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政府予算の執行状況を記載する公文書「行政事業レビューシート」で、支出先の企業や団体の法人番号が誤って記載されているケースが少なくとも2600件超あることが毎日新聞の調べで明らかになった。支出額のミスも多く、政府の行政改革推進本部(本部長・菅義偉首相)は誤記入の実態を調査したうえで、近く全ての省庁に対し訂正を要求する。予算チェックに欠かせない公開情報に大量のミスが発覚したことで、予算の透明化に対する官僚の意識の低さが露呈した。
毎日新聞は政策シンクタンク「構想日本」などが開発した予算の解析システムを基に、2016年度から4年分のレビューシート計2万726件を全て分析した。その結果、支出先の法人番号の誤りが2672件あった。法人番号は番号法などの規定に基づき、企業や社団法人などに付けられる13桁の識別番号。個人のマイナンバーと同様、法人が持つ番号は一つのみだが、誤記入のシートの中には、10以上の異なる番号を持つ支出先企業もあった。
法人への支出額にも誤りがあり、例えば環境省の「国立公園と世界遺産を生かした地域活性化推進事業」では、尾瀬保護財団への支出額が「6兆円」。実際は「600万円」だが、シート上では国の防衛予算を上回る規模の予算を支出したことになっている。
レビューシートの情報は2次利用できるように公開するのが原則で、これを基に予算使途の分析を行う民間機関もある。誤記入は10月31日現在も修正されておらず、政府は公表もしていない。行革推進本部事務局は「シートを作成する各省がしっかりと問題意識を持ち、自己点検して直してもらう必要がある」と話し、各省の公文書監理官などを通じて訂正作業に入る考えだ。
行政事業レビューは予算の使途を外部有識者と公開で議論する旧民主党政権下の「事業仕分け」の手法を引き継ぐ形で13年にスタート。各省は前年度に執行された全ての事業約5000件について、統一した様式のレビューシートを作成して自己検証を行い、公開の場で外部有識者による点検を受ける。検証結果は翌年度予算の概算要求に反映させる。
官僚機構の改革を訴えてきた元経済産業省職員で政策シンクタンク「青山社中」の朝比奈一郎代表は「レビューシートは作成者の意欲によって中身に濃淡があり、『やらされ作業』のようになるとミスも多くなる。シート作成のインセンティブ(動機付け)を高める工夫が必要だ」と話している。【袴田貴行】
揺らぐ財政民主主義守る決意
できが悪い答案用紙を見ている気分になる。2672件の法人番号に誤りがあった行政事業レビューシート。誤字、脱字、コピー&ペーストも大量にあり、作成者の官僚からは「どうせ誰もみない公文書だから」との本音が漏れる。だが、誤記入を放置してはいけない。予算の可視化こそ、税金の払い手である国民によって政府が形成されるという財政民主主義の本質だからだ。
予算を事業ごとにシート化し、それをもとに官僚や外部有識者が口角泡を飛ばして妥当性を議論する。目的は「無駄撲滅」だけでなく、公開によって「政府への信頼を向上させること」(閣議決定文)にある。
対象は5000に上る国の全事業。だが、外部有識者を交えて議論するものはごく一部。シートは各省課長級の幹部が実名入りで作成するが、省庁ごとに表現が異なり、官僚ですら判読できない用語も散見される。政府データを誰もが自由に2次利用し、新しい市場や価値を創出することを期待するオープンガバメントの精神にも反する。
世界で予算を可視化する動きが進んだのは2010年代初頭。米国では、当時のオバマ政権が政府支出や景気対策予算の可視化に踏み切り、13年に英国で開催された主要8カ国首脳会議(G8サミット)では政府が持つ全データを公表する原則を約束する憲章を採択した。リーマン・ショックや欧州債務危機に際して計上した経済対策の予算を可視化することで財政民主主義を守ろうという決意があった。
新型コロナウイルス禍のいま、予算規模はリーマン時の倍以上。行政事業レビューが果たす役割はこれまで以上に重要になる。仕切り役となる河野太郎行政改革担当相は旧民主党政権よりも前に事業仕分けを始めた「生みの親」だ。行政事業レビューの真の狙いを霞が関の官僚に再認識させ、レビューシートを使えるモノにしなければならない。【三沢耕平】
行政事業レビュー(略)
毎日新聞 2020年10月31日 21時13分(最終更新 10月31日 23時01分)
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