20/04/02 00:53:09 kzMc40po0.net
>PD-1とウイルス感染
PD-1とウイルス感染との関連性を最初に示した実験は、アデノウイルス誘導肝炎モデルである25)。
PD-1欠損マウスではアデノウイルスの排除は早いが肝臓の組織破壊が強く、
PD-1は急性感染時の免疫細胞やサイトカインによる自己組織の破壊を回避し慢性化の方向へ導くと考えられる。
実際にこれはlymphocytic choriomeningitis virus
(LCMV)の急性型Armstrong株と慢性型Clone13株の感染実験でも示された26)。
急性型Armstrong株は野生型、PD-L1欠損どちらのマウスからも排除されるが、
慢性型Clone13株は、野生型マウスでは、不応答(アナジー)となったウイルス特異的 PD-1hi CD8+ T細胞、いわゆる疲弊T細胞を増加させ、
ウイルス感染を慢性化させる。疲弊T細胞は、抗PD-L1/PD-1抗体の投与により細胞傷害活性を取り戻すし、
アナジー成立後も急性型Armstrong株に対する排除能は有している。
一方PD-L1欠損マウスでは慢性型Clone13株でのウイルス特異的T細胞の不応答が成立せず、
肝障害で死亡する。ヒトでもHIV感染ではウイルス特異的 PD-1hi CD8+ T細胞が出現し、
抗PD-L1抗体により機能が回復する27) 28)。慢性B型およびC型肝炎ウイルス感染では、ウイルス特異的CD8+ T細胞のPD-1発現上昇の他、
CD14+ 単球とmDCでのPD-L1の発現上昇も見られる。ウイルス感染以外でも、Helicobacter pylori感染での胃粘膜上皮のPD-L1発現、
Taenia crassiceps感染でのマクロファージのPD-L1/PD-L2とCD4+ T細胞のPD-1上昇、Schistosoma mansoni感染
でのマクロファージ
のPD-L1上昇など、細菌や寄生虫感染でもPD-1–PD-Lを介した炎症の慢性化が示唆されている。抗PD-1/PD-L1抗体を用いた慢性感染症の治療や、抗原特異的T細胞の疲弊状態や病状判定へのPD-1の応用が進んでいる