつか1つの結論が出ればよいではないかと思う方もいるかもしれないが、SNSが普及した現代、不適切な論文1つで、保険適用外の薬品の個人輸入が増えたり、不適切な処方が増えたりするのが現状である5)。
もちろん今後イベルメクチンが有効とするデータが出てくる可能性はあるが、「少なくとも現時点では」イベルメクチンはEBMの観点では積極的投与が支持されていないことから、臨床医はサイエンティフィックに適切な判断をくだすべきと考える。