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熊本県南部の記録的豪雨で1級河川・球磨川が氾濫し、甚大な被害が出ている状況について蒲島郁夫知事は5日、報道陣に「ダムによらない治水を12年間でできなかったことが非常に悔やまれる」と語った。球磨川水系では1966年から治水など多目的の国営川辺川ダム計画が進められたが、反対する流域市町村の意向をくんだ蒲島知事は2008年9月に計画反対を表明。国も中止を表明し、09年から国と県、流域市町村でダムに代わる治水策を協議してきたが、抜本策を打ち出せずにいた。知事との主なやり取りは次の通り。【清水晃平】
―知事は川辺川ダム計画に反対し、ダムによらない治水をすると言ってきたが、ダムを作っておくべきだったという思いは?
私が2008年にダムを白紙撤回し民主党政権によって正式に決まった。その後、国、県、流域市町村でダムによらない治水を検討する場を設けてきたが、多額の資金が必要ということもあって12年間でできなかったことが非常に悔やまれる。そういう意味では球磨川の氾濫を実際に見て大変ショックを受けたが、今は復興を最大限の役割として考えていかないといけないなと。改めてダムによらない治水を極限まで検討する必要を確信した次第だ。
―(ダム計画に反対表明した)政治責任は感じているか?
(反対表明した)2008年9月11日に全ての状況を把握できていたわけではない。熊本県の方々、流域市町村の方々は「今はダムによらない治水を目指すべきだ」という決断だったと思う。私の決断は県民の方々の意向だった。私の決断の後に出た世論調査の結果は、85%の県民が私の決断を支持すると。その時の世論、その時の県民の方々の意見を反映したものだと思っているし、それから先も「ダムによらない治水を検討してください」というのが大きな流れだったのではないかと思っている。ただ、今度の大きな水害によって更にそれを考える機会が与えられたのではないかと思う。私自身は極限まで、もっと他のダムによらない治水方法はないのかというふうに考えていきたい。
―被害が出てから「極限まで追求する」ではなく、どこかの段階で治水策を講じておくべきだったという指摘がある。この12年間の取り組みは?
ダムによらない治水をどのようにまとめていくか。時間的にはたったかもしれないが、方向性としては、とにかく早く逃げることがとても大事で、そういうソフト面を大事にしたこと。もう一つは(球磨川上流の)市房ダムの利用だ。市房ダムの目的はダムによってなるべく増水させないこと。元々、昨日(7月4日)の予定では午前8時半に(緊急)放水する予定だったが、私としてはもっと弾力的に考えようと思っていたし、スタッフにも言った。スタッフも自動的に放水するのではなく、その後の1時間の状況を見てみようと判断した。雨がだんだん薄くなっていたのでもう少し待った方がいいと午前9時半まで待ったところ、雨が弱くなった。その段階で放水はやめると。後のデータで見ると最も川が増水したのが午前8時半。あの時にダムの水を全て放水していたら、今回の洪水以上の大きな災害になったと思う。そういう意味では事前放流していたことと事前放流によって多くの水をためられたこと、そして自動的に放水しなかった弾力的な運用が大きかった。それも我々の治水対策の一つだった。これからも今決められている治水対策も皆で合意した分はやっていく。これをダムができるまで何もしないというのは最悪だと思う。私はそういう形で進めていきたい。
―ダムによらないやり方、これまでのやり方を変えるつもりはないということか?
少なくとも私が知事である限り。これまでもそのような方向でやってきた。ダムによらない治水が極限までできているとは思わない。極限まで考えていきたい。ダム計画の白紙撤回の時にも言ったが、永遠に私が予測できるわけではない。今のような気候変動がまた出てきた時には当然、国、県、市町村と、今のところはダムによらない治水なので、その中でやる。それ以外の考え方も、将来は次の世代には考える必要はあるかなと思う。
毎日新聞2020年7月6日 08時38分(最終更新 7月6日 08時38分)
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