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◆ 頭に2・3キロの重り投げ、トイレで用足す姿を撮影…「職場も黙認の風潮」と免職取り消し
パワーハラスメントを理由に免職の分限処分を受けた山口県長門市消防本部の元司令補の男性(45)が市を相手に処分取り消しを求めた訴訟で、山口地裁は4月、男性の主張を認めて処分を取り消した。
判決は男性のパワハラ行為を認める一方、職場には粗暴な言動を黙認する風潮があったとして「行為は男性個人だけが原因ではない」と判断した。男性は「今考えるとあり得ない職場だった」とし、反省の言葉を口にしている。(立山芽衣、相良悠奨)
バーベル用の約2・3キロの重りを投げて頭で受け止めさせる、トイレの個室で用を足す姿を撮影する、携帯電話を見せるように言いメッセージのやり取りを撮影する―。4月14日の判決が認定した男性による部下への行為の一例だ。
男性は2017年8月に処分を受け、18年10月に提訴した。これに対し、市側は訴訟で、調査結果をもとに「29人もの部下に対して長期間、悪質なパワハラを繰り返してきた。それを理由に退職の意思を固めた者もおり、免職は相当だ」と反論していた。
判決は、市側が主張した男性のパワハラ約80件について「基本的にあった」と認定した上で、「幼稚かつ軽率で部下の人権を軽視しており、相当悪質だ」と指摘。だが、男性の職場では部下への粗暴な言動を黙認する風潮があり、「パワハラ行為は男性個人にのみ起因するとは言いがたい」とした。
さらに、行為について男性への指導や研修の機会もなかったことを挙げ、過去の最高裁判決も引用して「免職の場合における適格性の有無の判断では特に厳密、慎重であることが要求される」とした。
男性は判決後の4月下旬、読売新聞の取材に応じ、パワハラ行為の一部を否定しつつ「スキンシップや指導が行き過ぎた部分はあった。部下たちに謝りたい」と語った。自身も上司から同じような行為をされたとし、「それが当たり前だと思っていた。職場を離れてみて、個人の尊厳への意識が薄い組織だったと気付いた」とした。
市消防本部の職員の一人も「命を預かる職場なので、上司の厳しい指導は仕方ないと思っていた」と打ち明ける。ただ、「裁判所は消防の職場環境について厳しく捉えた。気をつけなければいけない」と語った。
市は4月27日付で広島高裁に控訴した。理由は「差し控える」としている。
今回の判決について、パワハラ問題に詳しい嶋崎量ちから弁護士は「最高裁の判断基準に基づき、市の指導や教育の欠落と、男性が改善する可能性を踏まえた妥当な判断。組織に積極的な対策を求める社会的なメッセージにもなる」と評価する。
元東京高裁判事の升田純弁護士は「加害者が許されるわけではなく、組織側の責任とは別だという見方もできる。個々のパワハラの重大性に対する分析のほか、現代の価値観や問題意識の反映が不足している印象だ」と疑問を呈した。
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