20/07/23 00:42:28.72 WycATp4z0.net
肌で感じた。中国の経済成長はいわば身体的なものであって、のびのびと身体を動かせばそれだけで充分な対価が返ってくる性質のものなのだ。
そしてこの国は、身体を動かせる若い労働力にあふれている。つまり、老齢をむかえて思うように身体が動かなくなった日本がいまの中国から新しく学べることは、おそらく何もない。
この圧倒的な深センの街のなかで、「私たちはもう、これを高度成長期に体験済みなのだ」と私は思った。
道行く人々がとにかく何かを喋りまくっている。5人に1人は、機嫌良く鼻歌なんか歌っている。
魚群のような自動車の群れはえんえんとクラクションを鳴らし続けていて、マナーなどという窮屈な枷は存在しておらず、ただ人々の心のこもった会話と仕草だけがある。
繰りかえすが、私はバブル崩壊の暗雲のなか生まれた。そうして26年が経ったが、はっきり言おう、人間がここまで希望を持って生きていいものだとは、想像だにしなかった。
ヴァーチャル・リアリティのコンテンツに力を入れている種々の企業に取材を行うとき、この感覚はますます強められた。
彼らの決断はおそろしく早い。ちょっと首を傾げるような詰めの甘い企画のプロダクトが、すでに市場に溢れている。
私がサラリーマンをやっていたころに書いたさまざまな企画書は、日本では直ぐに却下された。しかしこの国であれば、なんの問題もなく通っていただろう。そうして私の考えや行動が現実に影響し、それによって仕事をしている実感を得られただろう。
正直に告白すれば、彼らが羨ましくて仕方なく、私は街中にばらまかれた大量のLEDの光のもとで、何度か泣いてしまった。この国でなら、文章でも食えるだろうと希望を抱けたはずなのだ。