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昭和南海地震前に涸れた徳島県海部郡における井戸の水位観測
防災研究所地震予知センター徳島観測所
近藤 和男
１．はじめに
南海トラフを震源とする巨大地震が 100 年～150 年の間隔でほぼ規則的に発生し紀伊
半島から四国の沿岸部をはじめ西日本の各地に大きな被害をもたらしている。
1946 年 12 月 21 日に発生した昭和南海地震（M8.0）では、地震の前に紀伊半島から四国
の太平洋側の広い範囲で地下水、特に井戸水の水位が減った、あるいは涸れたという報告
がある（水路局：水路要報（図 1）、増刊号 1948）。この現象はその前に発生した安政南海
地震（1854 年 M8.4）では井戸水が涸れたことが確認（今昔大変記等）され再現性のある現
象であるという確証を得ることが出来た（重富他、2003）。宝永南海地震（1707 年 M8.4）
に関しても同様にあったか否かの調査を行うとともに、地下水観測が次に想定されている
南海地震発生の予測のための情報が得られる手がかりになると考え、2003 年 7 月より徳島
県海部郡内において地下水観測を開始した。
９．まとめ
ひとつの地域において、ある井戸の水位は低下しあるいは涸れたりもしたが、すぐ近く
の他の井戸ではそのような現象が見られなかったという報告が、昭和南海地震の時も安政
南海地震の時にも証言されている。水位低下についてさらに局所的な原因があると思われ
次の段階での課題である。今回の観測ではそれぞれの観測井戸について約 2.5 年間水位観
測を継続してきたが、個々の井戸の特性･年周変化等をデータセットとして残す。また、繰
り返し同じ場所での水位観測が継続できるように、水準測量等による水位の標高値を測定
して観測方式の統一とデータの長期保存をめざす。