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大学に入って一年が終了する頃、夜間部から昼間部への転部試験を受けた。
試験はうまくいかなかった。
夜間部一年時の成績も良くない。
駄目かと思ったら救いの手が指し伸べられた。
「ギリギリですが、一年遅れでよければ昼間部へ転部できますよ」。
要するに、一年生から始めるなら昼間部へ移れるという。
菅ちゃんはその話に乗った。
後で聞いたら、一年遅れになってもいいなら転部は容易だという。
とにかく晴れて昼間部の学生になれた。再びフレッシュな一年生として学生生活を
始めることになったのだ。
何をしようかな、と考えたときに思い浮かんだのが空手だった。
昔父親に、政治家の秘書になるなら腕っ節が強いのが一番だと聞いたことがある。
若い秘書はボディーガードとしての役割もあるから、武道をやれば売りになるという。
菅ちゃんは空手部に入った。
事前にあちこち廻って、あまりに厳しいところや実戦重視のところは避けた。
剛柔流という通りのいい名前で段位をとるのが一番と思い入部。
それからは空手一筋だった。
一度も休まず練習に出た。浪人のときの鮎釣りと同じだった。
いったん技能の習得を始めると夢中になるタイプだった。
勉強の方では働かない頭脳がいきいきと動いた。
それはその後に政治家の秘書になっても同じだった。
党との連絡、陳情への対応、役所への働きかけ。これらのことを技能として習得して
いった。技を磨き勘を働かせる。あとは粘りだ。鮎釣りと同じ。
こうしたことなら誰にも負けないのであった。